7.9話

土曜日の午後はぽかぽかと暖かい。

「おはようございます」

扉を開けたスザクは静かな生徒会室に『カレンしかいない』と思いながら目を丸くする。
しかしすぐに爽やかな笑みを浮かべ、中に入って扉を閉めた。

「おはようカレン。今日はみんな休み?」

『いつも難しい本を読んでるなぁ』と思いながら近づくスザクに、カレンは本を閉じて上品な笑みで応じた。

「おはよう、スザク。
会長さんはニーナと美術館、リヴァルはバイクのメンテナンスでシャーリーは家の用事。
ルルーシュはナナリーの定期検診があるから今日は出られないって言ってたわ」
「そうか。やっぱりみんな休みかぁ。
……あれ? 空は?」
「あそこよ」

カレンの視線を追ったスザクは、奥のソファーで眠る空に気づいた。
上にはアーサーも寝ていて、スザクの笑みがほわほわとしたものになる。

「いいなぁ」

起こさないようにソーッと歩き、カレンのいるテーブルに座る。

「スザクはいつも噛まれてばかりいるからね」
「うん……。
……でもいいんだ。逃げられるより僕はそっちのほうが嬉しいから」

カレンの顔が『いつも噛まれて痛いのに嬉しいの!?』と困惑したものになる。
スザクの幸せそうな笑みに「スザクはアーサーが好きなのね……」とか細い声で言った。

「うん。大好きだよ。カレンは?」
「私は空とアーサーが楽しそうにしているのを見るのが好きね」

カレンはそう言いながら、すやすや眠る空を見て柔らかく微笑んだ。
珍しい表情を見た!とスザクは高揚した気持ちになる。

「もしかしてふわふわ肉球パンチをしてた?」
「ええ」
「やっぱりそうだ! 空この前、アーサーを抱っこしてルルーシュに突撃していたよ。
疲れよ吹き飛べ肉球パンチって」
「私もそれさっきされたわ」
「うわぁいいなぁ! 僕も一回されてみたいよ」
「噛まれながらだったらしてもらえそうね」

カレンからいつも感じていた壁を、不思議と今は感じない。
『話しやすいなぁ』とにこやかに笑いながらスザクは思った。

「……そうだ。昨日空がプレゼントしてくれた箱、カレンのは何が入っていたんだい?」

カレンの表情がわずかに強張る。
空気が一変したのをスザクは肌で感じて、『話題を間違えてしまったかな』と少し後悔した。

「僕は手紙と小さい鶴が入ってたよ。あ、色は白いやつ」
「……へぇ。スザクのは白だったのね」

小さな声で呟いたカレンは、ハッと慌てて口を閉じる。
しっかりと聞いていたスザクは目をキラキラさせて身を乗り出した。

「カレンは違う色か! 何色だったんだい?」

『話したくない』と『でも話さないと解放されない』の間で気持ちが揺れるカレンが渋い顔で沈黙していれば、
「分かった! カレン、キミのは赤色だね?」とスザクは得意げな顔で話を勝手に進めた。
カレンは疲れた顔で「……そうね。私は赤色だったわ」と疲れた声で言う。

「やっぱりそうだ」

柔らかくゆるく笑むスザクに『どうしてそんなに嬉しそうに笑うのかしら』とカレンは疑問に目を瞬かせる。

「確かに私のは赤色だったわ。でもどうしてそうだと思ったの?
私の髪の色が赤だから?」
「うん!」

『そうでしょうね』と言いたげにカレンは小さくため息をこぼした。 
スザクは晴れやかな笑顔でさらに続ける。

「……でも、髪の色だけじゃなくて、カレンには赤が一番似合うと思ったんだ。
この前、陽に当たった髪の色が鮮やかで、燃え上がる炎みたいなカッコイイ色をしていたよ」

頬がわずかに熱を帯び、カレンはガタッと席を立つ。
面食らうスザクに「ちょっと外の空気を吸ってくるわね」と固いお嬢様声で言い、スタスタと退室した。
『恥ずかしい事を平気で言うわねアイツは』と顔が熱くなりながら廊下を歩けば、何故かスザクが追いかけてくる。

「僕も一緒に行くよ!」

と、満面の笑顔で言うスザクに、カレンは『あっち行きなさいよ!!』と感情を顔に思いきり出した。


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