「ほら、ここ来いよ。」
和やかな笑顔を浮かべ、肘をついた手を枕にして布団の上に自分の上司がその体を横たえていた。そしてぽんぽんと空いたスペースを叩いて誘っている。はて、どうしてこんなことになったのだろうか。時計の針はとっくに日付を跨いで深夜を知らせる。こちこちという音がやけに大きく響き、自分の胸の音も聞こえるんじゃないかという位に心臓は煩く、物音一つしなかった。首の後ろから耳にかけてかあと熱が伝わる。こんな感じになるのは親と映画やドラマのベッドシーンを一緒に見るくらいの恥ずかしさだと昔の経験に当てはまる行動を想起させていた。額には嫌な汗が吹き出しそうだ。もう口の中はからからに乾いて喉の奥がくっついて呼吸がしにくい。先程まで二人で酒を呷っていたが、沖田さんはこれくらいで酔っ払う人ではないし、顔も赤くはなっていない。さっきまで言動も正常だった、と注意深く観察していると動こうとしない自分に尚誘いかけるように今度はおいでおいでをする。その沖田さんから少し離れたところで自分は何故か膝の上に握り拳をして正座している。無意識の内に相当力を込めたのであろう、開いてみると手のひらに爪の後がくっきりと残っていた。くそ、と心の中で舌打ちしつつ昇華できない思いを上司のせいにしてどうにでもなれとそのまま懐に飛び込んだ。そうすると待っていましたとばかりに嬉しそうな顔をする沖田さんが優しく布団をかけてくれた。
「どうしてこんなことするんですか。」
「いや、悩んでる永井が可愛いからついな。でも来てくれて嬉しいよ。」
この上司は自分がどんな思い出我慢しているのか知っているのだろうか。少し疚しい考えをしていた自分を殴りたくなった。






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