そんなのデタラメだって縋って

サボを連れて来たらタダ。去年の学園祭でサボに一目惚れしたという他校の友人の一言に釣られた。そこまで食に関心は無いが、友人の奢りでいつもよりワンランク上の小洒落た店で無料で飲み食いできるなら行かない手はない。

「よし、心優しきサボくんが味玉を献上してやろう」
「いやいやそうじゃなくてさ、話聞いてる?」

お昼時に混雑する食堂の端にある丸テーブル。向かいに座るサボから味玉の乗ったレンゲを受け取った。私が食べるのを確認してから麺にふうふう息を吹き掛けるサボは半熟じゃないと食べたくないらしく、醤油ラーメンを頼む度に押し付けられるのだ。何かと講義が被り、流れで頻繁に昼食を取るようになっていたのでサボといるのが習慣となっている。そこにボニーがいたりエースがいたり。

「面倒くせえもん」
「サボくんも連れて来てってお願いされちゃったの。どうせ暇でしょ?美味しいご飯だよ?一緒に行こうよ」
「暇じゃねえっつうの。てかお前合コンとか行くタイプだったか?彼氏とかもうよく分からないってぼやいてたじゃねえか」
「それはそうだけど」

告白されて嫌な気はしなかったから付き合ったが二、三ヶ月もすると他に好きな人が出来たと別れを告げられ、それをあっさり受け入れた。フられたというのに悲しみも怒りも全く湧かない。学生の恋愛なんて所詮そんなものなんだろう。目の前のどこからどうみてもイケメン部類である友人も異性絡みで何かと苦労している。私なんか比じゃないくらい。モテる男は大変だ。

「あ、もしかして彼女できちゃった?」
「そんな気分じゃねえんだよ。とにかくおれは行かねえぞ」
「そっか。サボが行かないなら私も行かない。乗り気じゃないなら無理に誘う必要も無いしね」
「あっそう」

友人には怒られそうだがそもそも彼氏が欲しい訳じゃないんだ。次にもし付き合うとしたらちゃんと心から好きと言える人にしよう。今日のお昼であるパックの野菜ジュースを飲みながらぼんやりと思った。

「最近エースに会ってないけど元気にしてるの?」
「まああいつは訓練されたバイト戦士だからな。相変わらずだ」
「エースって意外と真面目だよね。礼儀正しいし」
「家来るか?エースが作った晩飯美味いぞ」
「いいの?」

頷いてトレーを返却しに行ったサボの背中を何となく目で追っていると、周辺のテーブルの女の子達が熱視線を送っていて苦笑した。いつかサボくんに近付かないで!やら言われて背後からグサッと刺されそうだな。戻ったサボに「愛してるよー」と手を振ったら露骨に嫌そうな顔をされた。




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