泣きたくても泣けないのはあの女のせいで、それなのにあの女は恐怖で泣いていて腹が立つ。でもそれも表せない。


「ど、どうしてこんなことするのー…吹雪さん?私なにかした、かなー…?」

「…貴女はしていないと、シラをきるおつもりですか?」

「な、んの…ことー?」

「皆さんにかけた催眠を早々に解いて頂けますか?」

「催眠…?」

「はい、幸村さん方が今抵抗している"それ"は催眠です。それも強力な…なので私の様に対抗がある者、真田さんの様に普段から精神を磨いている者以外はとてもかかりやすいものです。柳さんと仁王くんは体質的にかかりにくい方なのでしょう。幸村さんは多少、対抗があるようですね」

「な、んで…!」

「そしてその手の催眠を解く方法は二つに御座います。1つは術師が自ら解く、2つは術師が死ぬ。私は後半の方法をとらせて頂きました」

「っ、や…!殺さないで!」

「これ程の事を行い、命乞いですか?残念ですが私の中で貴女は万死に値します」

「なんで!私はただ自分で努力して力をつけて、逆ハーにしただけじゃない!当たり前でしょう!?せっかく"ここ"に来たんだから!」

何を言っているのか理解し難い言葉が飛び交う。催眠?そうか、俺達はそれによってあの女に自由を奪われたのか。やはり零は凄い奴だ。すると零は今までにないくらいに冷徹な瞳をした。


「やはり貴女もその手の方でしたか…、全くもって遺憾です」

「な、」

「この世界は存在しております。皆様は生きていらっしゃいます、貴女の思う通りの…知っている通りの世界では御座いませんよ?貴女は所詮異端です、そしてこの世界に幾人か異端の方がいらっしゃいます。それでも歪まなければ貴女の様に異端を纏う事は御座いません」

「…どういう」

「簡単に言えば貴女がこの世界を受け入れ無かったから、愛さなかったからに御座います。貴女を飛ばしたのが元の世界の神でも、この世界にはこの世界の神がいらっしゃいます。その神に嫌われたのです。当たり前の事です、だって貴女はその神の何より大切なこの世界を否定しておいでですから」

「あ…ぁ、う…」

「泣かれても私にはどうすることも出来ません。貴女はずっと間違えてしまわれました、それが貴女が異端を纏う理由に御座います」


ぽろぽろと涙を流すあの女に、未だ銃口を付けている零。奇妙なこの図はただ見ただけなら零が悪者に見えるはずなのに、あの女が纏うものかそれを拒みあの女が悪者にしか見えない。



next...


 


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