無いふりをした欲しいものが、いよいよ声高に存在を主張しだした。
「ねえ、何で無視するの? ねえ!」
 前はあんなに仲良しだったのに。しょんぼりする姿を強制的に締め出し、目をそらす。手に入るかわからないから、きっと手に入らないから、だから知らないふりを続ける。
「ねえ! 何で!?」
 悲痛に歪む声は、聞こえない。聞こえ、ない。涙がにじむその目も、わなわなと震えるその姿も、全部全部見エやシナいんダ。
「タイガ」
 腕をつかんできた彼女に、びくりと戦く体。
「あたし、何かした?」と見上げる彼女を抱き締める。
「うる、せえ……」
 手に入らないんだ、きっと。

2014/04/24 19:50:48 Thu

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