似て似つ続編 | ナノ




似てるネタ×過去ネタ×再び



目の前でとんでもないアレンジを加えられたお茶漬けを啜る姉弟を、ただただ見守ることしか出来ず、数分の静寂に包まれる。

静寂を破ったのは、こっちサイドのドS。


「……あー、誰かに似てると思ったら…旦那に似てらァ。」


その声に、全員が俺と弟君を見比べた。


「はぁ!?似てないよ!!朝日はイケメンだもん!!」

「どういう意味だコルァア!!」

「朝日は、よく、小栗旬ノ介に似てるって言われるんだよね!最近小栗君短髪にしたでしょ?朝日も割と短髪だから、最近更に似てるよね。」

「…知ってる?銀さん三次元じゃ小栗旬だからね。」

「さっきまでニタニタ笑ってたから分かんなかったが、その鳥のエサ食ってる姿見て気付きやした。」

「ふふふ、面白いですね、沖田さん。」

「笑うと似てねェな。ちょっと旦那みてェに死んだ魚の目してみてくだせェ。」

「しようと思ってもできないですよねそれ。人間性が滲み出るやつですよね。」

「あー言われてみると…横顔似てるわ横顔。つーかテメェの髪の色が奇抜すぎて顔の印象持ってかれんな、ちょっと髪取れ。」

「ツッコミ担当がボケかましてんじゃねえぞ。」

「似てる…かなぁ?うーーん、あーでも…銀さんに初めて会った時、…なんとなく、安心したんだよね。初対面の人と、記憶なくなるまで飲むなんてなかなかないし。」

「お前さ、そういう良いことはもっと早く言わねぇ?」


そしたら出会った時点で手ェ出せたかもしれねェじゃん。


「え?私銀さんに言ったことあるよ、なんとなく落ち着くって。」

「いやアレどう考えてもバカにしてたよね、あの流れじゃバカにしてるとしか思えないやつだよね。」

「んー…そっかぁ、あの頃、うちに泊まっても添い寝しても手ェ出してこなかったから、安心感があるのかと思ってたけど…」


まぁ、俺何度も我慢してたからね。そこに安心したなら、手ェ出したタイミング間違ってなかったつーことか。


「雰囲気が…朝日に似てるからだったのかな。」


オイなんか結果的に俺の我慢という功績が全部弟にかっ拐われた気がすんだけど。


「…ま、"誰"が"誰"に似てても、結局、アンタらはくっついてたと思いやすぜ、俺ァ。」


あー、そういや、夕日も"似てるヤツがいる"って、散々言われてきたんだっけか。
だけどそんなこと忘れるくらい…今、夕日は夕日でしかない。


「ふふ、なんか懐かしい。土方さんと健康ランドでラーメン食べたのとか、総悟に調教するって言われたのとか。」

「調教…?」

「総悟は、こう見えてちょっと過保護なドSなんだよ。私、GPS付けられてるしね。アハハ!」

「………沖田さんとは気が合う気がする。」

「奇遇ですねィ、俺も思ってやした。」

「そのGPSの位置って、俺にもわかるようにできたりします?」

「できますぜィ。」

「是非。」

「アレ、意外なところが意気投合したね。」


いや意外じゃねぇよ、類は友を呼ぶだよ、自然の摂理だよ。
つーななんでちゃっかり姉追いかけ回そうとしてんだよ、どんだけ姉ちゃん好きなんだよ。


「浮気疑惑も晴れたことだし…総悟、そろそろ仕事戻んぞ。」

「待ってくだせェ、アドレス交換してるから。」


厄介なストーカーが一人増えたところで、サボり魔組織の二人は去っていった。
ちなみに沖田君が、土方君の財布から勝手に1万抜いて置いていってくれた。

真選組が居なくなったことで、一気に疎外感を感じ始めたが、それは夕日の提案によって打ち消される。


「銀さん、今日朝日のこと泊めてあげてくれない? 」

「あ!?なんでうちに!」

「だって、うち布団1枚しかないし。あ、私が万事屋泊まって、朝日うちで寝る?」

「それなら許す。」

「いや、だったら皆で万事屋泊まりません?」

「あ、それいいね!布団二枚しかないけど、くっつければなんとか寝れるんじゃない?」

「勝手に話進めんな!!お前さっきそこのホテル泊まろうとしてたじゃねえか!!」

「…満室な予感がするので。」

「満室になるわけねえだろあんなボロボロのホテル!!」

「よし、行ってみよ!」



満室だったぁあああああ!!!

なんでこんなボロッボロのホテルが満室なんだよ!!誰が泊まってんだよ!!
つーかこれよく見りゃビジネスホテルだったのね!!!


「いや別にここじゃなくても…ホラ、あっちのホテルでもいいだろ。どう見てもあっちのが綺麗そうだろ。」

「あれラブホですよ。さすがに姉とラブホはまずいでしょ。」

「一人で泊まれっつってんの!!!」

「じゃあ…坂田さん、どうですか、一緒に。」

「男同士で入る方がおかしいだろ!!!なんだテメェ寂しがり屋か!?一人で泊まる気ゼロか!?」
「あの…」
「かぶき町ならよくあることなんじゃないですか?カラオケあるしAV見れるし男同士でも楽しいですよきっと。あ、手ェ出さないから安心してください。」

「おい!!!お前の弟爽やかな顔してとんでもねえ不純野郎じゃねぇか!!!アバズレ姉弟なのか!?!?…アレ、夕日?」


すぐ後ろにいたはずの夕日が視界から消えていて、辺りを見渡すと道の脇の電柱の下でうずくまっていた。


「おぅぇえええええええええ」

「アハハ、飲ませ過ぎたかな。」

「こんのドSぅぅううううう!!!!オイ大丈夫か。」

「…ヤバイやつだ、これ…地面、ぐにゃぐにゃして、る。」

「してねぇよ。つーかお前良い歳こいて吐くまで飲むな!!自分のキャパ学べ。」


俺が言える台詞じゃないけど。


「だって…いつも…弟に、勝てないから…悔しいんだもん。朝日がベロベロに酔ったの見たことない、し。オセロも、麻雀も…勝てないし。料理も、朝日の方が、上手いし。うっ、」

「分かった分かった。とりあえず全部吐け。」

「俺のペースで飲ませると、いつも吐かせちゃうんだよなぁ。」

「ゲッホ、でも…銀さんと、弟が、一緒にいるなんて、なんか…嬉しい。」


吐きながら朦朧とした意識のまま話す、夕日の背を擦る。


「あっ朝日。銀さんね、高杉さんと友達なんだよ。」


思い出したように突然言い放たれた言葉を、訂正する隙もなく、後ろにいた弟に、肩を掴まれた。


「…本当、ですか…!?」


その表情は、ずっと表面だけを見せていたような笑顔とは違って、目は見開き、眉は吊り上がっていた。
過保護なコイツのことだから、今は犯罪者と化したアイツと友達だなんて聞いたらぜってェ別れろだのなんだの騒ぎ出すだろうと思ったし、まず友達じゃねえし、とりあえず訂正する。


「友達なんかじゃねぇよ。俺アイツ嫌いだ
「昔ね、一緒に戦ってたんだって!スゴくない?運命感じるでしょ?」


一頻り吐き終えたのか、立ち上がり、背中を擦っていた俺の腕に引っ付く。
え、運命なんて感じてたの?


「銀さんも、結構有名だったんだって!なんだっけ、犬夜叉?」

「余計なことペラペラ喋んな酔っ払い!!!」


このままだと更に余計なことまで口走りそうな夕日の口を塞いだ。
だってこのノリだとぜってェヅラのことまで言うだろ!!

こんのバカは!!!過去のことは(勝手に)水に流して全うに生きてる銀さんの平穏な日常ぶち壊す気か!!過保護な弟に通報でもされたらどうしてくれんの!?さっき沖田くんと連絡先交換してたし!!
アレ!?大丈夫コレ!?昔のことだから大丈夫だよね!?
つーかコイツ今ゲロ吐いてたこと忘れてた!!ぜってェ手に付いた!きったね!!


「も、もしかして……あなたが…白夜叉、なんですか…?」


夕日の口に触れた手を着物の裾で擦っていたら、あまりにも真っ直ぐな目線に貫かれて、何も言えず頭をボリボリ掻いた。


「…坂田さん!!いや…銀さん!!!!」


ゲロが付いたであろう俺の手を取って、強く握った弟は、目を輝かせて言い放った。


「姉と…結婚してください!!!!」


……アレ、なんか豹変したよこの子。

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