20万打リクエスト | ナノ




壊したら中から意外な物でてきたりする【



『どうしても…私じゃ、ダメですか?』


休日に暇を持て余し入った飲み屋で、たまたまアイツに遭遇したのが数日前。
しばらく飲んで、アイツをアパートの下まで送った帰り際、振り絞るような声で放たれた台詞。
屯所へ帰るパトカーの中で、その日のことを思い出していた。


***


「…やめとけ。本気で傷付く前に、他当たれ。」


思い切り冷たく突き放すこともできたはずだ。だがどうしてか、突き放して、傷付けて、泣かせて、それで終わるような関係には、したくなかった。

できなかった。

中途半端な言葉は、余計に相手を苦しめるだけだと分かっているのに。


「土方さん……幸せになること、避けないで下さい。安心できる場所が、増えるのは、不安ですか?」


アイツの言葉に、過去を思い出さずにはいられなかった。
"幸せ"。"安らぎ"。
俺の元には、そんなものないと思っていた。与えられないと思っていた。だからこそ、避けてきた。


「私のことが好きじゃないなら…それは、しょうがないことです。諦められます。だけど、」


やめとけ。傷付ける前に引き返せ。


「もし、"俺なんかといても幸せにしてやれない"って、そう思ってブレーキをかけてるなら、そのブレーキ…壊したいです…。私じゃ、壊せませんか?」


自分に言い聞かせたはずの言葉は…ずっと踏み続けていたブレーキは…、アイツの冷えた手が、タバコを持つ俺の手に触れた瞬間に、散り散りに砕けるように俺の中で音を立てて壊れた。

指の隙間から落ちたタバコを踏みつけながら一歩前に進めば、夕日との距離は簡単にゼロになる。
壊れた勢いのまま、貪るように唇を奪っても、夕日は驚きもせずに全部受け入れた。
逆にこっちが戸惑いつつ口を離すと、優しく微笑みながら俺の頭を撫でた。


「大丈夫です。私が、幸せにしてあげます。」

「…当たり前ェだろ、俺のブレーキぶっ壊しやがって。」


わざとらしく怒ったように言えば、夕日は嬉しそうに微笑んだ。


「あの土方さん、…私のブレーキも壊れました。性欲の。」

「っ、お前なぁ、…今の雰囲気考えればわざわざそんなこと言わなくてもそういう流れになんの分かんだろ。色気もへったくれもねぇな。」

「ふふ、顔赤いですよ。」

「酒のせいだ。」


いつものように茶化し合いながら二人でアパートの階段を上がって、狭い玄関を潜った。
スタスタと部屋へ向かう夕日を追いながら改めてこの状況を考え、羞恥で死にそうになった。


「…風呂借りていいか。」

「あ、はい。一緒に入ります?」

「大人しく待ってろポンコツブレーキ。」


アイツが妙に冷静なのが悔しいくらい、心臓が騒がしかった。これから致す行為のことを考えてるせいじゃない。いや、それも多少はあったが。
こんなに心臓が騒ぐのは、ずっと…この気持ちにもブレーキをかけていたからだ。
少なからずきっと何処かで夕日に惹かれていた。夕日に、バカみてェに言い寄られるのは、嫌いじゃなかった。
それに気付かないよう、枷をかけて、閉じ込めていた。
それが一気に解放されてしまったのだから、気が動転しても仕方ない。


俺と入れ替わるように夕日が風呂に入った。
部屋に戻ると、コタツの脇に布団が敷いてあった。どこに座ろうか迷った挙げ句布団の端に座り、コタツの上の灰皿を引き寄せてタバコをくわえた。逆さまだった。

背後で物音を立てながら風呂から出てきた夕日に目を向けると、なんの躊躇もなく、すぐ隣に腰かけてきた。


「土方さん、言い忘れてました。」


俺の手からタバコを取り上げて灰皿に押し付けながら、真っ直ぐに見つめられる。


「好きです。」

「…知ってる。」


散々、聞いてきた台詞だ。
だけどこの時のこの言葉は、今までのどんな言葉より、一直線に心に入ってきた。


もう、とっくに壊れたブレーキは、当たり前に機能しなくて、触れたい衝動を抑えることもできずに夕日の後頭部に手を回し引き寄せた。
だが唇が触れる直前で、夕日はまた口を開いた。


「土方さん…。総悟の、お姉さんのこと…」


聞きたくなくて、無理矢理口を塞ぎながら、背後の布団に押し倒した。


「っ、聞いて。」


少し怒ったように止められて、眉間にシワを寄せた。
やっと素直になったってのに、またその話で冷静になってしまうのが嫌だった。


「私といると…私に似ている、彼女のこと…思い出しますか?」

「…思い出すって言ったら?」

「それでも、いいです。"忘れて"なんて言えません。どんなに傷付いても、大丈夫です。でも、私は優しくないから…」


俺の頬に触れた手は、風呂に入ったおかげか、暖かかった。


「これから、どんなに土方さんに怒られても、拒まれても、身を引いてあげません。土方さんの幸せを、諦めません。」


いつか、お互いのことを想い、お互いのことを諦めた俺とあの女のことを、まるで夕日は全部知っているかのように、優しく包んでくれた気がした。


「…鬼の副長の女になるなら…それくらいの度量がなきゃな。」


真っ直ぐな言葉をくれた夕日に、俺も精一杯、優しい声で答えた。
少し泣きそうな顔をした夕日の髪を撫でると、もう心の声を納めておくことすらできなくなった。


「夕日……、好きだ。」

「、私は、大好きです。」


今度は、どちらともなく顔を引き寄せ、唇に触れた。
自然と少しずつ、深くを探り会う舌の感覚に、頭の中が溶けそうになった。

夕日の服の中に手を滑り込ませ触れた肌は、どこもかしこも柔らかくて、強く触れたら壊れてしまうんじゃないかと怖くなった。

荒くなってきた夕日の息を飲み込むように口を塞いだまま、手を進め、掌で胸を包み込むよう動かすと、その柔らかさに堪らなくなってそっちに顔を寄せた。


「っ、ん」


沸き立つ欲が、どんどん理性を侵食していく。半ば衝動的に服の上から夕日の太股の内側を撫でた。

ピクッと反応した細い身体が全部欲しくて仕方なくて、剥ぎ取るように服を脱がせた。


「…わりぃ、ゆっくりしてやる余裕、ねェかも。」


言えば夕日は、妖艶な表情で残っていた下着を自ら剥ぎ取った。


「好きにして、いいですよ。」


子供をあやすような言い方に少しイラつきながら、露になった秘部に指を割り入れた。

声を漏らした唇に舌を這わせ、指を動かす。
一層荒くなった息に構うことなく深くキスをして、トロトロと熱い液を垂れ流すそこに指をゆっくり差し入れた。


「痛くねェか?」

「っは、い。」


ゆっくり指を動かすと、必死に俺の着流しにしがみついて声をあげた。
その声に、身体中の血液が全部下半身に集結したような感覚が走り、奮い起ったそこがはち切れそうになった。

いよいよ限界を感じて、指を引き抜き纏っていたものを脱ぎ捨てる。

覆い被さるように夕日の顔の横に手を着き、反り勃つそれを秘部に宛がった。


「入れていいか。」

「ダメって、言うと、思いますか…?」


濡れた瞳に、目元まで赤く染まった顔は、情欲以外のものを忘れたようにすら見えた。

ゆっくり腰を沈めると、久しぶりのその刺激に強く息が漏れた。


「ーんぁっ、」

「痛く、ねェ?」

「ん、…大、丈夫だから、もっと…壊して下さい。っ、」


その柔な身体をいちいち気遣ってギリギリのところで保っている理性で、壊すほどに掻き抱きたい衝動を抑えていたのがバレたらしい。
夕日が言っていた"性欲のブレーキ"という言葉を思い出して、そんなものが本当に存在するのなら、もっと…壊したいと思った。壊れたい、と思った。


「後悔、すんなよ。」

「んぁっ!」


そっから先はよく覚えてねェ。
耐えて、堪えて、我慢して、まともでいろと言い聞かせてきた人生で、初めて、自分の欲に忠実になったようにさえ思えた。

お陰様でブレーキは見事にぶっ壊れたし、一緒に頭のネジも数本飛んでいったんだと思う。
お互いを感じることだけ求めて、遠慮なしにもっと奥を求めた。


「っあ、っ、ん!」


酸欠になるんじゃねェかってくらいキスをして、腰を打ち続けた。
夕日の足の痙攣が止まらなくなるころ、やっとこっちの頂点が見えてきて、動きを早めると、夕日の声が部屋中に響き渡った。


「っ、」


夕日の上に欲望を吐き出しすと、まるで今まで守り続けてきた"自制"という名の枷が、液体に成り変わって出てきたみてェだなんて、ぼんやり思った。

夕日は荒い息を整えながら、裸のまま布団に潜り込んだ。

コタツに置いてあるタバコの箱から、一本取り出し火をつけて、布団の脇に灰皿を寄せ隣に寝転んだ。


「…私にも、一本下さい。」


自分のタバコを取りに行くのがダルかったのか、眠そうな目でそう言われた。
だが俺のタバコは、夕日の吸うタバコより相当タールが重いはずだと思い、一本やる気はなくなった。

代わりに、


「息吐け。」


疑問を抱きながらも、ふぅと息をついた夕日の唇を開くように唇を重ね、自分の肺に充満した煙を、夕日の中に吐き出した。


「これで我慢しろ。」


悪戯っぽくそう言って、もう一度音を立ててキスをすると、夕日は赤く染まった頬を隠すように顔を覆った。


「わ、私…このままだと、キュンってしすぎて…死ぬかもしれません。」

「…死なれちゃ困る。」


俺の返答に、ハッとしたように手を退けた夕日と目が合った。


「俺より先に死ねると思うなよ。」


体温を確かめるように首もとを撫でると、夕日はまた優しく微笑んだ。


「土方さんが死んだら…死ぬほど、悲しいけど…、私が死んで、土方さんが悲しい思いをするのは、もっと悲しいから…長生きしてみせます。」


"いつ死ぬか分からない俺といたら、幸せにしてやれない"
過去の俺はそう思った。だけど、"いつ死ぬか分からない"のは、俺に限ったことじゃない。


だから…俺も夕日も生きている今を、大事に生きるしかない。
それを教えてくれたのはアイツなんだから、全ての過去に、意味があったと思えた。


***


「副長、何ニヤけてんすか気持ち悪い。」

「あ?」


運転席の原田から軽蔑した視線を感じて、くわえたタバコを強く吸いながら首をそちらに向けた。


「何考えてたんスか?またマヨネー
「エロいこと。」

「……は!?」


運転中にも関わらず、こちらにグルンと首を向けたハゲ頭を思い切りひっぱたく。


「なっ、ど、どうしたんすか副長!?沖田さんに変な薬でも盛られました!? 」

「盛られてねェよ。まぁアレだ、ちょっとブレーキぶっ壊れたけど。」

「は?????」


頭の上にハテナを浮かべた原田に、"ここでいい"と車を止めさせると、心配そうに顔を覗き込まれた。


「マジで大丈夫っすか?なんか変っすよ?」

「今日、外泊するから近藤さんに伝えといてくれ。」

「外泊ってどこに!?」

「…秘密。」


ドアをバタンと閉めたガラス越しに、無線に向かって"こちら10番隊ー!全隊に告ぐー!!副長がおかしくなったぁあああ!!思春期の男子みたいになったぁあああ!!"と喚く原田の声が聞こえたが、まぁいずれバレることだと諦めた。


すぐそばのアパートを目指す足は、無意識に早まるばかりで、原田の言うこともあながち間違っちゃいねェか、と苦笑しながらインターホンに指をかけた。

真選組の頭脳、泣く子も黙る鬼の副長 土方十四郎は、


「よぅ。」

「っおかえりなさい、土方さん。」


コイツといると、


「夕日。」

「ん?」

「結婚するか。」


少し、壊れる。


*コメント&お返事*

幸様!リクエストありがとうございました!!遅くなって申し訳ありません(T_T)
"土方さん落ちバージョン(裏)"というリクエストでしたので、最終話感を出して書いてみました!!
一個前に更新している話の続きです!
今私の中で空前絶後の副長ブームが来ているので、書いてて楽しすぎました…(鼻息)
リクエストの際"人並み以上の土方さんが見たいです"とお言葉があったのですが…人並み越えられてるでしょうか……(震)
銀さん落ちの時のヒロインよりも、包容力と母性に溢れた感じを出してみました。ヒロインは自然に土方さんを"甘えさせてあげる"女だといいなぁ、なんて…
あと私の個人的偏見だと、銀さんは早漏だけど回数イケる人で、土方さんは若干遅漏の一発屋(←)な気がしています(あくまで私の妄想です)(下ネタ語り出してすみません)
とにかく土方フィーバーの中、情事後の一服シーンとか妄想するだけで楽しかったです…!!
そしてラスト、突然プロポーズされたヒロインがどんなリアクションをするのか…どんな結婚生活するのか…そこまで妄想して楽しんで頂ければ幸いです!!
リクエスト本当にありがとうございました!!
是非また遊びに来て下さい(*´∀`)ノ

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