▽夏未視点

「愛してる」そんな言葉は世界には溢れるほどあるのよ。そう私が言うと彼は困ったように笑った。あ、笑うと可愛いわ。いつもあまり表情に出さない分、笑顔が可愛く見える。

「あまり見つめないでくれるか」
「あら…私そんなに見つめてたかしら」

自分でも気づかないほど彼を見つめていたらしい。今更恥ずかしくなってきたわ…。今度は私が顔を赤くする番。彼には先程までの恥ずかしそうな表情はどこにもなかった。あっという間にいつもの彼が目の前にいた。

「…豪炎寺君には敵いそうにないわ」
「女である雷門が俺に勝てるはずがないだろう」
「そういう意味じゃなく…もういいわ」

力勝負なら私は絶対に負けるでしょう。でもその他のことなら勝てるかも、って思ったのよ。結果負けてしまったけど…。
不思議と気分は悪くないわ、寧ろ気持ちがいいもの。

「豪炎寺君、愛してるわ」
「それさっき聞き飽きたって言わなかったか?」
「ふふ、私からならいいのよ」
「ふっ…ずるいな雷門は」
「女はずるい生き物だって教わらなかった?」

笑ってそう口にした私に豪炎寺君は先ほどと同じように困ったように笑った後「参りました」と答えた。


女というのはずるくて単純な生き物


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