永遠がそこにいる

今日は五限のみという自分史上最高の時間割の曜日で、朝はのんびりでき講義もただぼーっとしてるだけでよかった。一緒に講義を受けたボニーはバイトがあると言って終わったと同時に教室を一番に出て行ってしまったから帰りは一人。私もそろそろバイトでもしようかな。でも接客とか向いてないしそもそも働くのが面倒くさい。両親からの仕送りも充分だし学生ニートの立場から抜け出せそうにない。そんな事を考えているうちにアナウンスが耳に入り、定期を運転手さんに見せて最寄りのバス停で降りた。目の前のコンビニに足を踏み入れ適当にお菓子類をカゴに入れていく。デザートコーナーには新商品のティラミスとなめらかプリンがある。プリンにしよう。

「ヤケ食いでもすんのか」

突然掛けられた声に振り返るともう会う事もないと思っていた人物がいた。

「トラガルファーさん…こんばんは」
「トラファルガーだ」
「ここらへんに住んでるんですか?」
「まあな」

あの携帯入れ替え事件から、当たり前だが一度も連絡を取ってない。というか今の今まで頭からすっぽりと抜けていた。今日も黒いスーツを着こなしているトラファルガーさんの視線はずっと私の持つカゴの中に注がれたままだ。

「夜ご飯と明日の朝ご飯兼昼ご飯です」
「は?」
「作るの面倒くさいので」
「なら弁当食えばいいじゃねえか」
「お菓子でいいかなーって」
「へえ」

自分から聞いておいて超どうでもいいって態度でそのまま飲み物コーナーへ向かって行ったトラファルガーさん。まあいいや、帰ろう。会計を済ませて徒歩二分のマンションへ。大学進学を境に自立しろと半ば強制的に一人暮らしをさせられているが、自立というわりには学費も払ってもらっているからただ単に厄介払いされただけな気もする。バッグから鍵を取り出している間にカツンカツンと廊下に響く足音が段々と近付いてくる。どうせこの階の住人だろうと鍵穴に差し込むとすぐ近くでその音が止んだ。

「お前…」
「トラファルガーさん?何かご用ですか?」
「ここはおれの家だ。つーかこっちのセリフだ」
「それもこっちのセリフっていうか…え、お隣さんでしたか」
「驚いたな」
「驚いてるようには見えないんですけど!」

こんな偶然あるのか。怖。チラッとコンビニの袋を見るやいなやすぐに部屋に入って行ってしまった。トラファルガーさん宅の表札は空欄のままだったが、気付かなかったのはそのせいじゃなくて近所付き合いが悪いせいだと思う。お互いに。早く家でのんびりしようとドアノブに手を掛けたタイミングでガチャとドアが開く音と共に「待て」と声を掛けられた。廊下に出て手招きするトラファルガーさんから受け取ったのはラップのかかったお皿と小鉢。

「これ…」
「茄子の煮浸しときんぴら。余ってるからやる。嫌いか?」
「好きです、ありがとうございます」
「飯はちゃんと食えよ」

そう言い残して再び部屋に戻って行ってしまった。艶々で美味しそう。ぐうとお腹が鳴った。




  

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