その惚れ薬は君にしか効かない

▽山本視点


気になる女子がいれば、自分のものにしたいと思うのは当たり前のことだ。だから俺だって、ハルのこと独り占めしたいと思う。そんなこといつも思ってる。だけど、ハルのことを狙ってるのは俺だけじゃない。ツナも雲雀も、なんだかんだ言って獄寺だってハルのことが好きだ。改めて名前を出してみると、結構人数いるし身近な人物。しかもかなりの強敵。だからと言って、譲りはしない。手加減なしで、ハルを手に入れるために本気で戦う。少し隙を見せればその瞬間、ハルはもう他の男のものになってしまう。油断してられないのな。ハルは可愛いし、こうなることは分かっていたけど。競争率の高さに驚いた。ハル、やっぱりすげえな。

「山本さん、どうしたんですか?こんなところで」
「おわ、ハルか。俺は、少し考え事してた。ハルこそ、こんなところで何してんだ?」

俺がそう聞くとハルは恥ずかしそうに笑い、小さく呟いた。迷子になってしまいました、と。迷子…迷子?ここは確かに裏道で、あまり人も通らないけど迷子になるほど入り組んだ道でもない。それなのに、どうして迷子になるんだ?考えても思いつかない。そのとき、ハルはあははと笑いながら俺に言った。

「ここ初めて来た道なんで、全く方向が分からなくてウロウロしてたら、戻れなくなってしまって・・・」
「ああ、そうなのな。じゃ、一緒に帰るか?」
「いいんですか!ぜひ、お願いします!」

キラキラと輝く笑顔をハルは浮かべた。ああ、やっぱりこの笑顔好きだな、なんて思ってたらいつの間にか緩む頬。やばいやばい、こんな顔見せれないっつの。必死でいつもの表情をキープしようとするんだけど、ハルの近くにいるとうまくできなくて。俺は自分が情けなくなって笑ってしまった。

「山本さん、とっても優しいですね。ハル、山本さんのような方と友達になれて良かったです!」
「とも、だち…ね」
「?」

改めて言われると結構なショックなわけで、友達としか見られていない自分が情けない。こんなにはっきり言われるとは思わなかった。けど、ここで諦めるわけにはいかない。ここで引き下がって、他の奴らにハルがとられるのは耐えられない。だから、俺は全力で向かっていく。例え、どんな方法でもハルの心を奪ってみせる。

「ハル、こっち向いてくれる?」
「はい?」

ハルが俺のほうを向いた瞬間、唇と唇を合わせた。ハルは顔を真っ赤にして、口元を押さえて震えている。ファーストキスだったのか分からないけど、今にも泣きそうな顔だ。でも、後悔はしていない。寧ろスッキリしている。今なら、言える。聞いて欲しい、俺の気持ち。

「ハルは気づかなかったかもしれないけど、ハルのこと好きだ。今まで黙ってたけど、もう我慢できない。…俺と付き合うこと考えて欲しい」

これで少しは意識してくれるはずだ。惚れ薬とまではいかないかもしれないけれど、意識してくれるだけで十分。ハルにだけ効く惚れ薬。


その惚れ薬は君にしか効かない
title by 泣殻

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企画:ストロベリー革命様提出。


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