君に思われている俺が一番幸せ

▽山本視点


大好きです、なんてありふれた言葉だけど彼女が言えば特別な言葉になる。大げさに言えば、魔法にでもかかったように。輝いて、俺の心に深く響き忘れられない言葉になる。『俺も好きだ。』そう言いたいのに、言えない。情けないことに彼女を前にすると緊張して言葉がうまく出てこない。

「す、」
「す?お酢が欲しいんですか?」

ハルと久々に一緒に出かける機会があったから、今日こそは言おうと決心した。けれど、実際はそんな簡単に言えるものじゃなく。『す』を一体何回言えば気が済むんだ、と自分で呆れるほど『好き』が言えない。ふにゃりと笑いながら、首をかしげて俺を見るハルはあまりに可愛くて。もっと言いにくくなる。こんなに好きなのに、思いを伝えるのはそう簡単なものじゃない。ハルはいつもこんな思いをしながらも俺に思いを伝えてくれたのか?そう思うと、嬉しくてニヤける頬。そんな俺をハルは不思議そうに見ている。ああ、やっぱり可愛い。

「…可愛いな」
「、え、っ?」
「ハル、可愛いなと思って」
「! ず、ずるいです山本さん…!突然そんなこと、言うなんて…」

顔を赤くして頬をぷうと膨らませるハルは、本当に可愛くて仕方ない。『可愛い』は言えるのに『好き』は言えないのは何でだ。自分でも分からない。でも、無理して言わなくてもゆっくり自分のペースで言える様になればいい。

「…山本さん」
「うん?どした?」
「ハル、すごく幸せです。…それは、なぜか分かりますか?」

ハルは真剣な顔で俺を見て、そう言った。瞳は俺しか映していない。それだけのことなのに嬉しくて頬が緩む。俺が分からないと言えば、ハルは優しい笑顔を浮かべて言った。

「山本さんの傍にいられるからですよ?幸せすぎて、困ります」

そんな可愛いことを言うハル。幸せなのは俺のほうだ。ハルが傍にいてくれて、思ってくれて。俺は一生彼女を護ると誓おう。何があっても、彼女だけは護ってみせる。そう誓ったあと、俺はハルに言った。

「ハル、もっと幸せなのは誰だと思う?」
「…誰ですか?」
「正解は、ハルに思われている俺」
「…も、うっ!」

彼女はこれまでかと言うくらいに顔を赤くして、俺に抱きついてきた。


君に思われている俺が一番幸せ


BACKNEXT





×
- ナノ -