「ああ、忙しい忙しい」

そう言いながら仕事ををしているのは三番隊副隊長吉良イヅル。隊長である市丸ギンはサボり癖があるらしく今日も不在。その分副隊長であるイヅルの下に仕事が回ってくるのだった。そんな日が毎日続くと流石に、我慢できなくなる。イヅルは膨大な量の書類を床にたたきつけた。

「僕一人じゃ片付かないですよ!」
「お手伝いしましょうか?」

そのとき後ろからイヅルに声をかける女性がいた。その声は、一時期尸魂界を震撼させた黒崎一護の仲間である井上織姫であった。可愛らしく微笑む織姫、いつ見てもその笑顔は眩しい。イヅルは少し考えたあと、お願いしますと申し訳なさそうに笑って言った。

「ええっと、お願いしてもいいですか?」
「はい、大丈夫です」

遠慮がちに改めてイヅルから頼むと、織姫はにこりと笑い快く引き受けてくれた。イヅルは織姫の優しさに好感を持った。イヅルは優しく笑うと、ちょうど織姫と目が合い織姫も微笑み返した。その瞬間、イヅルはどきっとした。先ほどよりも更にまぶしい笑顔で、微笑まれ、息をすることを一瞬忘れたようだった。

「瀞霊廷の皆さんにはお世話になりましたからこれぐらいは喜んで引き受けます」

織姫の言葉がイヅルには届いていなかった。まだなお、胸がどきどきと鳴って、それは激しさを増すようだったからだ。イヅルはゆっくり自分の胸を手で押さえ深呼吸をした。けれど、何一つ変わることはなかった。


優しい恋の味がした
title by 待ってて神さま


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