7.8話


『アーサーの歓迎会をするから、空とカレンはこのメモに書いてるものを買ってきてちょうだい』
と、ミレイに言われ、カレンと外出した。

「……ねぇ。
空は自分の名前以外で覚えていることはある?」
「えっ」

ドキィ!!とした。

「お、覚えていること……かぁー……」

心臓がドキドキドキドキうるさい。
予想もしなかった質問にすぐ答えられなくて、それ以上喋れなかった。
幸いにも、カレンは進む先を真っ直ぐ見つめていて、あたしの冷や汗ダラダラな顔には気づいていないようだ。

「景色でも、何でもいいの。
覚えていることがあったら教えてほしい。
失った記憶を取り戻すのを手伝いたいと思ってるから」

カレンはあたしの嘘を信じている。
罪悪感で、心が沈むほど重くなった。

「私の知り合いに、日本に詳しい人がたくさんいて、だから空の覚えていることが分かるかもしれなくて。
だから……」
「……ありがとう、カレン。
思い出そうとしてるんだけど、まだ少しも思い浮かばなくて……」

あたし、すごい最低な事してる。
嘘を重ねて、本当にひどい。
サラッと嘘をつけるルルーシュをすごいと思った。
カレンが横目であたしを見る。
気遣う優しい眼差しだ。

「それじゃあ、好きなものは?」
「好きなもの……」
「その好きなもので、何か思い出すかもしれないでしょう」
「……好きなものなら桜かな。
あとは和食……味噌汁とか、おにぎりとか!」

ふむふむ、とカレンは頷く。
「そうよね……。日本人ならやっぱり、おにぎりよね」と小さく呟いた。
どうしよう。おにぎりが無性に食べたくなってきた。


  ***


買い物を済ませて、クラブハウスに戻る。
生徒会室が近づくにつれ、ワイワイした声が聞こえていた。

「ほらァ、スザクそっちそっち!!」
「バカ、やめろスザク!!」

両手に買物袋を持ちながら、カレンと顔を見合わせる。

「何やってるんだろ?」
「……さぁ?
とりあえず入ってみましょう」

生徒会室に入る。
みんなが固まって何かしていた。

「やめろ!!
止めるんだ!!」
「ごめん、ルルーシュ。
会長命令だから」

スザクは青い猫の着ぐるみ。
リヴァルは黄色い猫の着ぐるみ。
シャーリーは赤い布地とピンクのもふもふ、ツインテールに猫耳をつけたかわいい衣装。
ミレイは露出がすごいセクシーな黒猫の衣装。
みんなの輪の中にルルーシュがいて、椅子に縛り付けられている。

「顔が笑ってるだろ、オイ!」
「ルル、動かないの!」

シャーリーはメイクパレットを持っている。
ルルーシュに猫メイクするのかな。
ちょっと笑いそうになる。
あのルルーシュがみんなに好き勝手されてる!

ニーナはパソコンの前で作業中だ。
オレンジの猫耳帽子をかぶっている。かわいい。
ミレイが肉球手袋をふりふりした。

「おっかえりー!
お買い物ありがとうニャン♪」
「も、戻りました……」

カレンはすごい戸惑ってる。

「みんなは何してるの……?」
「これはねぇ〜アーサーの歓迎会!」
「平和ですね……」
「うふっ! モラトリアム出来る内は楽しんでこうよ!
ほらあっち、ふたりの分も用意しといたから」
「どれにする? あっ紫のはルルのやつだよ」
「オッケー。それ以外だね」

ミレイの指し示す先、窓際に猫衣装がたくさん用意されている。
壁際に荷物を置き、パタパタと走り寄る。

「わぁ〜すごい! かわいい!!」

8着はある。
赤と白は布面積が少ない、水着か!?と思えるようなセクシーな衣装。
これは恥ずかしいから除外。右手で端に追いやり、他を見る。
猫耳フードのやつか、モコモコの着ぐるみタイプか。

「カレンはいらないだろ?」

ルルーシュの、ニヤリと微笑む声が聞こえた。

「とっくに被ってるもんな?」

上手いこと言うなぁと思った。
カレンはムッとする。

「あなた、テレビにでも出れば?
人気者になれるわよ」

カレンはルルーシュの後ろに回り込み、リヴァルの手から紫猫耳カチューシャを奪った。
そのままルルーシュの頭にガッと装着する。

「グァッ!! 刺すヤツがいるか!!」

吹き出しそうになり、手で口を塞いだ。

「リヴァル、そのまま押さえて」とカレンが指示を出し、
「アイアイサー!!」とリヴァルがルルーシュの両肩を押さえ、
「今よ! シャーリーやっちゃって!」とミレイが応援し、
「任せてください!!」とシャーリーはルルーシュの顔に猫ひげを描いていく。
「かわいいよ! ルルーシュ!!」とスザクが満面の笑みで言う。
スザクの言う通り、だんだん可愛くなっていく。もう耐えられなかった。

「かっわいい! ルルーシュかわいいよ!!
ははははは!
あーはっはっはっはっはっはゲッホゲホッ」
「笑いすぎだッ!!」

お腹を抱えてヒーヒー言いながら、もう一度ルルーシュをチラッと見る。

「ぶふっ!」
「笑うなッ!!」
「まぁまぁ押さえてルルーシュ」

ルルーシュは死にそうなほど顔を真っ赤にしてプルプル震えていた。

その後、ナナリーが遊びに来て、ルルーシュは恥ずかしい自分を見せたくなかったのか、何事もなかったように自分でサッと着替えた。
あたしとカレンはお揃いの着ぐるみだ。
みんなの中で、ルルーシュの猫姿が一番似合ってた。


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