浮気のボーダーラインは人それぞれ1【下ネタ 】
なんやかんやあり、俺は万事屋の野郎と入れ替わった。
その辺知らねぇとか抜かしてるそこのお前はとりあえず漫画を読め。アニメを見ろ。
面倒臭すぎる展開に二人で頭を抱えた結果、とりあえず元に戻るまではなるべく違和感無くお互いの生活を乗り切ろうという話になり、各々の手続きや買い物を済ませ解散した。
そして心なしか自分の身体より若干重たい身体と毛髪を引き摺り、万事屋の扉の前までやってきた、は良いものの…コイツいつもどんなテンションで帰宅してんだ?
普通にただいまとか言うのか?言うよな?さすがに言うよな?
「ただい、ま」
屯所暮らしのせいであまり使う事の無い単語を控えめな音量で口にした。
居間の手前から「おかえり」と返事が帰って来て緊張が増す。
「おかえり銀さ、…玄関に突っ立って何してんの?」
「げっ、おまっ、何してんだ。」
「何してんだって…銀さんが呼んだんでしょ。金無いから飯よろしくって。ていうか今"げっ"て言った?」
「あ、あぁそうなのか…そうだよな。」
「ねぇ"げっ"て言ったでしょ?」
「あ、銀さん帰ってきたんですか?早く手洗って配膳手伝ってくださいよ。仕事もしないでまたパチンコしてたの知ってるんですからね僕ら。夕日さんから筒抜けですからね。」
ふざけんなあの天パ…!
ガキどもに加えてこの女まで捌けるわけねぇだろ!!
どんな感じで過ごしてんだよ普段!!ていうかコイツら付き合ってんだよね!?
ますます対処しずれぇよ!!
「「「「いただきまーす」」」」
とりあえず食卓を囲んだがコイツの容姿のままマヨネーズをぶっかける訳にもいかず、何処と無く物足りないおかずに手をつける。
マヨネーズの無い飯なんか、豆腐の入ってない麻婆豆腐みてぇなもんだろと思っていたが案外イケる。
「ごちそうさん。うまかった。」
「…え、」
何の気なしに感想を述べると、全員の視線がこちらに集中した。
な、なんだよ俺変なこと言ったか…?
「銀ちゃんが素直にうまいなんて言うの珍しいアル…」
「どうしたんですか銀さん…」
「もしかして遂に身を固める覚悟ができたアルか!?プロポーズするアルか!?」
「バッ!!しねぇよ!!…た、たぶん!」
たったそれだけの一言で、そそくさと食器を片付けだした夕日は若干顔が赤いし、一体コイツは普段自分の女に対してどんな態度で過ごしてんだ!!
風呂を洗うと申し出れば気持ち悪がられ、すぐに風呂に入ったチャイナ娘がいつまでも髪を乾かさねぇからドライヤーを持ってきてやれば気持ち悪がられ、煙管を吸えばイメチェンかとバカにされ、禁断症状に耐え兼ねてこっそり台所でマヨネーズを啜れば無駄にデカい犬に吠えられ、とにかく疲れた。
コイツが普段どれだけ自堕落な生活を送っているか改めて分かった。クズだ。コイツはクズだ。
「なんか今日の銀ちゃん変アル。気持ち悪いから夕日泊まって行ってヨ。コイツと二人きりにしないでヨ。」
「い、いいけど…。明日休みだし。」
「え"っ!いや夕日、お前も帰れ。今日は…アレ、俺なんか調子悪ぃし、帰れ。」
「…やっぱ銀さん今日なんか変。怪しいから泊まる。」
ちょっと待ておいぃいいいいい!!!
どうすんだよこれぇええええ!!!
待て待て待て行くな眼鏡ぇええええ!!!
それからなんとか引き止めようとゴネてみたが更に気持ち悪がられ眼鏡は逃げるように家を出ていってしまった。
振り返れば廊下で仁王立ちする夕日。
ヤバイだろ。これは絶対ヤバイ状況だろ。いや、チャイナ娘がいるから大丈夫か…?
「銀さん。怒らないから正直に言って。」
「な、何が…」
「何か隠してるでしょ?」
「かっかかかかかか隠してねぇよ!?」
「ふぅーん?」
トタトタと近付いてきた夕日に、下から睨むように見上げられる。
え、もしかしてバレてんのコレ…!?入れ替わってるってバレて
「浮気してきたんでしょ?」
「え」
「浮気隠すために優しくしてるんでしょ?そういうのすぐ分かるからね、女は。煙管なんか吸っちゃってどっかの女の煙にあてられてきたの?…別に、いいけど、さ。私達、付き合ってるのかどうかも、よく分かん
「してねぇよ。浮気なんか。」
少し顔を背けてやけに饒舌に文句を垂れる夕日に、つい否定の声が強くなる。
別にアイツを庇う訳じゃねぇが、入れ替わってる間に関係が悪化するなんてことがあっちゃ、面目が立たねぇだろ。
「浮気じゃねぇよ。ただ、ちょっと調子悪ぃっつったろ。だから…そういうのは、心配すんな。」
言い訳の苦し紛れに頭をくしゃりとかき混ぜると夕日は目を見開いて数秒停止し、盛大に吃りながら「お風呂入る」と口にして廊下の先に姿を消した。
な、なんつーか…むず痒い…。コイツらいつもこんな感じなのか…?合ってんのかこの感じ…?
「銀さんもお風呂入る?」
風呂から出てきた夕日は本来万事屋のものであろうぶかぶかの甚平を着ていて、一気に緊張感が高まった。
露出が激しいんだよいちいちはしたないんだよこのこの女は!!!
「お、俺も、入る。ちゃんと髪乾かせよ。」
「はぁい。」
ちょ、着々と晩酌の準備しちゃってんだけどコイツ…。大丈夫だよね、コレ大丈夫だよね?
服を脱ぎながらそういやこれアイツの身体だった…なんて思い直し、なるべく下半身に目を向けないように風呂を済ませた。
居間に戻るとテーブルにはずらりと酒とつまみが並んでいて、更にはチャイナの姿が見当たらず押し入れの中からバカでかいイビキが聞こえた。
風呂から上がったばっかなのに変な汗かいてんだけど。
寝るの早すぎだろあのチャイナ娘!二人にすんじゃねえ!!あの犬どこ行った!!犬でもいいからココにいてくれ!!
「…銀さん。」
「な、なんだよ。」
「なんでそっちに座るの?」
夕日の向かいのソファに腰かけるとまた怪訝な顔でそう言われ、夕日はポンポンと隣を叩いた。
「はい、ビール。」
「お、おぅ。」
仕方なく隣に座りビールの蓋を捻り上げた。小さく乾杯して喉に流し込む。こんなに夜をゆったりと過ごすのは久しぶりかもしれない。精神的には全く落ち着かねぇが。
「ビールそれで最後なんだよね。ねぇコレ、お酒の棚の奥にあったけど飲んでいい?見たことない銘柄なんだけど、どこで買ったの?」
瓶をクルリと回しながらラベルを眺める夕日につられ、覗いてみるとそこには"愛乱酒"と書いてあるがアルコール度数や産地は書かれていない。
「…やめとけ。怪しい。」
「怪しいって、自分で買ったんでしょ?あ、分かった、高いお酒だから独り占めするつもりなんでしょ。」
既にほんのり顔の赤い夕日は、離すもんかと言わんばかりに酒瓶を抱き締めた。
溜息混じりに飲み過ぎるなよと忠告すると嬉しそうに酒をコップに注いだ。
「ん、なんか…甘い。けど美味しい。飲む?」
違うコップに入れろと言うのもおかしい気がして受け取ったコップに口をつけ残りを飲み干す。
これくらいいいよな…アイツの身体なんだし。
「甘ぇな。…やけに強くねぇか?この酒。」
「ねぇ銀さん。」
不意に自分の座るすぐ横がギシと沈む音がして、隣を見れば間近で夕日に覗き込まれていた。
「神楽ちゃん達は、変って言ってたけど…わ、私は、今日の銀さん…嫌いじゃ、ないよ。」
赤い顔で見上げられ、心臓がドクンと波打った。
待て待て待て待て近い!!!近いし目のやり場に困んだよそのゆるっゆるの甚平!!!
「あの、さ。もう寝ない?」
「あああ、あぁ、眠ぃのか?先寝てろよ俺まだ飲みてぇか
「眠いんじゃ、なくて。」
「…は、」
サラと太股を撫でられ更に距離が縮まる。
おいテメェ万事屋ぁあああああああ!!!!!お前普段からこんな誘われ方してんのかテメェええええええ!!!!!
待て待て待て心臓が持たねぇヤバイ。
しかもテメェの身体反応早すぎだろもう半分くらい臨戦体勢なんですけどぉおおおおおお!!!!
「お、落ち着けまだ夜は長ぇだろ、あの、とりあえずもうちょい飲ませろよ。な?」
「…じゃあ、飲んでていいよ。でも、」
太股にあった掌がスゥと足を辿り僅かに性器を霞めてから甚平のズボンに指をかけた。
「下半身だけ、貸して?声、我慢するから。」
「ま、待て待て待て落ち着け!頼むから落ち着いてぇええ!!」
俺の、っつーかアイツの下半身も落ち着けぇええええ!!!
今これアイツの身体とは言えそれはマズイだろ!!!
でもこれ断ったらまた浮気がどうのとか言われんじゃ…つーかそもそも我慢できそうにねぇっどうした俺の屈強な理性!!!
待て待て待てダメだろやっぱこれはダメだろ!!!
どうする俺ぇええええええええ!!!
◇
なんやかんやあり、俺はあのマヨラーと入れ替わった。
その辺知らねぇとか抜かしてるそこのお前はとりあえず漫画を読め。アニメを観ろ。
「だぁああああああ!!!!うるせぇええ寝かせろぉおおおおおおお!!!!!」
アイツの身体で屯所に帰るや否や数分起きにむさ苦しい男共が寄ってきて、やれ
書類にサイン下さいだの、やれ来週の討ち入りの配置がどうだの、コイツら副長がいなきゃ何も出来ねぇのかってほど休む暇なく仕事をさせられた。
「もうほぼ夜中じゃねぇかよ…。」
やっと自室らしい部屋で時計を一瞥し盛大に舌打ちをする。
あーだりぃ…早く自分の身体に戻って昼まで爆睡こいてパチンコして酒飲みてぇ…
………パチンコ…そういや今日スったな。
…………アレ、そういや今日夕日に飯集ったよな俺………アレ、もしかしてアイツ万事屋に…い、る……?土方君入りの、俺と……?
変な汗がこめかみを伝い、音を立てて立ち上がると襖を吹っ飛ばす勢いで部屋を出た。
適当なパトカーに乗り込みサイレンを鳴らしながら町を突っ切った。
職権乱用上等だコラァアアアア!!!!
万事屋の階段を駆け上がり、ポストの奥に隠してある合鍵で戸を開けた。
ダダダダと短い廊下を走り仕切り戸を開け放つと、案の定嫌な予感は的中していた。
「っひ、ひじ、かたさん…?」
今にも襲いかからんばかりに土方君入りの俺と距離を詰めていた夕日が、こちらを見て困惑する。
まぁそりゃそうか…俺今土方君だし。
「おいおい銀時君それはねぇんじゃねえの?いくらその成りだからってそれはねぇんじゃねえの?」
「いや何もこのままおっ始めるつもりなんかなかったっつーの!テメェらこそなんなんだ!盛りのついた猿か!!理性ゼロか!!そこでガキ寝てんのに!!」
「んなこと言いつつコイツに迫られてたじろいでたんじゃねえの?え、っは!?!?お前らもしかして…コレ飲んだ…?」
テーブルに置かれていたのは紛れもなく"あの酒"。
ヅラ伝いで夕日の話を聞いたらしい宇宙バカが送ってきた、珍しく気の利く代物だ。
そう…媚薬入りの、酒。
「夕日、」
土方君の声で名前を呼ぶだけで、ピクリと肩を揺らした夕日は訳がわからないという表情で俺と土方君を交互に見る。
その首を捕まえるように顎を捉え視線を寄せた。
「分かるか?俺達、中身入れ替わってんの。」
「…は?」
戸惑うのも無理はないだろうが、ここまで来たら暴露する他術はない。
「ハァ、そう言うことだ。今日俺と過ごして違和感があったのはそのせいだ。俺は土方。コイツが万事屋だ。」
俺の面をした土方君がそういうと、夕日は一気に赤面しソファの端に逃げた。
「ぅ、え、嘘でしょ?土方さんまで!からかわないで下さいよ!!」
「いや俺銀さん。」
「ほ、ホントに…?」
「それより夕日…」
ソファの背もたれ越しに夕日の濡れた首元に触れるとそれだけで息を強く吐いた。
「汗かいてっけどどうした?身体、おかしくねぇ?」
「っ、」
「オイ…もしかして、この酒…」
「アレ、お前も飲んだの?コレ、媚薬入りらしいんだよね、実は。」
「どうりで…」
同じく汗ばんだ銀色の前髪を掻き分けた土方君も下半身の熱を隠しきれずにいるらしい。
「なぁ土方君。」
「あ?」
「この身体、借りていい?」
「何するつもりだテメェ…!」
「何って、ナニ?」
「バカ言うなその面とナニでテメェの女に突っ込むつもりか?頭沸いてんだろ変態が!!!」
「じゃあお前のナニ突っ込むつもりか!?人の女に突っ込んで喘がせるつもりなんだろ変態が!!!」
「ナニ入れなくてもなんとか出来んだろ指とか道具で…!」
「土方君って意外と性癖偏ってんだね。」
「今を乗り切る為に言ってんだよ!!」
「土方君はどうすんの、ソレ。」
「お、俺は自分でなんとか…
「待て待て待てちょっと待ってくんないなんか想像したら嫌なんだけど!!銀さんのギンさんを土方君にマス掻かれてるようなモンだろ!?スゲェ嫌なんだけど!!」
「仕方ねぇだろじゃあどうすんだよ!!!」
「あの…」
卑猥な会話を繰り広げている間に、薬の効果は増大してきたようで。
「どっちでもいいから…、身体、貸して…」
…あー、銀さん良いこと思い付いちゃった。