4-3
決定的な敗北で素性がバレそうになったルルーシュと、
銃撃の中でかなりの上空から落ちていったC.C.
アニメの通りなら二人は無事だ。
なのに、どうしてこんなにも不安なんだろう。無事だって『知ってる』のに。
「……ううん、違う。
あたしの『知ってる』なんて、その通りになる保証なんてないのに」
ルルーシュ達が無事かどうかなんて、今のあたしには全然分からない。
分からないから不安なんだ。
「でも……信じなきゃ」
今のあたしには、待つことしかできないから。
「ルルーシュのピンチを颯爽と現れたC.C.が助けてくれる。
その展開、信じないと」
時計を見る。
C.C.が出てから何時間経ってるだろう? 外はもう暗い。
4.5時間は経ってるはずだ。
「どうしよう。外で待ってようかな……」
それぐらいなら問題ないよね。
ベッドから腰を上げた時、こちらに近づいてくる気配を廊下から感じた。
小さいけど足音は複数あって、だんだん近づいてくる。
ルルーシュの部屋に用事がある人で、足音が複数なら─────
「ミレイちゃん。ルルーシュの部屋ってこっち?」
「そうよ。ぶっちゃけ部屋ん中見るのは初めてだけどね」
「ドキドキするなぁ。私、ルルの部屋に行くの初めてなんだもん」
「あ、俺も俺も!!」
─────わぁああ! やっぱり!!
「いいんですか? 私までこんな所に来て……」
「いいのいいの。
だってカレンさんだって生徒会の一員なんだから!」
どどど、どうしよう隠れないと!!
「……ねぇ会長、全員で来ることないんじゃないですか?」
「そう? 全員に問い詰められたらさすがのルルーシュも吐くと思うんだけどなぁ……」
けっこうな大所帯だ。
聞こえた足音が扉の前で止まり、コンコンと軽いノックの音がした。
「ルルーシュ、いる?」
あたしは思わずベッド下に飛び込んだ。
シンとした沈黙の後、あれぇ?というミレイの声が聞こえる。
「おっかしい。返事がないわ」
「出かけてるとか?」
「一回ナナちゃんに聞いてみます?」
どうかそのまま帰ってください。
息を潜めて、ひたすら祈る。
「俺の部屋の前でなにしてるんですか?」
小さいけど、ルルーシュの声が確かに聞こえた。
無事だったことに、あたしは不覚にも泣きそうになる。
「なにって、聞きたいことがあるからにきまってるでしょ?」
近づいてくる足音。
多分ルルーシュのだ。
「聞きたいこと?」
「そう。
昨日、鐘楼塔で猫を抱いていた黒髪の女の子。それが誰なのか聞きたくてね」
心臓がドキリと跳ね上がる。
息をのんだ気配がしたから、ルルーシュにとっても思いがけない質問なんだろう。
「彼女の名前、枢木くんから聞いてね。
気になって調べたら、その子この学園の在校生じゃないみたいでね。
知ってるなら教えてほしい」
返事を待つような沈黙が降りて、ルルーシュは諦めたようにため息を吐いた。
「分かりました、話します。
だけど今日はもう遅いから……」
「……わかったわ。
絶対、明日話してちょうだいね」
納得してくれたのか、みんなはそれぞれルルーシュに声をかけて帰っていく。
ここにいることがバレなくてホッとした。
みんなの気配が遠のき、廊下が静かになる。
ルルーシュは隠れているC.C.を呼びに行ったのだろうか?
ベッド下から出て数分後、扉が開いてC.C.とルルーシュが入ってきた。
「お帰りなさい!
よかった、二人とも無事で」
二人の無事な姿に安心したものの、先ほどのミレイの言葉をハッと思い出す。
ルルーシュも考えることは一緒なのか、面持ちは暗かった。
「どうしよう……」
「ここらが潮時だったんだろう。ハラをくくるしかない」
学園をウロウロしなかったら、あたしの存在をミレイは気づかないでいただろう。
あたし自身そう思っているのに、ルルーシュは一言も責めなかった。
覚悟しないといけない。
明日、ミレイに何を言われても受け入れられるように。
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