20万打リクエスト | ナノ




最近のイルミネーションは色々進化しすぎ



そろそろインターホンが鳴るんじゃないか。
なんてソワソワしてしまうくらいには、休日の突然の訪問者にすっかり慣れてしまった。


ピンポーン


冬の日は短くて、もう太陽が西に傾きだした頃に訪問者を知らせる音が鳴り響いた。
洗濯物を取り込んでいた手を止めてモニターを覗くとそこには、予想通りの人物。


「今日はちょっと遅かったね。」


扉を開きながら言うと、着流し姿の総悟が気だるげに部屋に入ってくる。


「今日は午後から半休なんでさァ。昼飯食い損ねて腹減った。」

「味噌ラーメンと塩ラーメンどっちがいい?」

「選択肢ラーメンだけかよ。」


こんなやり取りももう当たり前と言っても良いくらい、総悟はよくここに来る。
隊服姿でやってきたかと思えばしばらく昼寝をして帰る日もあるし、丁度私が仕事から帰った頃に現れて夕飯をタカってくる日もある。
何のために来ているのかと聞けばきっと"サボるため"と言葉が返ってくるんだろうけど、それでも…いくら狭い部屋とは言え、一人でいるよりもなんとなく安心する。
とは言っても、総悟が私のことをどんな風に思ってるのか、疑問に思う部分もある。
ただ単にいいサボり場所と思われているのか、姉のような存在として慕ってくれているのか…どちらでもいいと思う反面、どこかで思ってる。
女として認識されてないことが悔しい、って。

ぼんやりとそんなことを思いながらグツグツと沸騰し始めたお湯の中に、乾麺を放り込む。

柔らかくなってきた麺をほぐしていたら、背後から視線を感じて振り返る。


「…なに?やっぱり味噌が良かった?」

「いや、ちげェ。……手、洗うの忘れてた。」


最近の総悟はちょっとおかしい。
うちに来たときも、時々一緒に外食する時なんかも、何処となくソワソワしている。
彼のドS性を知っているから、最初は何か悪戯のために隠し事でもしているのかと思っていたけど、どうやらそうではないらしい。
この子は一体何を考えてるんだろう。
その答えはでないまま、ラーメンが完成した。


「できたよ。」

「いただきやす。」

「召し上がれ。」


ほっぺをパンパンにしながら食べる姿は可愛い。
ズズッと音を立ててスープを飲むと、お椀はあっという間に空になった。


『もうすぐクリスマスということで本日はイルミネーション特集をお送りします!』


さして興味もないのに流していた情報番組から、さして興味もないクリスマス情報が耳に入ってくる。


「はぁ、もうクリスマスか…」

「独り身には関係ない話でさァ。」

「今年も独り身かぁ…」


"来年こそは彼氏と過ごすぞ"って、去年の今頃そう思っていたはずなのに。
今年も悲しいことに予定がない私は、当たり前のようにただ仕事をして終わる、いつも通りの1日になるのだろう。
机に突っ伏すと、テレビから流れるクリスマスソングが耳に入って更に惨めな気持ちに拍車を掛けた。


「これっぽっちも興味はねェが…見に行きやす?…電光。」


予想外の言葉に、音が出そうなほど勢いよく顔をあげてしまった。


「…せ、せめてイルミネーションって言おうよ、そこは。」


冗談だろうと思ってツッコんでみたものの、誘われた嬉しさと動揺のあまりキレは悪かった。
私ばっかり、こんな風にドキッとさせられているのが、やっぱり悔しい。


「一応聞いてやるけど予定は?」

「クリスマス…の?」


コクリと頷いた総悟は、ホラまたソワソワしている。


「仕事だけど…早番。」

「電光見るなら夜だろ。」

「…うん。」

「見たくねェなら別にいい。いつも通り、ココに来やす。」


会わない選択肢がないことに驚いて、目を点にして総悟を見つめる。
これは、どういう…悪戯…?


「チッ。タイミング、見計らってること…いい加減気付け。」


何のタイミング?聞くに聞けなかった。
総悟が赤くなった顔を隠すように手で覆っていて、悪戯じゃないって、分かってしまったから。


「…み、見たい。電光。」


ここのところソワソワしていた理由が、タイミングを見計らっていたからだとするなら、その"タイミング"が何を意味するのか…きっとクリスマスに分かる。

総悟が言い出しかった言葉が、きっと聞ける。


「っ…帰る。」


何時に無く動揺を見せた様子で立ち上がった総悟を玄関まで追う。


「総悟。」


呼び止めると、少しだけ赤く染まった不機嫌そうな顔がこちらに向く。


「クリスマス、楽しみにしてる。」

「…おちょくってると今襲うぞ。」

「それはダメ。」


だって、楽しみは…クリスマスまでとっておきたいから。


「次会うときは…覚悟しときなせェ。」


どうしよう。
クリスマスにサンタさんを待つ子供みたいに、その日が楽しみで仕方ない。

きっと、それは素敵な"タイミング"だから。



*コメント&お返事*

たわ様!リクエストありがとうございました!!
沖田君とのほのぼの甘々話というリクエストだったので、クリスマスをネタに書いてみました!
付き合う直前の一番ドキドキする頃の感じが出したかったんですが…ほのぼの感というよりグダグダ感強めになっている気しかしません…すみませんorz
二人の日常が少しでも伝われば…嬉しいです(T_T)
きっとクリスマス当日は沖田君がもっとドキドキさせてくれるはずなので、そこを妄想して楽しみましょう(そこも書けよ←)
更新遅くなってすみませんでした(T_T)
良かったらまた遊びに来てください(*´∀`)

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