▽珠紀視点


その日は快晴で、部屋に閉じこもってるのは勿体無いと思った私は適当にタンスにあった服を着て散歩に出かけた。風も心地よくて、空気も澄んでいておいしくて私は自然と笑顔になっていた。途中で会った清乃ちゃんはオレンジジュースを、近所の人はお菓子をくれた。近くの空き地に着く頃には手に持ちきれないほどの荷物になっていた。私は近くのベンチに腰掛けた。たまたま持っていたスーパーの袋に入るだけ詰めて残ったものは手に持っていくことにした。

「あっついなー。あ、そうだ清乃ちゃんから貰ったジュースでも飲もうかな」

清乃ちゃんから貰ったジュースはまだ冷えていて、十分に喉を潤してくれそうだった。可愛い缶の絵を楽しみながら喉を潤していると、聞きなれた声がした。最後の一滴を飲み干して、後ろを振り返ると拓磨が立っていた。いつもの制服姿ではなく私服姿で、少し笑顔だった。

「何してるんだ、こんなところで。…それ、全部食うのか?」

拓磨が指差したソレは、私がさっき貰ったお菓子たちで、拓磨は呆れ顔でそう聞いてきた。いくら甘いものに目がない私でもこの量は食べれるわけがない。そんなの分かってるはずなのにわざと聞いてくる拓磨は本当に意地悪だと思う。

「違うから。…拓磨、最近意地悪だよね」
「そうか?ってかそんなにどうしたんだよ?」
「んー?何故かわかんないけど、散歩してたらいつのまにかこんなに貰ってた」
「なんだ、それ」

拓魔は呆れたように笑って、お前らしいなと付け加えた。最近拓磨の顔から笑顔が消えていたので、私は少しでも笑顔が見れて嬉しかった。私が立ち上がり、じゃあねと言って帰ろうとすると後ろに拓魔がついてきた。私が振り返って首を傾げると、「玉依姫を守るのが俺の仕事だ、送ってやる」とはっきり言った。私はそれが嬉しくて、ふふと声を出して笑ってしまって拓磨は照れてそっぽ向いてしまった。

「拓磨、かわい〜」
「うるせえ。こっち見んな」
「えー?何か言った?」
「だあ!だからこっち見んなって!おい、ちょっ!」

拓磨は恥ずかしがって私から顔を逸らす、合えば逸らしてまた合えば逸らしての繰り返し。いい加減怒ったのか、突然私の方を見て頭をつかまれた。握られる!と思って反射的に目を瞑ってしまった私の唇に温かい何かが触れた。そっと目を開けると思ってた以上に拓磨の顔が近くにあった。

「ん…っ!」
「お前が悪いんだからな。俺をからかうからこうなるんだよ」
「な、ななななた、拓磨あ!」
「おー怖い怖い。…そういや、お前オレンジの味がした」

拓魔は味を思い出すように、口の周りをぺろと少し舐める。そして、うんと頷きオレンジだと言った。私はそう言われ、さっき飲んだ清乃ちゃんから貰ったオレンジジュースのことを思い出した。あ、あのとき飲んだから…―。
拓磨の意地悪そうな顔を見て、私はもう反発する気もなくなってしまった。私の頭には、さっきのキスのことしかなかった。思い出しただけでも、ニヤけてしまう。

「どうした?顔が赤いぞ。…さてはさっきのことでも思い出してたのか?」
「なっ!ちちち、違うから!思い出してないからね!」
「はっ…どうだか」
「あ、あんなのキスのうちに入らないんだから!」

図星、というのは秘密で。


少し甘酸っぱいオレンジキス
(思い出すだけで顔が熱くなる)


BACK | NEXT


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -