君の白い肌はまるで雪のようで、綺麗な唇は熟れた林檎のよう、そして柔らかそうな頬はもちのようで、その全てが私を誘惑してきて、思わず口づけてしまいそうになる。しかし私の思いなど君はまるでわかっていない。どれほど私が我慢しているのかも、どれほど私が君を思っているのかも、君は全く知らない。私が下心を持って近づいても、無防備に愛らしい笑顔を向けてくる。

ですが今日は何故かいつもと違って、私が近づけば春歌は後ろに一歩下がってしまう。私が一歩を踏み出せば、春歌も一歩後ろへ下がる。私につかまることを拒むように。簡単につかまっては面白くない、私はこの状況を楽しんでいる部分もあるのかもしれません。しかし、そんなことを10分も続けているとそろそろ理由を聞きたくなってくる。

「春歌、どうして逃げるのですか?」
「…つ、つかまえたら離してくれないじゃないですか」
「当たり前です。春歌は私の傍にいるのが嫌ですか?」
「ち、違いますっ。い、一ノ瀬さんがキ、キスなんてするから…私、」

そう言ったまま口ごもる春歌にそっと近づき、覗くように下から顔をみれば、顔を真っ赤に染めていた。そのうえ瞳は潤み、キラキラと光って見える。綺麗だと、思った。普段から春歌の瞳は綺麗だと思っていた、けれどこうして潤んだ瞳はもっと美しい。まるで漆黒の闇に光り輝く月のようだ。思わず私はその瞳に口づけていた。春歌は驚いたように、こぼれかけていた涙は引っ込んでいた。

「いちの、せさっ」
「私は春歌が愛しくて仕方ない。だからどうしても君を私の腕の中に閉じ込めておきたいのです。…春歌は嫌、ですか?」
「…ずるいです。私の気持ちを知っているのに、そんな聞き方…」
「私は春歌の気持ちを知りません。君はいつでも気持ちを隠してしまいますから」

私の言葉に春歌はふっとやわらかい笑みを浮かべて言った。「一度しか言いませんから聞いて下さいね」と。そして耳元に唇を寄せて春歌は私に愛を囁いてくれた。周りに人はいませんが、私にだけ聞こえるようにそっと、甘く、愛を囁いて、そして笑った。


君のすべてを抱きしめたい
(抱きしめて、キスをして、そして、)

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企画:ふたりぼっちのセレナーデ
参加させて頂きましてありがとうございました。


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