20万打リクエスト | ナノ




みかんの皮の剥き方って結構性格出る



「…暇だねー」

「…暇だなー」

「神楽ちゃん達どこ行ったのー」

「知らねー」


月曜日の昼下がり。
仕事が休みだったから、万事屋へ遊びに来たはいいものの…新八君も神楽ちゃんも定春も、出掛けてしまったらしく不在。
銀さんと二人、和室のコタツで過ごす事かれこれ2時間程。

銀さんは、朝買ってきたらしいジャンプをさっきからもう何回も読み返してる。
なんなら先週のも読み返してる。

私はと言うと、食べ終えたみかんの皮でテーブルに日本地図を作っている。


「お前それ四国デカ過ぎだろ。」

「いやこんなもんでしょ。」


思わぬ指摘にチラッと銀さんに目をやると、その視線は既にジャンプへと戻っていた。
実はちょっと気になってんでしょみかんの皮遊び。実は一緒にやりたいんでしょ。


「あーぁあ…なんつーか…暇だな。」

「うん…暇だね…。まぁ、嫌いじゃないけどね。こういう日も。」


次は九州を作ろうと程よいサイズの皮を探してみたものの、どれも微妙に小さいものばかりだった。
そんなことをしている間に、銀さんは新しいみかんを手に取って手早く皮を剥くと、剥いたみかんを半分一気に口入れて皮と残りの半分を私にくれた。

銀さんがくれた皮は九州が作りやすいように配慮されていて、私は銀さんのこういう然り気無い可愛さが、好きでたまらないと改めて思う。


「さすがに毎日コレじゃ飽きんだろ。」


みかんを頬張りながら、またジャンプのページを捲り始めた銀さんが言う。


「私はイケるよ、こんな毎日でも。元々インドアだし。」

「まじか。」

「まじ。」


徐に身体を起こしてテーブルに散らばるみかんの皮を手に取った銀さんが、何かを作り始める。


「じゃあさ…毎日暇してれば?俺の隣で。一生。」


言いながら手を取られ、薬指にはめられたのはみかんの皮でできた輪っか。


「え、」


銀さんは困惑した私を余所にまた寝転んでジャンプを読み始めた。
でもその耳は少し赤い。


「え、あの…銀さん、何コレ。」

「何って…アレだろ。」

「アレって何。」

「だから…アレ、そのぉ。…っだー!!だから!!練習だろ練習!!本番はその…もっと金貯めてからじゃねェと…出来ねェし…アレだ、お前も本番に向けて気持ち作っとけ。だから今は、それでもつけとけよ。」


照れ臭そうに頭をボリボリ掻く銀さんが愛しくて、指に嵌まった少しベタつく輪っかが嬉しくて、少し視界が霞んだ。
こっちはもうとっくに、気持ちなんて出来上がってるよ。


「じゃあ私がみかんの皮で世界地図完成させるまでには、本物ちょうだいね。」

「まだ作る気かよ。」

「みかん何個いるかな。」

「アイツらにも食わせればすぐ出来ちまうんじゃねェ?」

「じゃあ銀さん、お仕事頑張らなきゃね。みかんいっぱい買えるように。」

「そっちかよ。」

「ふふふ。楽しみだなぁ。」


左手を眺めていたら、ジャンプがドサリと床に放られる音がして起き上がった銀さんに後ろから抱き締められた。
足と腕はしっかり私を捕まえていて、おでこを私の肩口に乗せると、何やら唸り始める。


「なに?」


小さく笑いながら問い掛けると、銀さんは何かに観念した様に小さな声を発する。


「あー…銀さん、さぁ…なんつーか…お前のこと、…す、…すげェ……すっ、す…す」


ガラッ
「たっだいまアルー!!」


玄関から響いた声に、慌てて離れた背後の体温が無性に名残惜しい。

だって、…い、今…


「見てよ銀ちゃんー!八百屋のジジイがみかんこんなにくれたア……夕日、顔真っ赤アル。」

「ぅえっ、」


だって、だって今…言うおとしたのって、…


「こ、これはアレ、ずっとコタツの中に、いたからだよ。」

「私もコタツに入れるヨロシこの引き籠り共。銀ちゃん…何やってるアルか。」

「いやちょっとこのコマすげぇ書き込まれてんなーと思って。どうやったらこんな繊細な線描けんだよと思って。」


ジャンプで覆われてるその顔も、赤いんだろうか。


「ただ今帰りましたー。」


買い物から帰って来たらしい新八君もコタツを覗きに来た。


「アレっどうしたんですかその大量のみかん。」

「八百屋のジジイがくれたアル!」

「そうなんだ!あはは実は僕も買ってきちゃったんだ。」


困ったような笑顔で買い物袋からみかんを取り出した新八君に釣られて笑顔になる。


銀さん。世界地図は、思ったより早く完成しちゃいそうだよ。
だけど…本番まで、ちゃんと待っててあげるから、その時こそちゃんと聞かせてね。


"好きだ"って。




*コメント&お返事*

かなた様!リクエストありがとうございました!!遅くなり大変申し訳ありません(T_T)
銀さんがヒロインに対して愛全開の激甘なお話とリクエスト頂いていたんですが、ヒロイン視点にしてしまったが故、ヒロインの愛全開感が否めないんですが…銀さんも仮プロポーズするくらい愛があるということで…お許し下さい(T_T)
これでも、うまく言葉にできない不器用っぷりは残しつつ、甘めを目指して頑張りました(T_T)

素敵なリクエストありがとうございました!!


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