結婚式を挙げてから、早1週間が経とうとしていた。最初は式なんて挙げることなく、一緒に住めるだけで十分だと思っていたのだが、周りの友人達が結婚を勧めるので式を挙げることになったのだ。けれど、彼のタキシード姿はかっこよくて、今まで見たどんな彼より輝いていると私は思った。実際そんな恥ずかしいことは言えるはずもなく、私はただ黙って微笑んだ。彼も恥ずかしそうに、けれど優しくて温かい笑顔を私に向けてくれ、とても私は幸せだった。

「市丸さん、大事なお話があるんですけど…今いいですか?」
「ん、どうしたん?」

織姫は遠慮がちに、パソコンの前に座ってデータ整理をしていたギンに声を掛けた。仕事中に掛けている眼鏡をゆっくりと外し、優しく微笑むと織姫に隣に座るように促した。織姫は小さく頷くと、ギンの隣にゆっくりと腰を下ろす。けれど中々口を開こうとしない織姫。ギンはそんな彼女の首元に息を吹きかけた。突然首元に感じた生暖かい息に織姫の体はびくっと震え上がった。

「い、いいいい市丸さん!く、すぐったいです、よ?」
「…クッ。面白すぎや織姫ちゃん。何で疑問系なん?」

織姫の言葉に思わず笑いを堪えられなくなり、声に出して笑うギン。その笑顔はいつものギンとは違い無防備で可愛いものだった。織姫はつい見とれてしまう。ギンは自分をうっとりと見つめる織姫を見てぷっと吹き出した。

「…織姫ちゃん口開いてる」

ギンがそう言うと織姫は慌てて口を閉じようとした。だが口を閉じる前に、ギンにキスをされ閉じることはできなかった。普通のキスではなく長い長い深いキス。息苦しさよりも、気持ちよさを感じる。ギンはいつも以上に織姫を求めた。まるで獣のように。鋭い視線を織姫に向けた後、耳元で囁いた。

「なあ織姫ちゃん。…キス以上のことしてもええ?」

その言葉に織姫は迷わず頷いた。


彼はまるで獣のように


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