望み
うす水色の空、西日を浴びて金色に揺れる稲穂、収穫の終わった蕎麦畑。
金色の稲穂は夏の終わりと秋の訪れを伝える。
大木についた葉の揺れるカサカサと言う音。
回りを飛び交う秋の象徴、トンボ。
車の往来の少ない田舎ならではのムシの鳴き声。
それを出窓に肘をついて、片足を遊ばせながら笑みを湛えて眺めるあいつ。
少しこちらに顔を向ければ西日で色白の肌と瞳がきらきらと輝く。
銀に近い白髪もきらきらと輝き、あいつの象徴とも言える白のワンピースがそっと風に揺れる。
俺はあと何回、
“これ”を繰り返せるのか。
俺はあと何回、
“この”何でもない風景を見れるのか。
そんな考えを振り払うようにあいつの元に寄る。
後ろから抱き込んでやれば照れたように、嬉しそうにすりよってきた。
こんな幸せがずっと続けばいいのに。
END
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