▽燐視点


雪ちゃん雪ちゃんと、彼女は嬉しそうに雪男の名前を呼ぶ。しかも毎回俺を挟んで会話をする。

「でね、燐がね、」
「…おい」
「それは大変でしたね、しえみさん」
「おい、無視すんなー。おーい、しえみー雪男ー」

やっと見てくれたと思えば、話を再開するしえみと雪男。ちょ、まじでひどすぎねぇ?俺完全に空気と化してる。…本当に楽しそうに話してんなー…しえみ。俺といるときより楽しそうだ。しえみ、雪男のこと好き、なのか?別に、そんなこと俺には関係ねぇけどさ。

「しえみ、俺先帰んぞ。じゃまた明日」
「ま、待って燐!私も一緒に帰りたい」
「いや、雪男との話まだ途中だろ?好きなだけ話してればいいじゃん」

今の言い方、きつかった、か?ていうか何でこんなにイラついてんだよ。しえみと雪男が仲良いのは俺には関係ないだろ?何だよこれ。何でこんなにしえみのことが気になんだよ。

「雪ちゃんとのお話も好きだけど、燐と一緒に居る時間の方が好きだから…一緒に帰ろう燐」

冷たく言い放ったのに、しえみはふにゃりとやわらかい笑顔を浮かべてそう言った。その瞬間自分でもわかるほど、緩んだ頬。ああ、俺しえみが好きなんだ。しえみはいつも俺を支えてくれて、励ましてくれて。そんなしえみがいつの間にか俺の宝物になっていて、護りたいって思うようになって。それが好きってことなんだって、今ならわかる。

「しえみ、帰んぞー」
「うん!」
「しえみ、」
「なあに燐?」
「俺もしえみと一緒にいる時間が、好きだ」
「うん、ありがとう」
「それと、」
「うん?」
「しえみも好き」

俺が言った言葉にしえみは耳まで赤くして、目を見開いた。恥ずかしそうに着物の裾で顔を隠して、「ずるいよ燐」と言った後に俺の耳元で愛の言葉を囁いてくれた。


好きってこういうこと
(私の方がもっと好きだもん)


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