いとしのいとしの弱虫ダーリン
お互い好き合っているなら離れる必要などどこにもないというのに、サクラの目の前に立つ彼は別れの言葉を口にした。数年間付き合ってきて、もうそろそろ結婚を考えてもいい時期だったはずなのに。別れを告げられたサクラは頭が真っ白になって何も考えられなくなった。昨日までいつもどおりの生活をしていて、幸せいっぱいで、我愛羅も珍しく昨日は笑顔をたくさん見せていた。それなのにどうして別れるなんていう展開になるのか、サクラには全く分からなかった。
しかし、我愛羅の苦しそうな無理やり作ったような笑顔にサクラはピンときたのだ。
彼が何を思い別れを切り出したのかが。
「我愛羅君。別れるなんて言いだしたのは、もしまた身近な人を失ったらどうしようとか、そんな風に思ったからでしょう?」
「何故そう思った?」
「分かるに決まってるじゃない…我愛羅君泣いているのよ?」
サクラは我愛羅の頬にそっと触れて、こぼれた涙をすくい上げた。すくいきれないほど流れる涙は我愛羅自身を驚かせた。サクラに言われるまで自分が泣いていることさえ気づかなかったのだから。
我愛羅は笑うことはあっても泣いたことは一度もなかった。けれどサクラは薄々気付いていた、我愛羅がどこかで無理していたことを。我愛羅の中の闇の部分をまだ見せていないことを。今初めて彼の本当の姿を見れた気がしたのだ。
「…私はいなくなったりしない、約束する」
「、ああ」
「だから、別れるなんて言わないで。お願い…」
サクラ自身も今にも泣きそうな声でそう告げた。祈るような気持ちだった。震えるサクラの手を握り締め我愛羅は小さく微笑む。そして「すまなかった」と一言口にした。
「これからも一緒にいてくれ」
そんなの当たり前でしょ、そう笑って告げるサクラの頬をキラキラと光るものがつたった。だがサクラはそれをすぐに拭い、にっと元気よく笑う。「これは嬉し泣きなんだからね!」なんて満面の笑みを浮かべて口にして、我愛羅の胸に飛び込んだ。
いとしのいとしの弱虫ダーリン
(もう二度と勝手にいなくなろうとしないで)
title by 31D
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「リヴェデルスィ」のはづきさんへ。
相互ありがとうございました!
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