▽高校生パロディ

1年生と2年生では校舎が違う。3年生は2年生と一緒の校舎だが、1年生は別の小さな校舎で1年間を過ごすのだ。そのため滅多に2、3年生が1年生の顔を見る機会なんて早々ない。校舎が別々なために、わざわざ自分たちの校舎とは別の校舎に来るものも滅多にいなかった。吹雪士郎もその一人だった。しかしある日を境に彼は毎日のように1年の校舎に足を運ぶようになった。それは何故か…一人の少女が大きくかかわっていた。

***

ある日のことだ。吹雪は何となく授業中に外に視線をやると一人の少女が真っ先に視界に入ってきた。彼女のクラスはどうやら美術の時間らしい。スケッチブックを片手に隣に座る友人と楽しそうに喋っている。その少女は深緑の髪を肩より下に伸ばしており、前髪はピンで留めていた。だがどこにでもいそうな少女である。吹雪はなぜその少女に目を奪われたのか分からなかった。だがどうしても目を離したくない、授業そっちのけで授業が終わるまで彼女を見つめていた。彼女は授業が終わると伸びを一つしてから立ち上がって、それから空を見上げた。彼女が空を見上げる瞬間に一瞬吹雪と目が合う。彼女は自分の方を見ている存在に気づき、吹雪の方を見た。吹雪は一瞬呼吸をするのを忘れた。彼女のまっすぐな瞳はとても綺麗で、吸い込まれそうだと吹雪は思った。そして咄嗟に吹雪は口にする。

「あの、君そこで待っててくれる?」
「え…?」
「すぐに行くから」

それだけ行って吹雪は教室を飛び出した。階段を無我夢中で駆け下りる。彼女に早く会いたい、彼女と話をしてみたい。その一心で吹雪は階段を風のように駆け下り、そして彼女がいる中庭に向かう。彼女は吹雪の言うとおりに動かずに待っていてくれた。先ほどまで彼女の周りに居た友人はいなくなっている。どうやら気を遣ってくれたらしい。吹雪は自分のバレバレの行動に少し恥ずかしく感じながらも、伝えた。

「君が好きなんだ」
「…あの、私たち初対面ですよね?」
「ああ、そうだね」
「それじゃあ、どうしてなんですか?」

彼女の言葉は当たり前の反応だと吹雪は思う。初めて会った女性に告白など、吹雪自身も信じられないくらいだ。だが吹雪は本能で感じたのだ。彼女こそが自分の求めていた女性だと。運命の女性だと。もう二度と現れないかもしれないとさえ感じた。諦められるはずがない。吹雪は小さく深呼吸をして気持ちを落ち着けそれから口を開いた。

「一目惚れって信じる?」

彼女の頬は一瞬で赤くなり、それから突然吹雪から逃げるように校舎へと走っていった。逃がしてしまったが今の反応は脈ありだと吹雪は頬を緩める。一度逃げられたくらいじゃ吹雪は諦めない。明日から毎日会いに行こうとそのとき心に決めた。

そして毎日のように彼女の下へと吹雪は足を運ぶ。


きみは僕を少しも知らない
(僕を知ってほしくてきみの下へと足を運ぶんだ)

title by Aコース


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