24-1 空編

いつの間にか寝ていたようだ。
病室は明るくなっていて、壁掛け時計に目をやれば6時前。
何も食べてないけどお腹は空いていない。
頭がズキズキと痛い。
最低の気分だ。

「どうしてって……聞いたのに……」

あたしの『どうして』に結局ルルーシュは何も言ってくれなかった。
浮かべた嘲笑。冷たい眼差し。


「……そうか。そんなにあの男に会いたいのか」


冷酷な声にゾッとした。
昨日言われた言葉が徐々にじわじわと染み渡っていく。
そしてやっと、気づいた。

「男……?」

何を言っているんだルルーシュのヤツは。
何を思って男だなんて。

「え……? ちょ、ちょっと待って……。
ルルーシュ、もしかして……」

勘違いしている!?
手紙の差出人がユフィじゃなくて別の誰かだと。
そして気づいた。思い出してしまった。
ユフィの事をルルーシュに話していないのを。

「あーーーー!!
ごめんルルーシュ!!!!」

頭を抱えて土下座したくなったけど、それより電話だ。
早く電話して説明しないと!!
白い携帯をとっさに握ったけど、早朝の時間帯に萎縮してしまう。
こんな時間に電話してもいいのだろうか? もっと後でもいいんじゃないか……

「……いいわけない!!」

ダッシュで病室を後にした。
何時でもいいから電話しろって言ったのはルルーシュだ。
廊下を走らないように気をつけながら進み、急いで中庭に出る。
ここなら電話しても大丈夫だろう。
白い携帯を開き、アドレス帳を確認すれば、ルルーシュの名前と番号が唯一登録されている。
電話をかけたものの、呼び出し音が続くだけでルルーシュには繋がらない。
電話かける時間が早すぎたようだ。また後でかけるか。
落胆しながら携帯を閉じる。
 
「ソラ!」

聞こえた声に驚いた。
パッと顔を上げればマオが走り寄ってくる。

「マオ!」
「ソラ、久しぶり。
キミが起きたって聞いて会いに来たんだ」

子供のような笑顔で走ってくるマオはあちこち包帯を巻いていて痛々しい。
あたしと同じ入院患者の薄緑色の服に白いコートを羽織っていて、ゴーグルとヘッドホンは相変わらずだ。
まさかこんな朝早くから偶然会えるなんて。

「マオ、何があったの?
ひどい怪我……」

マオは笑みを浮かべたまま答えない。
ジッと見つめるだけだ。

「……マオ?」
「本当に覚えてないんだね」

何を?と疑問に思ったけど、聞き返す前に携帯が鳴る。
画面を確認してホッとした。ルルーシュだ。

「ルルーシュからの電話?
ボクは大丈夫だよ。先に出て」
「ごめん、ありがとう」

マオに背を向けて電話に出ようとしたけど、違和感に気づいて携帯を操作する手が止まる。
どうしてマオが、ルルーシュを知っているんだろう?
後ろで気配を感じて思わず振り返ろうとすれば、顔の下半分を布で覆われた。
水を含んでいるように湿っていて、薬品独特の匂いがする。
ぐらりと視界が傾き、あっという間に意識が飛んだ。


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