守るものを守れるだけ強くなれ 05


「なんだい、また面倒なことに顔突っ込んでんのかい」

 戸の向こうから、新しい声がした。



「お登勢様」


 たまが振り返ってその名を呼ぶ。


「突っ込んでんじゃねーよ 面倒が顔面に突っ込んでくんの」


 それに銀時が、頭を掻きながら答える。


「結局は同じことだよ」

「あーはいはい」


 戸から姿を現したお登勢は、銀時と軽い会話を交わしてから、目線を目新しい顔へ移した。円を一瞥し、奨にも目を向ける。お登勢の目線はそこで数秒間停止した。
 目が合った奨は、愛想笑いでもして目を逸らそうと思ったが、お登勢の眼の奥にえもいわれぬ力を感じて上手く笑顔をつくれなかった。
 お登勢はその様子を見て、意味深な笑みを浮かべた。


「そういうことするのは勝手だけどね こっちにも火の粉振りまくんじゃないよ」

「だーから、俺等が火の粉振りまいてんじゃなくて、火の粉が自ら飛んでいくんだっつーの」

「結局は同じことだよ」

 そんな会話を別れの言葉に、銀時とお登勢は互いに背中を合わせ、それぞれの家へ帰っていった。


「どうしたの奨?」


 なかなか階段を上がらない奨に、円が不思議そうに問いかける。


「あ、いや……」


 奨は曖昧に返事をして、足を進ませたが、その心中は自分でも経験したことのないような思いが沸き上がっていた。



 思った以上に危険な立場。


 予想のはるか上を行く力をもつ人間達。


 地元では体験できなかった。




「兄上……ズルいですよ」




 そういう目的ではないけれど。



 奨は誰にも聞こえないような声で呟いた。



 警告音を奏でる好奇心で。

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