山本は結構暗い仲間入りだったと俺は思います

野球のチーム分け、それはツナにとって最悪の時間。なんでって言っても、まぁ、分かるでしょ。
「銀時ー、一緒のチームなろうぜ!」
対して俺はまぁ運動は出来る方なので結構こういう風にお呼ばれされるんだけど、俺はツナと一緒がいいのでお断り。
そのツナはといえば、やっぱり一人でいた。
「こっち入ればいいんじゃねーの?銀時も」
ツナを仲間に入れることに反対している男子だったが、山本と俺が頑張ればいいだろうという結論でまとまったようだ。まぁ、負けたけど。

「おめーのせいだぞダメツナ!罰としてトンボがけな!」
けっきょく一人でトンボがけを押し付けられたツナ。
俺も手伝ってるけど。そこへ山本がやってきた。
「助っ人とーじょー!」
そこから二人でこそこそとなにか話している。話の内容知ってるけどね。
山本の手伝いもあり、トンボがけは早く終わった。さて、ここからが俺の仕事かな。
ツナを先に帰らせ、自主練しているであろう山本のところへ。
「やーまもーとくんっ」
「!?銀時!どーした?」
「うんにゃ、山本がちょっと心配になっただけだよ。なんか危なっかしい雰囲気背負ってるし」
「そ、そぉか?」
「おぉ。…なぁ、山本。ちょっとした昔話、聞いてくれないか?」
「ん?ああ、いいぜ」

俺は話し始めた。

あるところに、一人の鬼がいました。
その鬼は名前もなく、親すら知らない、未熟で無知な鬼でした。
鬼は、生き残るために、刀を振るいました。
振るたび振るたび、刀は血に濡れ、紅く、紅く染まっていきました。
そんな鬼のところに、一人の男が、現れました。
男は鬼に家族を与え、仲間を与えました。
ですが、鬼はそんなものいらない、と言いました。
なぜなら、鬼は一人でなんでもできたし、人に頼ることなどなかったからです。
鬼は、どうしようもなく、頼ることが怖かったのです。
結局、鬼は大きくなるまで、人に頼るということができませんでした。
鬼は幼くして、死にたい、と思いました。
自分は、殺し以外のことでは、あまりに無力で、その殺しすらも、うまくできないようになっていたのです。
そこで鬼は考えました。
どこに自分の存在意義があるのだろう、と。
存在意義がないのなら、自分がここにいる資格はない。
それならいっそ、死んでしまおうと思ったのです。
その後、鬼は死のうとしました。
ですが、それはできませんでした。
鬼を拾った男に、止められたのです。
酷く、怒られました。
男はまるで、鬼が死ぬことを許さないように、叱りました。
人が殺せなくなるのが怖いと、言いました。すると男は、殺すことができなくてもいい。
自分の秀でていることが、全てだとは限りません。
ただ存在しているだけで、いい人もいるのです。
と言いました。その言葉に鬼は泣き出しました。
悲しかったわけではありません。
人を殺す以外で、自分は存在していいと、言われたような気がしたからです。
その日から、鬼は男が大好きになりました。

「…おしまい」
「銀時…?」
「…なんで、お前にこの話したか、わかる?」
「…いや」
「野球ができなくても、お前はここにいて、ただ存在してるだけで、何かの支えになるんだよって事。努力なんて、しなくていい。
そんなモンは後回しだ。なんのために自分が存在してんのか、なんで自分は野球が好きなのか。よく考えてみな。
お前は今、野球が義務みたいになってる。義務じゃねぇよ。お前の義務は、ただ生きること。
お前が自分で誰かの支えになってないって思うんなら、俺はお前を支えにする。
迷惑なんて思われても、頼って頼って、頼りまくってやる。だから、死ぬなよ」
「…銀、ありがとな!なんか吹っ切れた気がするわ!」
「あ、そ」
翌日、山本の自殺事件は起こらなかった。そのかわり、俺とツナにやたらと構うようになった。

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