ぽつぽつと疎らに雨が降っていた。全身を覆う衣類に阻まれた滴がぱらぱらと音を立てて滑っていた。弾かれなかった水分は服に吸収されて重さを増やしていった。殻の記憶で雨の時は傘をさしていたようだが今となっては必要もないだろう。ぼう、と海沿いを歩くと水平線の果てまで雨雲のような黒い雲が隙間なく空を埋めていた。近くに雨宿りするような場所もないようで、そのまま地面を擦るように歩いた。緩やかな傾斜の坂の登り口に差し掛かったとき、ふと誰かに呼ばれた。
「永井。」
呼ばれた方を向くと壊れた電灯の下に沖田さんがぽつんと立っていた。右手に骨の折れた傘が申し訳ない程度に雨から身を守る様にさされていた。こっちに来いとばかりにおいでおいでをする沖田さんに早走で駆け寄ると自分との間に傘を傾けた。にこにこと笑う沖田さんにありがとうございますと言うとボロい傘でごめんな、と笑いながら手を繋がれた。

あの世でハッピーエンド





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