監察が下らないこと監察するな 01
万事屋に着いた奨と円はソファーに腰かけ、手持ちぶさたに部屋のあちこちを眺めていた。
「どうぞ」
「あ、どうもっ」
「ありがとうございます」
新八が人数分のお茶を持ってきた。奨と円は小さくお礼をして受け取ったが、銀時はふてぶてしい態度だ。
「何で俺の苺牛乳じゃねーんだよ」
「腐りかけの生温い奴ならそこにありますけど?」
「ちゃんと買っとけよ」
「何で僕が……」
「新八だから」
「だから何でそーなるんだよ」
仲良しだなぁ……。
円は二人のやり取りを聞きながら、そんなことを思っていた。無論本人達は仲良しな雰囲気を微塵も出していないが。
円が何となく奨に視線を移す。その顔には円と同様に笑みが見えていたが、一方でそれがどことなくぎこちなく見えた。長年一緒に居た勘かもしれないが。
「……奨?」
いつの間にか奨の顔を覗き込むようにして、声をかけていた。
「何ですか?」
返ってきた返事は思ったよりも穏やかで、いつもと変わらぬものだった。
「えっと……さっき言ってた『文書』って何なのかなー、なんて……」
苦し紛れのように出した言葉に、万事屋内の空気は一瞬停止した。
52/61
[prev|next]