33-1.5

空さんの足音が聞こえなくなる。きっと部屋に入ったんだろう。
顔を上げ、ぷはっと息を吐く。
やっと息ができたような気がした。

よかった。やっと行ってくれた。

スザクさんの“ムシのシラセ”のおかげだ。それが空さんの背中を押してくれたにちがいない。

嘘をつくとすごく疲れてしまう。
両手がぶるぶると震えてきた。
また、嘘ついちゃったな。

「……ごめんなさいお兄さま」

だって嘘をつかないと、ああ言わないと、空さんは行ってくれなかったから。


「ユフィの事は気になるけど、今はナナリーのそばにいたいな」


わたしはずっと嘘をつき続けてきた。だから分かってしまう。
空さんのそれが嘘だって。

空さんは嘘をつかないでほしい。
だってすごく胸が苦しいから。
空さんには一番行きたいと思う所に行ってほしい。

「いいなぁ……。
わたしも行きたいところに行きたいなぁ……」

もし空さんみたいに好きな所に行けるなら、わたしはお兄さまの所に飛んで行きたい。

生徒会室に行こうとしたけど、ふと後ろで“何か”の気配を感じた。
見下ろしている。
人じゃないのがわたしを上から。

知らないふりをして、気づかないふりをして、わたしは生徒会室に向かった。


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