無題
部屋に篭った熱気を逃がすように両開きの窓を開け放つ。
冷たい風が一気に入り込み、後ろで身動ぎする音が聞こえる。
それもそのはずで、冬、と呼ばれる季節がやってきた11月のAM1:00だ。
風邪を引かせては不味いと、真っ白な肌をさらけ出す少女に毛布を一枚かけてやる。
普段は誰にも見せない微笑みを湛えて髪を撫でてやり、額にキスを落として自分もカーディガンを羽織ってから、また窓によった。
見上げた空は満天の星。
昼間とは違い動くものの無い静けさと薄暗闇。
雪が降り積もり、月明かりが雪の白さに反射していつもより明るいが、冷えた空気に尚更星々は輝いている。
なかでもよく輝いているものが一つ。残念ながら星に詳しくない男はその星の名などわからなかったが…。
その星が、自分の想い人である少女に見えた男は、今一度、ベッドで眠る少女に目を移した。
この世に生まれたときから頭に残る女性と、その魂から生まれた彼。
同時に二人を亡くしたこの男にとってはあの少女だけが男の道であった。
今度こそなくせない、見失えない、大切な人。
だから誓った。
少女に見えたあの星に、あえて。
こいつだけは離さない、と。
男が閉じた窓の向こうでは、流れ星が二つ静かに流れ、再び雪が降り出した。
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