▽豪炎寺視点

少しでも彼女が他の男と話をしていると、頭にくる。我慢しろ、と何度自分に言い聞かせても抑えられない感情…嫉妬。いつだったか、鬼道に「視線だけで人を殺せそうだ」と苦笑交じりに言われたことがある。今もそれぐらいの視線を、俺は送っているのだろうか。そう思うと自分がひどく滑稽で、心の狭い人間に思えた。

俺はあれから少しは我慢した。だが木野の体に俺以外の男が触れたかと思うと、カッとなっていつの間にか木野の腕をひっぱり部室裏まで連れ出していた。木野としゃべっている途中だったあの男はひどく驚いた表情をしていた。何だかその表情を見た瞬間に勝ち誇った気分になった。あぁ、情けない。ただあの男は喋っていただけで、下心も何もなかっただろうに。

「豪炎寺…君?」
「何だ、木野」

木野は俺の突然の行動に驚いていて、そして今の俺の例の表情に少し怯えているようだった。そんなに恐ろしい顔をしているのか?鬼道が言うように「視線だけで人を殺せそうな顔」というなら、すぐに微笑んでみせないと。そう思って精一杯の笑顔を披露したつもりだったのだが…木野はまだ怯えている。

「どうしてそんな顔をしているんだ」
「だって…何か怒っているみたいだから…」
「俺が、怒っている?」

笑っているつもりだった、だが木野にはお見通しだった。あぁ木野には本当に敵わない。いつでも俺のことを分かっている木野がたまらなく愛しい。俺は今度こそは、と微笑んでみせた。すると木野は今度はいつもの優しい笑顔を見せてくれた。

「すまない…怯えさせて」
「いいのよ。でも、何で怒っていたかぐらいは教えてくれるかな?」
「は?え、あ、…分からないのか?」

あんだけ分かりやすくヤキモチをやいたというのに。なんて鈍感なのか。俺は思わず小さく笑ってしまった。すると木野はきょとんとした表情をする。俺は木野にググッと近づき、言ってみた。「あの男に嫉妬した」と。木野は驚いたような表情をして何かを言おうとしたが、俺がその唇をふさいだせいで何を言おうとしたかは分からない。知りたいとは思わない。

今はただ木野の甘い唇を堪能したいから。


ただいま甘い唇を堪能中
(ご、豪炎寺くっ…ちょ、)
(今は黙ってくれ)


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