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【 圭介くんに会ったよ〜りとと久しぶりに会いたがってるよ〜 】


りなから唐突に面白いラインが届いた。圭介というと俺の高校の同級生で、まあ一応仲良くしていた友人だ。女好きで女の話ばっかりしていて鬱陶しい奴だが、まあ悪い奴ではない。りなにも一時期興味を持っていた事があってガチで鬱陶しかったが、まあ悪い奴ではないので嫌いじゃない。

そんな奴がりなと同じ大学だと知り、俺は久しぶりに圭介とのトーク画面を開いた。ちなみに通知は30件ほど溜まっていたが全部どうでもいいくだらない内容だから無視に限る。

どうせ俺がメッセージを見ないだろうと思って逆にどうでもいい事を送りまくっているのか、ついさっき【 りなちゃんの友達に絡まれた お前の事褒めといてやったぞ、感謝しろよ 】っていうクソ面白い内容が送られてきている事に気付く。


ほ〜?“りなちゃんの友達”ねぇ。あいつにはまだ大学で友達なんかできていないはずなのになぁ〜?おかしいねぇ〜?

兄貴がわざわざ家に来て、りなから聞いた愚痴をべらべらと拓也に話していたから詳しい事まで全て知っている。兄貴曰くりなが女どもに裏で性格悪いって言われてたり、直接『あざと女子』とか『合コンに来てほしくないタイプ』とかも言われたらしく、腹立ったからもうりなはその女どもとぷっつん縁を切り、関わるのをやめたんだとか。

それなのにおかしいねぇ?なんでりなは関わるのをやめたのに、その女どもはりなの友達を名乗ってわざわざ圭介にまで絡んでるんだろうねぇ?不思議だねぇ。きもちわりぃ〜。


【 なんでりなの友達がお前に絡むんだよ 】


一年ぶりくらいに圭介にそうラインを返したら、【 ライン返すの久しぶりすぎだろ!!!妹のことになると興味津々かよ!? 】ってイラつく返信をされたから一旦無視した。興味津々で悪いかよ。俺の友人でもあるお前が関わってる事が余計におもしれえんだから興味津々にもなるだろーが。


【 りなちゃんとの関係聞かれた 】

【 りなちゃん友達に兄のことインスタも知らないようなタイプの隠キャとか言ってたらしいw どんな紹介の仕方だよww 】


暫く何も送らずにスマホを放置していたら、圭介から続けてメッセージが送られてくる。“インスタも知らないようなタイプの隠キャ”?兄のことって、兄貴のこと?


「クックック…、なんだそれ、おもろすぎだろ。」


昔からりなは兄貴のことを友達に自慢げに話すくらいのブラコンなのに、そんなりなが兄のことを下げて話すなんて、その女どもに興味を持たれたくないのが丸分かりだ。そう言えばそいつら合コン相手の服がダサいとか男の悪口も言いまくってたらしいから、そんな奴らにわざわざ兄貴の話をしたくなかったんだろうな。

俺は兄貴から聞いた話と照らし合わせながらこの圭介からのラインを読むとさすがに面白すぎて笑いが止まらなくなってしまった。一番面白いのはりなの事を裏で悪く言ってるような奴がわざわざ圭介に関係聞きに行ってんのが訳わからなくて笑える。いっぺんどんな奴らか顔見に行ってやろうかな。


【 気が向いたらお前の大学遊びに行くわ 】


興味はありつつも気が向く可能性はかなり低いけど。それだけ圭介に送ってから、その後の圭介からの返事は待つこともなくトーク画面を閉じた。



そういやりなが高校生になって間もない頃にもこんなことあったよな。今から約三年ほど前のことを思い出した。


『お兄ちゃぁぁん聞いてよぉ!お兄ちゃんがずっと前にゲーセンで取ってくれたキーホルダーをね、クラスのギャルに落書きされたの!ひどくない!?なんかその子たちにりななんでか知らないけど嫌われてて、悪口言われてるの!!ぶりっこって言われたんだよ!?ぶりっこって!!ひどくない!?りなのどこがぶりっこだと思う!?もうやだぁ〜!!お兄ちゃぁぁん!!』


あの時は兄貴と通話しながら大声で泣きついていたけど、俺からしてみれば『またかよ』って感じだ。


何故かそこに存在しているだけで一部の女子に嫌われるらしい妹。人を嫌いになる理由は人によって様々で、どう思おうと個人の自由だからそこに文句は何一つない。その感情を理不尽に相手に向けたり表に出すだけでそいつの人間性はあっさりと暴かれてしまうものだ。それすらも分かってないバカで哀れな奴らは相手にするだけバカバカしい。

今回の場合、大学生にもなってまだ高一のガキがやってた事と似たようなことをやっている進歩や成長の無い可哀想な人間の行動に過ぎない。そもそもりなの事が気に食わないなら無視をしてさっさと距離を取ってしまえば良いものを、自ら関わりたがる気持ち悪い女たち。

そんな奴らとは、当たり前の事だがこちらから関わらないようにするのが一番だ。



しかしそうは思っても、イカれた人間はまともな人間の意思を無視して関わろうとし、突拍子もないことまで言ってきたりする。



『おいりと!今日りなちゃんの友達から合コンしようって誘われたんだけどお前も来いよ!りとにも来て欲しいって!!そんであと二人誰か知り合い連れて来てってさ!』



………ほらな?

圭介と久しぶりに連絡を取ってから数日後の事だった。

メッセージではなく圭介からわざわざ電話がかかってきたかと思ったら、聞かされたのはそんな話だ。


気に食わない人間の知人、さらには兄を合コンに誘うなんて、ガチで頭がイカれた人間のやることだろ。

身内の悪口を言ってるような奴らと合コン?

さすがに俺も、兄貴ほどではないけどキレそうだ。





「あ!圭介さんだ〜、こんにちは〜。」

「おぉ〜!確かりなちゃんの友達だよね!こんにちは〜!りなちゃんは一緒じゃないの?」


大学構内を歩いていたら、綺麗で可愛い女の子四人組と偶然すれ違い、声を掛けられた。この子たちはりなちゃんの友達のようで、もう俺の名前まで覚えてくれている。さすが、可愛い子の友達はみんな可愛いなぁ〜とついつい顔がにやけてしまいそうだ。


「あ〜、あの子とは入学してすぐはよく連んでたんですけど最近はあんまり一緒に行動しなくなったんですよね〜。」

「あ、そうなんだ〜。」

「可愛いからよく男と居るし。」

「あ〜だよね〜。」


俺も久しぶりに会ったらやっぱまじ可愛くて、りとに内緒で口説きたくなったもん。って思っていたら、その次に「圭介さんはりなのお兄さんとは会ったりしないんですか?」って聞かれて話題はりとの話になった。


「高校卒業してからはまったく会ってねえなぁ。久々に会おうっていっつも声掛けてはいるんだけどね〜。そもそもあいつライン無視しやがるんだよなぁ。」

「え〜!ひど!結構性格やばい感じですか?この前りなのお兄さんのことド生意気なイケメンとか言ってましたよね?」

「や〜ばいよ!あいつはガチでやばい。基本逆らえないからね。女子とか全員あいつの言いなりだったし。俺なんて子分みたいに扱われてたからな〜。」


俺が言ったら嫌そうな顔をされる頼み事とかでも、りとが言ったら『喜んで!』って感じで女子は簡単に頼まれる感じ。正に王様みたいな奴だ。

そんな高校の頃のりとを思い返しながら喋っていたら、だんだん興味津々になっていく女の子たち。


「え、やっばぁ〜!もしかして似たもの兄妹なんじゃない?」

「逆にどんな人か会いたくなってきた。超俺様って感じ?」

「あ〜ぽいぽい。」

「圭介さん今度合コンでもしません?そのりなのお兄さんも誘って!」

「え?合コン?」


キャッキャと楽しそうにそう提案され、少し戸惑いを見せる俺。りとが合コン……。誘ったところで絶対来ねーだろ。



……って、分かって居ながらもとりあえず電話をかけてみたのだった。


そして……


『行くわけねーだろ!!りなの友達って誰だよ、あいつ大学で友達いねーから!!!』


予想通り断られた上に、何故かめちゃくちゃキレ気味な態度でそう返されたのだった。


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