5-2

「!!?」

体がビクッと跳ねて目が覚めた。
心臓がバクバクとうるさくて、肩で息をしながら体を起こす。
夢の中の人物と目が合うなんて……。

きっと、ただの偶然だ。だって夢だし。
自分に言い聞かせるように結論づけて目をこする。
まだ夜明け前なのか室内は薄暗い。
隣のC.C.も、ソファーにいるルルーシュもまだ眠っている。
……そういえば、ルルーシュが眠っているところを見るの初めてかも。
好奇心が顔を出し、ベッドから降りたあたしはソファーへと忍び寄る。
ルルーシュは深い眠りについているのか全然起きない。
しゃがみ、至近距離まで近づいた。
寝顔がきれいで見惚れてしまう。感嘆のため息が出た。
数分ぐらい凝視していたら、ルルーシュの寝顔が小さく歪んだ。
起きたのかと思ってギクリとするが、目覚める様子は無くてホッとした。

「……はぁ……よかった。
ここで起きたらめちゃくちゃ怒られるよ……」

ルルーシュは苦しそうな声をもらす。
悪夢を見ているのか、うなされている。
ソファーの寝心地が悪いからグッスリ眠れないのかもしれない。
あたしがソファーで寝ればよかったのに。

「ルルーシュ、ごめんね……」

明日からはあたしがソファーで寝よう!
そう決意した時、ルルーシュが小さな声で何かを言った。
寝言かな? また何か呟いている。
気になって耳を寄せた。

「…………かあさん……」

すごく小さいけど、あたしの耳はルルーシュの声をちゃんと拾った。
普段のルルーシュでは想像できない、弱くて儚くて、泣き出してしまいそうな声。

あたしはルルーシュの手を握っていた。
ルルーシュの寝顔が少しだけ穏やかになった気がする。
握った手は温かくて、まぶたが重くなっていく。意識がゆっくり沈んでいく。
逆らわずに身を任せたら、落ちるように眠ってしまった。

どれだけ時間が経ったのか、深く沈んでいる意識がゆっくり浮上していく。

「─────ろ」

ルルーシュの声がボンヤリと聞こえた。

「─────きろ」

なにか言ってる。
でも、なに言ってるかは聞き取れない。
ずっとこのままがいいと思ってしまう心地の良いまどろみの中、小さく舌打ちする音が聞こえた。

「起きろ!!」

怒鳴り声に、沈んでいた意識が一気に引き上げられた。
床に座りこんだ姿勢のまま眠ってしまったようで、慌てて顔を上げたらすぐそばにルルーシュの顔が────

「───うわっ!!」

ルルーシュの手を今もあたしは握ったままで、最初から最後まで全部思い出して恥ずかしくなった。
慌てて手を離し、立とうとしたら、足が痺れて少しも動けない。
ビリビリした痛みに声にならない悲鳴を上げていたら、ルルーシュは何も言わずに部屋を出ていった。驚くほど早い足取りで。
ちょっとぐらい助けてくれてもいいのに。
薄情なルルーシュに怒りを覚えたけど、それよりも、重大な事にハッと気づく。

「手を離すまで、ずっと握ったままだった……?」

どうしてルルーシュは自分から手を振りほどこうとしなかったんだろう?
乱暴に手を振り払うことも出来たはずなのに。
どれだけあたしはガッチリ握っていたんだ。
最悪な目覚めにさせてごめんね、ルルーシュ……。


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