雲ひとつない真っ青な空の下、珠紀と守護者達は珠紀の部屋に集まりカードを広げていた。カードを用意したのは勿論珠紀で、守護者達はほとんど無理やり招集されたと言ったほうが納得のいくものだった。だが無理やりと言っても、鴉取や鬼崎は完全にやる気になっていて火花を散らしあっていた。大蛇や犬戒は穏やかな笑顔を浮かべ、その様子を窺っていた。勿論珠紀も一緒に。

「なんて微笑ましいんでしょうか。ね、卓さん?」
「そうですね、まるで小学生の喧嘩のようです」

にこりと笑いながらも毒を吐く大蛇に思わず、空気が凍る。『小学生の喧嘩』をしていた鬼崎と鴉取も顔を引きつらせて固まる。そんな空気の中、狐邑はただ一人綺麗に背筋を伸ばし正座をした状態で眠っていた。珠紀は狐邑を見てため息をつき、その空気を壊すかのようにだんっと音を立てて立ち上がった。

「はいはい、もう喧嘩しない!拓磨も真弘先輩も子供じゃないんだから!勝負事になるとすぐむきになるんだから…」
「なんだとお!?」「もういっぺん言ってみろ!珠紀!」

怒鳴り散らす二人、口からは勢いのあまり唾がとぶ。珠紀はそれを華麗に避けて、ゲンコツを食らわせて一言。最上級の笑顔で。

「いい?1番になった人にはいいものあげるから!そんな騒がないで、楽しくやろ?」

鬼崎と鴉取はすぐに「いいもの」に反応して、静かになった。珠紀はその姿を見て、呆れるしかなかった。

(本当に子供なんだから…)

その珠紀にいいものとは何なのかを聞いたのは先ほどまで寝ていたはずの狐邑。まだどこか寝ぼけている。珠紀はそんな狐邑を可愛いなと思いながら、そうですねえと呟く。鬼崎と鴉取を大人しくさせるために言った嘘だったため、考えていなかったのだ。

(お菓子、なんて言ったら拓磨怒るかな?でも真弘先輩は喜びそう…。うーんと、じゃあたい焼き?あ、これは拓磨の好物だ。じゃあ、市民プールの無料券?これはスケベな真弘先輩しか喜ばないよね。どうしよう)

考えても考えても思いつかない珠紀に、大蛇はにっこり笑って、爆弾を投下した。

「見事優勝した方には、珠紀さんから頬に口付けというのはどうでしょうか?」
「「…絶対勝つ」」

当の本人は何が何だか分かっていないようで、固まったままだった。守護者達は先ほどより気合が入っていて、もう止めることはできないように思えた。

「あ、あの、ちょ、聞いて!」
「拓磨あ!かかってこいや!」
「上等ッスよ!」
「お手柔らかに」
「は、はい!お願いします!」
「狗谷…どこから入った」
「細かいことは気にすんな。それより、早く始めるぞ」

こうなったら最後。後は勝負の結果を待つのみ。


勝利のご褒美は姫の口づけ


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