27-2

闇が一面に広がっている。
空は口をぽかんと開けた。
いつの間にか、世界の果てまで伸びる白い道に立っていた。

「ここは……」

自分はどうしてここに?
少し混乱しながらも思い出す。
確か、目的地で車を降りて四聖剣と別れて、カレンと一緒にゼロのところに行こうとして、それから……。

「……多分、その時に倒れてここに来たってこと?」

カレンを心配させてしまった。早く戻らないと。
この景色は前に見た。
進んだ先に扉らしきものがあり、開ければそこで夢が終わった。
あの時と同じようにすれば戻れるかもしれない。

急いで先を目指す。
進んで行けば、ガンと何かにぶつかった。
道はまだ続いているのにこれ以上進めない。あの時と同じ扉
手を伸ばせば開くはずなのに全然空気が変わらない。
ぽんぽん触っても反応無し。

「どうしよう……」

途方に暮れていたら意識が一瞬だけ遠のく。
自分の意思とは無関係に瞬間移動したのか、次はギュウギュウ詰めに荷物が積まれた密室だった。


  ***


藤堂救出作戦をゼロから聞かされた扇は、すぐに出撃準備の号令をかけた。
集結している団員は忙しなく動き、幹部も大急ぎで準備を進めていく。

だんだんと日が沈んでいく。
作戦開始時刻までもうすぐだ。
杉山は紅蓮弐式のコクピットに乗り込み、難しい顔で調整を始める。
武器を詰めた箱を運ぶ玉城は、トラックに機材を積んでいく仲間を一瞥してムッと眉をしかめた。

「ハイドロ系は一ヶ所に束ねるなって言ってるだろ!」
「だから、無頼とは違うんだよ!」

一刻も早く準備を終わらせなければという焦りで余裕がない
そのやり取りは離れた場所で待機する四聖剣の耳にも届く。
乱暴に扉を閉める音が別のトラックから聞こえてきて、朝比奈は軽いため息をこぼした。

「いいのかな。
黒の騎士団と手を組んじゃって」
「藤堂中佐を助ける手が他にあるの?」

千葉は呆れた眼差しで言い、卜部は背筋を伸ばしてニッと歯を見せた。

「キョウトの言葉でもある。
新型も貸してくれると言うし」
「でもさぁ、主義主張がちょっと違うような……」
「私達は民族主義じゃない。わかっているくせに」
「細かいことは中佐を助け出してからだな」

仙波の静かな声に全員が頷いた。
ハラをくくったように朝比奈は不敵に笑んだ。

「分かりました。
藤堂さんの居る所が俺の居場所ですから」

言い終わってすぐ、朝比奈の笑みが驚きで崩れた。何かを凝視している。
そこには積み込みが完了したトラックしかない。
怪訝に思った卜部達は一斉に顔を向け、息を呑んだ。

「な、なんだよアレ……!?」

トラックに幽霊の生首が生えていた。

あれは幻覚かと千葉は狼狽し、警戒と緊張に仙波は息を止め、あれは何だと卜部は顔を引きつらせ、初めて見た幽霊に朝比奈は震え上がった。
生首の幽霊がこちらを見て、視線がぶつかるなり、凄まじいスピードで飛んで来る。
朝比奈は後ずさりして、残りの3人は一斉に構えて臨戦態勢を取る。
幽霊はピタリと止まった。
申し訳なさそうに縮こまり、ふわふわ近づいてくる。

「ご、ごめんなさい驚かせて。
あたしの“これ”を聞いてると思って……」

罪悪感にシュンとする幽霊が、数時間前に会った彼女だと全員が気づいた。

「お前……その姿……。
……あぁそうか。
その姿が、桐原公が私達に話していた“不思議な力”だったのか……」

ホッと息を吐く千葉の声はわずかに震えていた。
朝比奈が安堵で顔をくしゃりとする。

「こっちにも心構えがあるんだから事前に言っといてほしかったよ。
あぁもう、心臓に悪い」
「すみません……」

地面に埋もれそうなほどシュンとする姿に卜部と仙波は苦笑した。

「いや、大丈夫だ。
しっかり見れば全然怖くない」
「ああ。ワシもだ」

場の空気が和やかになった時、彼女の身体を背負ったカレンが現れた。

「空! ここにいたのね!?
身体抜け出したら私のとこに戻ってきてよ! 心配したじゃない!」
「ごめん……。
気づいたらトラックの中にいて……」
「まぁまぁ、いいじゃない。そんな怒らないでよ」

ふたりの間に割って入った朝比奈は朗らかに笑う。

「背中のそれ、彼女の身体だろう。
どこかで寝かせてあげたほうがいいんじゃない?」
「あっ……そ、そうですよね……」
「紅月、キミも作戦に加わるなら準備をしたほうがいい。
彼女は俺が代わりに運ぼう」

卜部の申し出にカレンは眉を下げた。

「いいんですか?」
「背負うぐらい平気だ。
任せてもらえるか?」

どうする?と目で尋ねるカレンに空を笑顔で頷いた。
カレンは頷き返し、それから卜部を見る。

「ありがとうございます。
ここをずっと進んだ先に大きなトレーラーがあるので、中にいる者に声をかけてください。
空をよろしくお願いします」
「ああ」

カレンから譲り受けた空を背負った卜部は「軽いな……」と驚きの顔で呟いた。
 
「空、卜部中尉の案内をお願い。
私は紅蓮を開発した人に会いに行くから、自由に動けるようになったらゼロのところに行ってちょうだいね」

『卜部中尉か。自分もちゃんと呼ばないと』と思いながら、背筋を伸ばして空は頷いた。
カレンは四聖剣に向き直る。

「私も準備します。また後ほど、戦場で」

一礼し、カレンは格納庫のある方へ駆けて行った。
朝比奈が手を振って見送った後、卜部は空を背負い直す。

「それじゃあ行こうか」
「はい! 卜部中尉、どうぞこちらに!」
「あー……俺の事は『中尉』じゃなくて『さん』でいいからな」
「い、いいんですか……?」
「そうそう。卜部だけじゃなくて俺も気軽に呼んでよ。
みんなはどう?」

話を振られ、千葉は「好きに呼べばいい」と言い、仙波は「ワシもな。堅苦しく呼ぶのは緊張するだろう」と返した。
気まずかったものの、空は四聖剣の言葉にホッとする。

「ありがとうございます。これからは皆さんのことを『さん』で呼びますね」

ふわりと宙に舞い上がる。

「では卜部さん。トレーラーに行きましょう」
「ああ」
「行ってらっしゃい。
本当は俺も一緒に行きたいけど、新型の最終調整が必要だからね」
「すまない。そっちも頼む」
「任せて」

それぞれが進むべき場所を目指して歩きだす。

二人きりになってから、卜部はチラッと低空飛行する空を見た。

「キミのそれは幽体離脱か?」
「はい。 あ、でもちょっと違うんです。
好きな所に自由に飛べて、念じたら瞬間移動もできます。
だけど自分の意思で身体を出たり戻ったりできなくて」
「そりゃあ不便だな……」
「……はい。突然倒れて迷惑かけたり……心配させちゃったり……それに……」

自分を背負ってもらっている現状に彼女はうなだれた。

「それに……運んでもらって……」
「心苦しくなるよな……。
こう……自分を運んでもらうのを間近で見ることしかできないのは……。
だが、けして気に病まないでくれ。
こちらが助けた分、キミだっていろんな人を助けているだろう」

そっと顔を上げる空に卜部は明るく笑った。

「朝比奈から聞いたぞ。
みんなの助けになりたいから仲間になった、と」
「はい。この姿でしか出来ない事をしようと思って。
黒の騎士団の力になりたいんです」

卜部の足がピタリと止まった。
顔から笑みが消え、見開く瞳は隣の空を見ていなかった。
低空飛行を止めた空は「卜部さん……?」と目を瞬かせる。
ハッとした卜部は「すまない」とバツが悪そうに呟いた。
ごそごそと背負い直し、再び歩き始める。

「……すまないな。
似ていると思ってしまったんだ。
俺の妹に、な」
「妹さんがいるんですね」
「ああ。10歳下の妹が一人いたんだ。
春香という名前の」

思い出すように遠くを見ながら呟く。
“いた”という過去形に空は言葉を詰まらせた。

「『兄様の力になりたいんです』と、無茶ばかりしていた。
……助けたいからって空は生身で飛び出さないでくれよ」

微笑みながらの軽口だが、卜部の目元は辛そうだ。
何も言えなくなってしまいそうな空は、しかし、言葉をなんとか紡いだ。

「春香さん……卜部さんの妹さんは春生まれですか?」
「え」
「名前に『春』の字が入ってるから」

ポカンと口を開いていた卜部は「あ、ああ」と呟き、くしゃりと笑った。

「ああ、そうだ。
桜が散ってすぐだったかな、暖かい日に産まれたんだ。
小さいのに重たくて、いい匂いがしてな……」

空は嬉しそうに、安心したようにホッと笑う。
話していた卜部は気まずそうに笑顔を曇らせた。

「………すまないな。
気を使わせて」

空は無言で首を振る。謝ってほしくなかった。
お互い何も言えないまま、気まずい沈黙がずっと続く。
しばし歩き、目的のものがやっと見えてきた。

「卜部さん。あのトレーラーです」
「あれか。
案内してくれてありがとう、空。
あとは中にいる人に聞くからキミはゼロのところに行ってくれ。紅月が言っていたからな」
「はい。
もし中に誰もいなかったら、入ってすぐのソファに置いてください」
「……わかった。寝かせておく」
「春香さんの話、ありがとうございます。また聞かせてくださいね」
「ああ。今度は茶でも飲みながら話そう」
「はい、ゆっくり話しましょうね。
それではまた後で。作戦開始の時に」
「ああ。お互い全力を尽くそう」

空の姿がフッと消えてから、卜部は彼女の肉体を背負い直してトレーラーへ進んだ。


  ***


『ルルーシュがいる空間の天井に』と念じて瞬間移動する。
いきなり現れたら驚かせてしまうかも、と考えた末の天井だ。
その判断は正解だったようで、ゼロが白衣を着た技術者らしき人達と一緒にいる。
初めて見る人達だ。
全員が褐色の肌で、細身の男と小太りの男、そして美しい金髪の女がいる。
離れておこう、と空は天井をふわふわ飛行する。
目を引く深紅の機体を見つけた彼女は、紅蓮弍式のそばに降り立った。

「空、お帰りなさい」

ひょっこりと顔を出したカレンの服装が先ほどと違う。
赤いパイロットスーツを着ていた。

「カレン、それは?
かっこいいね!」
「キョウトから持って来たんですって。紅蓮を開発したラクシャータさんって人が。
ほら、ゼロのそばにいる女の人」

カレンが金髪の女を指し示し、空はジーッと目を凝らす。
思っていたよりも美しい人だ。ボケっと見惚れてしまう。
白衣の下は胸元まで開けた赤いシャツと七分丈のパンツ。細い手で持つキセルは金色で、額には紫色の雫形の化粧。
インドから来た人だろうか?

「行きましょう」と言いながらカレンは歩いていく。
その背中を空は追いかけた。

「着替え終わりました」

ゼロと技術者達の輪の中にカレンも入る。
そばに行きたいなぁ……と空は思ったものの、話し合いの邪魔はしたくなかった。
カレンの後ろでジッとする。

「あの……本当にこんなので連動性上がるんですか?」
「上がんないわよ」

答えたラクシャータはニッと笑う。

「はぁ?」
「生存率が上がるの」

笑顔も美しいなぁと空が思った瞬間、ラクシャータはいきなり真顔になってこちらを見た。
さらにスタスタと接近してきて、驚くカレンを「ちょっとごめんねぇ」と横にずれさせ、ずずいっと迫ってくる。
空は戸惑って動けない。

「みぃーつけたぁ」

語尾にハートマークが付きそうな声だ。
空が固まる中、カレンは「ららラクシャータさん!?」とひっくり返った声を出す。
透けた体を触ろうとキセルをスカスカ振る彼女にゼロは声をかける。

「ラクシャータ、キミも彼女の姿が見えるとは……」
「もちろんよぉハッキリと。あなたも見えるのね、これ」
「“これ”じゃなく“彼女”と呼んで下さいラクシャータさん。
彼女は私達の仲間です」

切実に訴えるカレンに目を細めたラクシャータは、キセルをくわえて空を頭から足の先までじろじろ見つめた。

「へぇー。
黒の騎士団、すごいのを仲間にしてるのねぇ」

少しも動揺しないラクシャータにカレンは目を輝かせる。

「ラクシャータさんは大丈夫なんですか?
初めて見た人はみんな絶対驚くのに……」
「知らなかったらそりゃあね。でも私は知ってるから。
確かこの国では『精霊』って呼ばれてるのよね」
「知ってるんですか!?」
「そうよぉ。色んな国の伝承を収集するのが好きなの。
名称は違うけど、どの国でも必ず耳にするのよ。
民の前に現れ奇跡を起こし、時には知恵を授ける、肉体を持たない神聖視された存在を」
「どの国にもあるんですね」
「それは興味深い。
後日、詳細を聞かせていただきたい」
「いいわよぉ。
作戦 これが終わったら資料たーくさん見せてあげるわね」
「ありがとう。
今回も紅蓮の突破力が作戦に必要だ。調整を頼む」
「データも一緒にもらうわ。
それじゃあ紅蓮のパイロットの……あなた、私についてきなさい」
「は、はいっ」

ラクシャータとカレン、そして二人の技術者は紅蓮弐式の元へ行く。
ゼロとやっと二人きりになれた!と空は表情を和らげた。

「“精霊”と呼ばれている存在がどの国にもあるとはな」
「うん。中華連邦では“九天玄女”だった」
「中華連邦? 調べたのか?」
「あー……ごめん、言ってなかった。
これが終わったら話すね……」
「……ああ」

ここでは言えない話か、と察したゼロは頷いた。 

「いきなり倒れたとカレンから聞いた。
何か異変はあったか?」
「異変、なのかな……。
ここに来る前に変な夢を見たの。
真っ暗な世界で白い道がずっと続いて、扉みたいなものに行く先を阻まれる夢」
「扉? なんの暗示だろうな。
その夢は嫌な感じがしたか? 不吉だと思ったか?」
「ううん。何も。
進むのを嫌だとすら思わなかった」
「……そうか。それなら悪い夢じゃないだろう」
「同じ夢をまた見るかもしれない。
これで3回目だから」
「ただの夢ではなさそうだな。
少しでも嫌な感じがしたら進まないほうがいい」
「次があったら警戒するね」

作戦準備の音が遠く聞こえた。
今は目の前の事を優先したほうがよさそうだ。空は背筋を伸ばす。

「……ねぇゼロ。もうすぐで作戦が始まるよね?
あたしに何か出来ることはある?」

触れないけど、ナリタ連山の時と同じように敵を怯ませられるかもしれない。
この姿が相手に見えたらだけど。 
自分に出来ることがあればやりたい。
“居ても居なくても変わらない” そう思われたくなかった。
ゼロはバサァッとマントをはためかせる。

「ああ。頼もうと思っていた」

仰々しい声音が空をパァッと笑顔にさせる。

「騎士団が襲撃をかけた際に軍が一番にすることは藤堂の処刑だ。
作戦開始前、空にはチョウフ基地の刑務所内部に潜入し、藤堂が捕らわれている独房を特定してほしい。
作戦開始後、最短で藤堂を救出する」

目の前が明るくなったように感じた。
笑顔を咲かせて空は敬礼のポーズをとる。

「うん! 了解!!」
「藤堂の居場所を確認でき次第戻ってきてくれ。声を掛けて刺激するなよ」

その後、ゼロに地図を見せてもらった。
現在地と、チョウフ基地がどこにあるかを頭に叩き込み、空は夜闇を飛翔する。

全速力で飛べば、刑務所にあっという間に潜入できた。
天井から顔だけがヌッと出ている光景はホラー映画そのものだろう。
延々と伸びる通路には個室の独房がたくさん並んでいる。
見張りの軍人も見回る人間もいない。これでいいのかチョウフ基地。
ガバガバセキュリティかと思いきや、脱走者を検知する機械らしき物があちこちに設置されている。
ここに来る前に調べた通り、機械は幽霊には無反応だった。

独房の一室に顔を突っ込んでみる。
中は便器しか置かれていない殺風景な正方形の部屋だ。
天井から顔だけ出し、独房が並ぶ区画を全力で通り抜けてチェックしていく。
無人の部屋が延々と続き、早く見つけなければという焦りが生まれた。
そのせいか、独房の一室に誰かがいてもすぐに止まれなかった。
慌ててすぐにUターンをかけ、空は人がいる独房に舞い戻る。
上から見ても藤堂だと分かった。
両腕を後ろに固定するタイプの拘束服を着ている。
顔を合わせて驚かせるわけにはいかない。
ヌッと出していた顔を戻し、天井裏を経由して通話へ出る。
独房は番号で管理されていて、食い入るように番号を見つめ、忘れないように目に焼き付ける。
ここが刑務所のどの位置にあたるかも把握しておかねば。
ふわりと浮いて離れようとすれば、扉の向こうにいる藤堂が見えた。
凛と正座し、瞑想している。
助けがくるのを諦めているのか、落ち着いた静けさを感じた。
一声かけたいがそれはできない。
驚き動揺する藤堂を監視カメラに映してはならないから。
行こうとすれば、藤堂は固く閉じたまぶたをスッと開いた。
わずかに俯いたまま、視線だけを上げ、空をしっかりと見つめてくる。
背筋がゾッと冷える眼光に空は一目散に脱出した。

藤堂は幽霊の気配も感じ取れるのか。
『すごい』と『ヤバイ』の感情が入り交じった空は空高くまで逃げ、藤堂のいる独房がどの位置にあるか確認した後、大急ぎでゼロの元に逃げ帰った。


  ***


空がゼロの元に帰って1時間後、チョウフ基地に爆炎が上がる。
規模の大きいそれが作戦開始の合図だ。
緊急事態を知らせるサイレンがうるさく唸る中、紅蓮弐式とゼロの無頼は空の持ち帰った情報から導き出した最短ルートを突っ切り、外壁を輻射波動で爆破する。
崩壊して出来た大穴の向こうには藤堂がいた。
無頼の操縦席から出たゼロは生身で藤堂と対面する。
藤堂は鋭い眼差しでゼロを見据えた。

「藤堂鏡志朗。
7年前の戦争で唯一ブリタニアに土を付けた男」
「『厳島の奇跡』か。
お前も私に奇跡を望むのか?」
「あれは奇跡ではない。情報収集をふまえた戦術的成功だ。
だから、お前が欲しい」
「もういい」

拒絶する藤堂は全てを投げ出すような疲れ切った表情をしていた。

「主君と定めた片瀬少将は亡くなられた。私も……」
「甘えるな!!」

鋭い一喝に藤堂は息を呑む。

「お前は責任をとらなければならない! 奇跡の責任を!!」

藤堂は唇を噛んで押し黙った。

「エリア11の抵抗運動が他のエリアに比べて格段に激しいのは、日本が余力を残したまま降伏したからだ。
『厳島の奇跡』という、夢の続きを見せないままに」
「……私のせいだと?」
「そうだ。
人々は奇跡という幻想を抱いている。
だからこそ、リフレインが蔓延しているのではないのか?」

リフレイン────過去の栄光の時代に戻りたい日本人の間で流行した薬物だ。
藤堂は反論することが出来なかった。

「あがけ藤堂!
最後までみっともなくあがいて、そして死んでいけ。
奇跡の藤堂という名前がズタボロになるまで!」
「……そうして初めて日本人は敗戦を受け入れられると?」
「民衆の為にこそ、それが必要だ。
もっとも、私は正夢にしてしまうだろうがな」

自信に満ちた口調に、藤堂は結んでいた唇を笑みの形に崩す。
吹っ切れたような表情だった。

ゼロの無頼が独房の一部を壊し、カレンが紅蓮弐式から降りて素早く藤堂へと駆け寄り、拘束を解く。
礼を言って立つ藤堂は凛とした戦士の顔をしていた。
カレンは空を仰ぎ、目を凝らす。
そこにいると知らない限り発見できない幽霊が上空にいた。
何かあれば文字通り飛んでくるだろう。
カレンは微笑み、紅蓮弐式に乗り込んだ。


  ***


チョウフ基地が一望できる上空に空は瞬間移動した。

藤堂が捕われていた刑務所を監視するのは6つの塔。
夜の闇を切り裂くように、周囲を照らす光が侵入者を捜そうと目まぐるしく動いている。
今、塔と塔の間を走るのは騎士団のナイトメアだ。
それだけじゃない。
地上を隠す黒煙が晴れた後、ランスロットの姿も戦場で見つけた。
確認した途端、言葉にできない不安が空を襲う。
ひどい胸騒ぎがして、彼女は顔をくしゃりと歪めた。

現れたランスロットを四聖剣が操縦するナイトメアが迎える。
灰銀色の機体────月下はゼロの指示があったのだろう、チームワークを感じる一体感のある動きをしていた。
四聖剣と藤堂、ゼロとカレン、スザクで地上にいる機体は全部で8機。
しかし、ランスロットと実際に戦っているのは月下1機だけ。
他の機体は距離を取るランスロットを待ち伏せして攻撃したり、死角から撃って不意を突いたり、数で圧倒している。
どんなにランスロットが優れていても、化け物呼ばわりされるほど強くても、これでは多勢に無勢だ。
スザクは次第に追い詰められていく。

ランスロットが月下から距離を離すように後退した。
その先には藤堂が操縦する漆黒色の月下が先回りしていて、スザクの乗るコクピット目掛けて鋭い突きを放つ。
ランスロットは避けることが出来たものの、さらに追い撃ちをかける二度目の突きを避けることはできなかった。
コクピットの上部を貫いた月下は、火花を散らしながら切り払う。
削ぎ落ちたコクピットの一部が地面に転がり、操縦する人間があらわになった。

空が感じた言葉にできない不安はこれだった。
思いもしなかった。
こんな所で、こんな形で、ルルーシュが知ってしまうなんて。
操縦捍を握る枢木スザクは、騎士の表情で月下を見据える。

全員が動揺する中、スザクだけが動いた。
遅れて一番近くにいた藤堂も動く。
四聖剣の月下は周囲を囲うように移動する。
ゼロの無頼と紅蓮弐式だけが止まったままだ。
動かないんじゃない、動けないんだ。

「馬鹿ッ!! なんであたしは……!!」

最初から知っていた。どうして言わなかったんだ。
後悔が噴出する。

空は急いでゼロの元へ瞬間移動した。
ルルーシュはスザクを凝視し、魂を失ったようにボンヤリしている。

「ゼロッ!」

呼びかけてもルルーシュは反応しない。
空は声を失った。

どうして伝えなかった。
ランスロットの事をルルーシュに。
伝えていればこうはならなかったはずなのに。

『ゼロ! 捕まえますか? それとも……ゼロッ!!』
『白兜を破壊する。いいな!?』
『待て!! ゼロの指示を!!』
『待てない! 仙波大尉、旋回活殺自在陣を!!』
『承知!!』
『待てッ!』

通信機から聞こえるやり取りに、ルルーシュはハッと自分を取り戻す。

「やめろ!! 今は!!」

ゼロが制止の声を上げても四聖剣は聞かない。
四方から攻撃できるのは今しかないと、止まらなかった。

スザクも動いた。
スラッシュハーケンを4本一斉に射出し、取り囲んで走る千葉、朝比奈、卜部、藤堂の武器を同時に弾く。
え!?と空が驚きで目を剥いた時、射出されたスラッシュハーケンは秒でランスロットに収納される。
スザクはすかさず右手の剣を、後方から斬り込もうとする仙波の月下に投擲した。
胸部を破壊されて減速する仙波は「面白い戦い方をする」と苦しげに呟き、
「無事か!?」と卜部が庇い出て、
「あれは任せて!」と朝比奈が右腕に内蔵された銃で威嚇射撃して、
「朝比奈! 左側へ回れ!! 今度は」と指示を出そうとした千葉を「やめろ!!」とゼロが一喝した。

「戦うな、これ以上は……!
目的は達成した! ルート3を使い、直ちに撤収する!!」

動揺を押し殺して吐き出す指示は震えていた。
眉をひそめた藤堂はハッと上空を見る。
数えきれない戦闘機が────ブリタニアの援軍が近づいてきた。
ゼロの動揺を知らない藤堂は「勝てない戦と負け戦は別物だ。心得ているようだな、ゼロ」と感心し、四聖剣に撤退の指示を出す。
藤堂の言葉に従った四聖剣は機体に搭載されたチャフスモークをそれぞれ展開させる。
敵機のレーダーを撹乱させる煙幕は、逃げる騎士団の機体を全て隠した。
追おうとしたランスロットの脚部を藤堂は銃で撃つ。
ランスロットは走れなくなり、追跡できる者はいなくなった。
黒の騎士団はチョウフ基地を無事に脱出した。

逃走先は日が当たらないハイウェイの底だ。
逃げきった後、機体を降りたカレンはゼロの異変を扇に伝えた。

「ゼロが出てこないって?」
「えぇ。呼んでも応答しないし……」

四聖剣や藤堂が機体を降りた後も、ゼロは沈黙を貫いていた。
何があったのか知らないカレンは心配そうに顔を曇らせる。

無頼の中でうつむくルルーシュはひたすら静かだった。
操縦桿を握ったまま、ぴくりとも動かない。
息をしていないのでは、と不安になるほど、呼吸もほんのわずかだけ。
ルルーシュは一度も空を見ない。
痛みを感じない霊体なのに胸のあたりがひどく苦しかった。
呼吸しない霊体なのに罪悪感で息ができなかった。
ランスロットの事を話せば良かった。
話すべきだった。
後悔して後悔して後悔する。

話せないのか?とルルーシュに言われた時、今は話したくないと空は言った。いつか絶対話すからと。
話しておけば良かったのに。

ごめんなさい、という言葉が声にならない。
口を開いても喉を絞められているみたいに声が出ない。

ルルーシュはわずかに顔を上げた。
こっちを見る、と思った瞬間、空はとっさに顔を背けてしまった。
無意識の行動に自分自身を殴りたくなる。ルルーシュを見てちゃんと謝らないといけないのに。
刺すような鋭い視線を感じて動けなかった。

「おまえはナリタで、白兜のパイロットの顔を見ていたな」

淡々とした声だ。感情がこもっていなくても空には分かる。
これは心の底から怒っている声だ。
やってはいけないことをしてしまった。

「……『男の人だったよ』か。
上手くごまかしたな」

唇の端を吊り上げて笑うような声に、後悔と自責の念が頭の中を塗り潰す。
言えなかった言葉が口を突いて出そうになった時、空の意識はブツンと切れた。


  ***


騎士団のトレーラーの一室で空は静かに眠っている。
様子を見に来た藤堂と朝比奈は、異常なく眠る様子にホッとした。

「それじゃあ俺は向こうに戻ります。
何かあったら言ってください」

案内役の扇はお辞儀してから部屋を後にする。
藤堂と朝比奈は彼の背中を見送り、眠る空へ視線を戻した。

「不思議ですね、藤堂さん。
俺にはただ眠ってるだけに見えるんですけど」
「ああ。
だが、彼女の精神は今も別の場所にいるらしい」
「藤堂さん。
これ、すごい揺すったら起きると思いますか?」
「……止めておけ」

興味津々な朝比奈に、藤堂は呆れた顔できびすを返す。

「出るぞ朝比奈」
「はぁい、藤堂さん」

二人が廊下へ出ようとした時、小さな呟きが聞こえた。
藤堂と朝比奈は足を止めて確認する。
静かに眠っていた空がうなされていた。
苦しそうな表情に、二人はすぐに彼女の元へ戻る。

「大丈夫かな? すごいうなされているけど。
藤堂さん、起こしますか?」
「ああ。そのほうがいいだろうな」

藤堂の言葉に頷き、朝比奈は空の肩に手を置いた。
その時だった。

「……ごめん。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!」

決壊したように溢れ出る悲痛な謝罪に藤堂達は絶句する。
空は固く目を閉ざしたまま何度も謝り、グッと息を詰まらせ、大きく咳き込んだ。
すぐに藤堂は動き、空を抱き起こして背をさする。
朝比奈は「水を持ってきます!」と言いながら部屋を飛び出した。
咳が止まり、目を覚ました空は肩で息をしながら視線をさまよわせる。
大きな手がどうして自分の背をさすっているのか、理解できなくて目を丸くする。  

「藤堂、さん……?」
「ああ」
「あの、背中……」
「苦しくないか?」

ぎこちなく頷けば、大きな手がそっと離れた。
どうして背中を?と疑問に思えば、藤堂は「先に水を」とだけ言う。
理解が追いつかなくて気まずくなれば、廊下からバッと朝比奈が現れた。

「藤堂さん、冷蔵庫から持ってきま────あ、空ちゃん起きたね。大丈夫?」

いつもと違って今の朝比奈にはどこか余裕が無い。
サッと空に歩み寄り、未開封の飲料水を両手で渡してきた。

「喉痛いと思うから飲んで」
「は、はい」

キャップを外して一口飲む。息苦しさがスッと楽になったものの、それは一瞬だけで、今度は胸が苦しくなった。

「さっきすごいうなされてたよ」
「うなされてた……?」
「いっぱい謝ってたよ。ごめんなさいって」

ハッと空の面差しが変わる。みるみる顔色が悪くなる。
ルルーシュに言えなかった言葉を、まさか声に出していたなんて。

「あの姿になってる間、何かあった?」

心配する声に返事しなければと思うのに、込み上げる罪悪感で一言も喋れなかった。

「朝比奈、やめろ」

威圧感のある低い声だった。朝比奈は表情をサッと変えて口を閉じ、空は思わず身をすくめる。
怯えさせてしまった、と後悔する顔になった藤堂は内心、ううむ……と唸った。

「……ここには、う、誰も入らないようにする。気持ちが落ち着くまでここに居なさい……」

ぎこちない声だ。考えながら言葉を絞り出しているのだろう。
藤堂はゆっくりと離れ、朝比奈を連れて部屋を出ていった。

体が重くて立ち上がれない。ひとりにしてもらえてホッとしたが、空は申し訳なくなって顔を伏せる。
部屋が静かになったと思えば、なぜか朝比奈が急ぎ足で戻ってきた。
空は驚いて顔を上げる。

「ごめんね。どうしても空ちゃんに言いたい事があって」
「は、はい」
「ごめんなさいって思う何かがあったとしても、ごめんなさいって謝らなくていいからね」
「え?」

思いもしない言葉に目を白黒させた。

「謝るんじゃなくて、自分にできる事をすればいい。
どうすれば相手にとって最善かを考えるんだ。
考えて行動して、そうすれば謝るよりもずっと良い。
だから大丈夫だよ」

目の前が晴れていくような気がした。
朝比奈の誠実な言葉に、空は深く頷いた。

「できる事が分からなくて悩んだら相談して。
話聞いてくれる仲間も、助けてくれる大人も、空ちゃんの周りにはたくさんいるんだから。
藤堂さんも絶対そばに居てくれるはずだよ」

にこっと明るく爽やかに笑う。

「それじゃあ行くね。僕の言いたい事聞いてくれてありがとう」

朝比奈は軽やかに立ち去ろうとする。
空はガバッと立ち上がり、バッと頭を下げた。

「ありがとうございますっ!!」

朝比奈が微笑んだ気配がした。
頭をそっと上げれば、もう目の前に彼の姿はない。
颯爽と現れて助けて風のように去っていくヒーローのようだった。

「自分にできる事を……」

今なら分かる。
自分にできる事は、すべきことはルルーシュに伝える事だ。
全てを包み隠さずに。

部屋を出て、ゼロがどこにいるかカレンに確認した空は、緊張しながらゼロの私室に行った。
ノックしても返事がない。鍵をかけられているだろう。
自分の名を告げても、扉はいつまでも開かない。

「(ルルーシュ……)」

話したくても話せない。
こうなったのは自分のせいだった。


  ***


雲がない夜空に満月がポツンと浮かんでいる。
月明かりが照らすクラブハウスは幻想的で、風でざぁざぁ揺れる木々は暗く濃い色をしていた。
ここまで送ってくれたカレンが帰ってから、ナナリーと咲世子さんにおやすみなさいを言ってから、ひとりになってから、どれだけ時間が経っただろう。
肌に触れ、手を握り、どこを触ってもひんやり冷たい。
温かさが感じられなくなっていた。
でも寒くはない。外に居続けて感覚がマヒしたみたいだ。

月の位置が違う。
そんな事を考えながらクラブハウスの玄関でぼんやり立つ空は、帰宅する人影に気づいて足を動かした。

「お帰りなさい、ルルーシュ」

こんな時間まで外にいるとは思っていなかったのだろう、月明かりの下でルルーシュはひどく驚いていた。

今立っている場所だと遠く感じる。
いつも話している距離まで近づいた。
紫の瞳がよく見える。やっと見ることができた。

「あたしは白兜のパイロットが誰なのか最初から知っていた。
知っててルルーシュに黙っていた。
怖かったの。話す事でルルーシュとスザクが今までと同じようにいられなくなるんじゃ、なんて考えて……。
自分勝手な理由で隠して、黙っててごめんなさい。
あたしが知ってることを全部話すから。
だから……聞いてほしい」

ルルーシュの顔に驚きの色はもう無かった。
今度はルルーシュが歩み寄り、無言で上着を脱ぐ。
目を丸くする空にルルーシュはその上着を羽織らせた。

「ずっとここにいたのか?」

焦りを帯びた問い詰める声。
ルルーシュの瞳が自分をちゃんと見つめている。それが嬉しかった。
ありがとう、と言おうとした空の手をルルーシュは握り、クラブハウスへの中へ連れていく。

「黙っていたことを責めるつもりはない。
前に言っただろう。
おまえが大丈夫だと思ったら話せ、と」
「そう言ってくれたけど、でも、あたしはそれに甘えちゃダメだった。
だって今日の事が無かったら多分話さなかった。
ずっと……話さなかったと思う。
あたしの部屋に行こう、ルルーシュ」

優しく引いてくれる手を握り直し、今度は空が前に出る。
進む足は震えていなかった。

自分の部屋にルルーシュを通し、電気をつけて座ってもらう。
空は覚悟を決めた顔でルルーシュを正面から見つめる。

「始まりはシンジュクだった」

立ったままのほうが話しやすい。
ルルーシュが頷いてから空は続けた。

「シンジュクで、スザクは初めて白兜────ランスロットに乗ったの。戦場のナイトメアを止める為に。
ルルーシュとあの子を助けないと、って」

話を聞く紫の瞳が、驚愕で大きく見開いた。
ルルーシュは呆けてポカンとした口を片手で隠す。

そして空は次に、伏せていたスザク視点のところを順に話していく。
毎話、テレビに釘付けになっていたから、それぞれの場面を今でもハッキリと説明できる。
5話のユフィとスザクの場面と、スザクが戦う理由を最後まで話し終わった後、空はやっと深く息を吐いた。
ルルーシュは今も無言のままだ。
脚を組み、顎に手を当てている。
空はゆっくり歩み寄り、隣にソッと腰掛ける。
もう深夜だ。普段は寝ている時間だ。
こんな遅くまで付き合わせてしまったことに、また罪悪感を抱いてしまう。

「よく話してくれた」

柔らかく笑んだ声に、空は安堵で顔をほころばせた。

「聞いてくれてありがとう」
「今でも思うか? 俺とスザクの関係が壊れると」
「ううん。
ルルーシュならきっと壊さない」
「そうだ。俺の気持ちは変わらない。
敵だとしても、スザクは俺の友達だ。
でもあいつが白兜のパイロットなら、次の戦場にも必ず現れるだろう」
「ゼロとして戦うんだよね……」
「ああ。
白兜は俺の作戦をことごとく潰していく。脅威は排除しなければならない。
空がもし俺なら白兜をどう無力化する?」

挑むような瞳でルルーシュは問い掛けてきた。
もし自分がルルーシュなら? 空は考える。
わずかに沈黙し、彼女は答えた。

「『白兜を脅威だと思わない存在にする』かな。
あたしなら、スザクと敵対するんじゃなくて一緒に戦いたい。
でも……」
「……スザクはゼロの仲間には絶対にならない。
説得しても勧誘しても、スザクの心には響かないだろう。
間違った方法で手に入れた結果に価値はない、とゼロを拒絶したからな」
「ルルーシュならどう無力化する?」
「俺か? そうだな……」

にやりとルルーシュは笑う。
ちょっとした意地悪をひらめいたような表情だ。

「今は話したくない。
いつか絶対話すから」

かつて自分が言ったことをそのまま言われ、空はブッと吹き出し、肩を震わせて笑う。

「それ、あたしの、ふふふ、あははっ」

勝ち誇った顔でにんまりするルルーシュは、笑い声を心地よく感じて口元をゆるませた。
空は満足そうに息を吐き、ルルーシュと同じように微笑んだ。

「わかった。
ルルーシュが話せると思った時に聞かせて」
「ああ」

ルルーシュが左手を出してくる。
なんだろう?と不思議に思いつつ右手を差し出せば、あっという間に恋人繋ぎで手を握られた。
指の間が温かくて、空は照れくさそうにはにかんだ。

「他に話したい事は?」
「あるよ。中華連邦について」

そして、ルルーシュは空から聞かされる。
2週間眠り続けている間、彼女が体験していた出来事を。


[Back][次へ]
 


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -