▽源田視点

たまたま稲妻町で買い物をしていた木野と会った俺は今、稲妻町にある少しお洒落な喫茶店で木野との会話を楽しんでいた。お互いの存在を知ってはいてもちゃんと話すのは今日が初めてで、最初は緊張をしていたがいつの間にか緊張も解け話も盛り上がっていた。お互いに面倒見がいいというところがあるから、多分こんなにも意気投合したんだろう。

「ふふ、源田君って面白いこと言うのね」

話しているとやはり木野という人物も一人の女子で、雷門のマネージャーをしているときとは違う雰囲気を感じさせられる。仕草一つ一つが女子らしく、その仕草に自分の心音が高鳴っていることに気づく。一度意識したら意識する前には戻れないと誰かに聞いたことがあるが、本当らしい。目の前にいる木野を見られなくなってしまった。落ち着こうと思い、注文してあったカフェオレに口をつけたが先ほど飲み干してしまったから一滴もない。喉を潤すものがなくなった今、俺の喉は変な緊張からかどんどんと渇いていく。木野は俺を気遣い笑って自分のミルクティーを差し出してきた。

「あの、私ので良かったら飲んで?」
「え、あ、だがその、」
「あ!飲みかけなんて嫌よね、気づかなくてごめんなさい。新しいの注文しようか」
「いやそうではなく、好きでもない男と間接キスなんて嫌だろうと思ったから飲めなかっただけで…」

何故俺はこんなに必死に説明をしているのだろうか、自分でも分からない。つい先ほどまで全く関わりのなかった女子だったというのに。俺の必死な説明に木野は優しく笑って「気にしなくていいのよ」と言いメニュー表を渡してくれた。

「すまない」
「いえいえ、それにしても源田君の珍しい一面が見れて嬉しいなあ。今の源田君好きよ」

楽しそうにそう言ってくすくすと笑って俺を見る木野。試合の時の俺しか知らない木野にとっては今の俺は相当貴重なんだろう。一人の女子にこんなに振り回されるなんて思いもしなかった。木野にはそんなつもりはないだろうが。自分でも知らなかった今の自分を知っているのは俺と木野だけ。何故かそれが嬉しくて、思わず頬が緩んでしまう。
木野は頬が緩んだ俺を見て、その顔も好き、とはにかんだ。


意識した瞬間から恋は始まる

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ヨリさんへ。
源秋か立春ということでしたので今回は源秋を書かせていただきました。相互ありがとうございました。


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