▽高校生/恋人設定

秋たちが卒業した年の夏に、海に出かけることになった。少し早めの同窓会のような形で、一人一人が食物を持ち寄り、夏未のプライベートビーチで昼に焼肉をすることになっている。この同窓会はかなり前から企画されていたため、誰もがみなこの日を楽しみにしており、それは秋と豪炎寺も同じことであった。

「…木野は海に入るのか?」
「そのつもりだけど…駄目だったかな?」

静かにそう問いかけてきた豪炎寺に秋は不思議そうに首をかしげながら答えると彼は一言駄目だと告げる。理由もなしにそう告げる豪炎寺に秋は不快感を感じた。しかしすぐに何故、と尋ねれば豪炎寺はあっさりと理由を教えてくれた。だがそのあまりにも子供っぽい理由に秋は笑ってしまった。

「私の水着姿を見せるのが嫌だったんだね…ふふ」
「笑うな…誰だって恋人のそういう姿は見せたくないものだろう」

豪炎寺の珍しく頬を赤く染め照れる姿は可愛く見える。秋は豪炎寺の小さな嫉妬が嬉しく感じてしばらく頬の緩みが治りそうにないなと思った。豪炎寺はクスクスと笑う秋を見て何だか悔しく感じた。自分ばかり秋のことが好きなように感じて、少し悪戯をしたくなる。
そう思ったときふとある一つの悪戯を思いついた。その悪戯なら海で水着を着ようなど思わない、いや思えない。豪炎寺は秋が気づかないほど小さく笑った。

「木野、」
「え、きゃっ!」
「少し黙っててくれ」

秋の腕をつかんで自分の胸に引き寄せたあと、豪炎寺はあろうことか秋の首に顔を埋めた。秋はとつぜんの豪炎寺の行動に頭が追いつかず、顔を赤く染めてオロオロしていると、次の瞬間ちゅうとリップ音がした。思わず変な声を上げる秋に豪炎寺は首下でクッと笑う。そんな豪炎寺に今度は顔を赤くして怒るがそんなこともお構いなしに胸元あたりに口付けた。流石に耐えられなくなった秋が豪炎寺の胸元を押して豪炎寺の腕から逃れる。

「も、もう何するの豪炎寺君!」
「木野を水着にさせないための細工を少し、な」
「え?」

豪炎寺の言葉の意味がすぐに分からず一瞬きょとんとした表情をした秋だがすぐにその言葉の意味を理解して、顔を赤くした。一応確認のために洗面所に向かって鏡で確認すれば、予想通りに首と胸元に赤いキスマーク。鏡で実際にそれを見ると恥ずかしくなってくる。秋は顔を両手で隠してばかと呟く。それに対して、後ろに居た豪炎寺が意地悪に笑った。

「豪炎寺君のばか!これじゃあ着ていく服も限られちゃうじゃない!」
「薄着にもさせたくなくてな。…首下までしっかり隠れる服を着て欲しい」

ふっと優しく笑って言う豪炎寺に秋は何もいえなくなり、頷いてしまった。だが豪炎寺の大きな愛に包まれていることを知ることができて秋は嬉しかった。小さな嫉妬も、少しやりすぎな悪戯も、今は全ていとおしく感じる。秋は最後には満面の笑みで豪炎寺の胸に飛び込んだ。


君だけは俺に独占させて

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tairaさん、相互ありがとうございました。


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