▽こっそりお付き合い


風邪をひいた春歌を心配した一ノ瀬が部屋を訪れると、春歌がベッドに横たわっていた。顔は真っ赤になり、息も荒い。同室の渋谷は教師に呼ばれていて職員室に行っていていない。一ノ瀬は春歌を起こさないように静かにベッドに近づく。

「春歌…」
「トキ、ヤさん…?」

ベッドのすみに腰を下ろし、春歌の頭をやさしくなでると、春歌は瞼を開き一ノ瀬の名前を呼んだ。春歌の弱々しい声と辛そうな表情を見て、一ノ瀬辛くなる。夏風邪はこじらせると中々治らない。変わってやれたらどんなにいいだろうか、そう思うがそんなことできるはずがない。早く治るようにと祈りながら手を握ると春歌も握り返す。

「春歌、大丈夫ですか…?」
「大丈夫です、そんな顔しないでください。トキヤさんのせいじゃないんですから…」
「…そうですが、恋人の心配をするのは当たり前のことです」
「ふふっ…嬉しいです」
「そんな可愛い顔見せないでください。我慢ができなくなる」

一ノ瀬がそう笑って言うと春歌は赤い顔をさらに赤くして、布団に顔を隠す。そんな春歌が可愛くて一ノ瀬は頬が緩んだ。しばらくすると春歌は再び眠りにつく。先程より熱は下がったようで、呼吸は落ち着いている。一ノ瀬はそれを確認すると、部屋を出ようと立ち上がった。だが何かに引っ張られていることに気づき、後ろを振り向く。すると、春歌が服の裾を持っていた。

「春歌…?」

反応はなく眠っているようだが、しっかり裾を持っている。無意識でやっているらしい。一ノ瀬は小さく笑うと再び腰を下ろし、そしてそっと春歌の手を握った。


今の私はきっととても幸せ
(治ったらたくさん可愛がってあげますね、春歌)

title by 確かに恋だった


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