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雄飛とたっぷり一緒に過ごせた春休みが終わってしまい、今年度もまた相変わらず航やお馴染みの友人たちと過ごす大学生活が始まった。
「なんで春休み終わっていきなり就活の話されなきゃなんねえの?」
「ぼちぼち就活始まるからだろ。」
「もう始まんの!?」
さっそく学生たちの前に立ち喋っている講師は『就活』という言葉を何度も口にしてくるから、俺はうんざりした気持ちになりながら航に話しかけるが、航からは真面目な返事しか返ってこない。正直就活なんて4年生になってからだと思ってたのに、まるで焦らされているような気分だ。
「るいが自己分析から徐々に始めていったら良いって言ってた。」
「自己分析?あ、俺一個分かったことあるよ。」
「分かったこと?なに?」
俺超超超ドM野郎なんです。…なんつってね。
「へへっ」
「いや意味がわからん。なんの笑いだよ。」
あ〜…思い出したらにやけてきちゃうなぁ。雄飛んちでいっぱいえっちしたり、一緒に過ごせた春休み最高だったなぁ。雄飛今どうしてるだろ、ヤンキーこわ、っつって女の子からちゃんと避けられてたらいいんだけどなぁ。
「おい、お前えろい事考えてんのか知らんけどにやけてねえでちゃんと話聞いといた方が良いぞ。気付いた時には周りみんな就活始めててどんどん置いてかれるぞ。」
「…そ、そうだな。ちゃんと聞いとくよ。」
おいー、えろい事考えてるとか言うなよその通りだから恥ずいだろーが。でも今ではもうすっかり矢田くんみたいにしっかりしたことを言うようになった航の言葉に反抗はせず素直に頷く。だって航に置いていかれるのは嫌だから。
しかしまだ大学3年になったばかり。大好きな恋人の受験が終わり、会える時間も増えてちょっとくらいは浮かれてたって良いだろう。
俺は講師の話を聞きながらも、気付いた時には頭の中で雄飛のことばかり考えていて、次はいつ会えるかな、って雄飛に会える時が楽しみで楽しみで仕方なかった。
「あ〜…雄飛どうしてるかなぁ。」
「しっかし雄飛ももう大学生なのか。早いなぁ。」
今年の年間スケジュールや履修登録の話、それから就活の話に学校生活においての注意事項など、うんざりしてくるような話がようやく終わり、航と教室を出ながらポツリとぼやきを溢すと、航からはそんなしみじみとした言葉が返ってきた。
「てか俺ももう雄飛と二年経つのすごくね?」
「おぉ、続いたなぁ。」
「雄飛の実家にもお邪魔するようになってお母さんとも仲良くなってきたし。すごくね?」
「うん、すごい。なっちくんの実家にはまだ雄飛連れてってねえの?」
「えーうん無理無理。絶対嫌。ママに会わせたら絶対あれこれ聞いてくんもん。……あっママって言っちゃった。」
「ぶふっ…なに焦ってんだよ。ママって言わないように気を付けてたん?」
「うん。」
雄飛の話題に気を取られてうっかり今まで人前で言わないように気を付けていた『ママ』って言葉を口にしてしまったけど、航の前ではもう今更感が半端ない。航にクスッと笑われ「べつにどうってことねえだろ」って言われたから、もうなんか一気にどうでも良くなっちゃったな。
「そんなことより雄飛が女子大生の可愛い友達作ってたらどうしよう。」
「大丈夫だろ。雄飛が女子大生に愛想良く喋ってるとこ全然想像できねえし。」
「そうかな?じゃあパンケーキ食べに行かね?」
「は?じゃあってなに?脈絡なさすぎだろ。」
「甘いもん食べたくなってきた。」
ずっとつまらなくて長い話を聞いていたから腹が減ったし甘いものを欲している。あと俺の不安に思ってることを口に出したら航が『大丈夫だろ』って言ってくれたから安心したら余計にお腹減ってきた。
航はちょっと俺に呆れながらも「まあいいけど」って頷いてくれたから、大学を出て航と二人でお気に入りのパンケーキ屋に足を運ぶ。ていうかパンケーキが食べたいのもあったけど、単に航に惚気を聞いて欲しかったっていうのもある。
「俺どうやらドMっぽいんだよね。」
「うん、知ってる。」
店に来てさっそく注文した生クリームがぶりゅぶりゅ乗ったパンケーキを味わいながら喋る俺に、航がどうでもよさそうに相槌を打ってくる。
「え?そう見える?」
「前自分で言ってただろ。」
「えぇ!?うそ、俺言った!?」
「うん、言った言った。」
「まったく記憶に無いんだけど。」
「なっちくん酒飲んでたら結構恥ずかしいことペラペラ喋ってるしな。」
「うわ、酒飲んでる時か…、そりゃ覚えてねえわけだ。」
まあ相手が航だからべつに全然良いけど。って気にせずパクッとパンケーキを食べ続ける。航に知られて恥ずかしい事って今もう多分無いなぁ。『騎乗位好き』とか言っても有り得ねえって顔されるだけだしな。
「なっちくんちょっと前に『雄飛にいじめられたい!』とか叫んでたぞ。」
「えぇ!?まじ!?ウケる。でも聞いて、その話題超タイムリー。」
「おいやめろ、今生クリーム食ってんだぞ。」
航は今から俺が話す内容が下ネタだと悟ったようで、先に俺が発言するのを制止してきた。あ〜あ、喋りたいのにな。でもまあこんな女性客も多い場所で誰が聞いてるかもわかんないからやめておこう、と大人しく口を閉じる。
「大体なっちくんが言いそうなことはもう分かってんだよ。どうせ春休みやりまくってたんだろ。」
「え〜?えへへへへへ。」
「うわ〜、うっれしそ〜。」
「あ〜…喋ってたら雄飛に会いたくなってきちゃったなぁ。」
雄飛のことを考えてたらもうず〜っとニヤニヤが抑えられない俺は、航に呆れられながらもぐもぐとパンケーキを完食した。
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