零が来た。
何時ものように無表情で、何時ものように綺麗に制服を着こなし、何時ものように髪を靡かせて。ただ何時もと違うのは、零が謎の指輪を嵌めていたこと。そしてやはり俺の隣に居ないこと。それが苦しいのに俺の隣に居るのはあの女で、零から庇う様にあの女を軽く抱き寄せる。わざとらしくあの女に怯えて見せる。
零そのまま幸村と真田と柳と仁王の方へ赴いた。
「苦痛を強いてしまい、大変申し訳御座いません。これから終わらせてますので、今暫くお待ち頂いても宜しいでしょうか?」
「うん…俺は、大丈夫だよ」
「俺も多分、大丈夫だ」
「…頑張るとしよう」
「…早めに、頼むぜよ」
「勿論で御座います」
零は幸村達に頭を下げた。話の内容からするに、零はこの女から解放する事が出来るという事なのだろうか?それならば急いで欲しい…また、零を傷付ける前に。
「自分、何しに来たんや?」
「クソクソてめぇ!また夢久に何かしようって思ってんじゃねぇだろうな!?」
「何か問題が御座いますか?」
「当たり前だろぃ!お前夢久になにするつもりだよ!?」
「つっても、無駄っすよね?夢久先輩の周りにこんだけの男が居たら…」
「特に、なんの問題も御座いません」
零はそう言った途端に姿を消し、あっとゆう間にあの女を拐った。俺達と、零達と、幸村達。そんな風に並んでいて、零は既に触れたくもないと言う様にその女を地面へ落とし、とても冷たい目でその女を見た。
「っ痛いー…!」
「申し訳御座いません。貴女に触れている時間は少しでも短くしたく、落としてしまいました」
「なっ…!」
「てめぇ!ふざけんな!夢久になんてことしやがんだ!」
「……黙って頂けますでしょうか?」
「ヒッ!」
零はへたりこんでいるあの女の額に、拳銃の銃口を付けた。そしてあの女が小さく悲鳴を上げる。全員が押し黙った。
「吹雪さん!?何を…!」
「ご安心下さい、幸村さん。撃つのは軒野さんのみに御座います故」
「そうじゃない!そんなことしたら君が…!」
「…私の身を案じて頂き有り難う御座います。ですが、これは必要な事に御座います」
「…てめぇ!夢久から離れろ!」
違う、あの女はどうなろうがどうでもいい。ただ俺は零があんな女のせいで手を汚して欲しくない!いや、零に汚れて欲しくない!
「やめろ!…命令だ!」
「…申し訳御座いませんが、私はもう貴方の執事ではありません」
その零の言葉に、俺は泣きたくなった。
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