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放課後になっても俺はまだ光星とバイバイするのが嫌で寄り道を誘うと、光星は笑顔で頷いてくれた。


「もうちょっとで中間テストかぁ。そろそろちゃんと勉強しなあかんなぁ…。」


そんなぼやきを言いながら、実は『一緒に勉強しよう』とか光星から誘われるのを待っている。誘われなくても自分から誘うけどできれば光星から誘われたい。


一度光星と行ったことがある商業施設のフードコートでポテトをつまみながら、今日授業で貰った中間テストの範囲が書かれたプリントを眺めていた。

そんな時、光星のブレザーのポケットに入っていたスマホからブブッと振動する音が聞こえてきて、光星はスマホを確認している。

何故か一度だけチラッと俺の顔を見てから、光星はスマホを隠すようにテーブルの下でスマホを弄り始めた。

ちょっと光星!今のはなんや!!
俺に隠れて誰とコソコソメールしてるんや!!

俺はそんな面倒な彼女みたいになりながらジッと光星を見つめる。しかし光星はすぐにスマホをまたポケットに戻した。


でも数分後にまたブブッとポケットから振動音が聞こえている。けれどもう光星はスマホを取り出そうとはしなかった。


なんなん?俺に隠れて彼女おったら許さんで。まさか俺の姉と……!いやいや、さすがにそれは無いやろ。

疑うような目で光星を見ていたら、またブブッとポケットから音がした。


「光星誰とやり取りしてんの?めっちゃスマホブーブー言うてんで。」


我慢できずにそう聞いたら、再び光星がポケットの中からスマホを取り出し、画面を見ながら苦笑していた。

光星の態度がじれったくて、身を乗り出してグイッと光星のスマホを持つ手ごと掴んで自分の方へ引き寄せたら、光星は「あっ!」と声を上げる。

光星のスマホの画面を見ると、トーク画面に【 えな 】という名前の見覚えのあるアイコンが並んでいるのを見てしまった。


……うーわ、最悪や。俺が一番嫌やと思ってた事態が起こってる。


「なんで俺の姉ちゃんとラインしてるん?」

「やっ、待って、違う違う…!」

「なにが違うん?やってるやん!」


まじで面倒な彼女みたいに俺は不機嫌な態度を出しながら光星に問い詰めた。別にそこまで怒ることではないかもしれないけど、姉と光星がやり取りしてるなんて嫌すぎてムッとした顔をしながら光星からの返事を待った。

いや、でもこの場合俺に隠れてコソコソと俺の姉とラインしてたんだから俺だってちょっとくらい光星を責めてもいいはずだ。

やっぱり光星は俺じゃなくても良かったんや、やっぱり姉の方が良かったんや、とか勝手にどんどん頭の中で悲観する。


「ん〜…。」と困ったように髪を掻きながら、光星は諦めたようにスマホをテーブルに置いた。


「…ごめんな、永遠くんに黙ってて…。お姉さんやっぱ、大学の知り合い欲しかったみたいだからさ…。」


そう話しながら、光星はテーブルに置いたスマホ画面をスクロールしている。その時、チラッと見えた画面には、姉のアイコンの他にもう一人、別の人物のアイコンも混在していることに気付いた。


「…ん?誰これ。」

「俺の兄。」

「お兄さん?3人でラインしてるん?」

「んん…、兄が一対一嫌だからって俺がお姉さんとの間に入ってる。」

「…はぁ?なんやそれ…。」


光星の話を聞くと、今度は沸々と姉への怒りが湧き上がってきてしまった。光星といつの間にライン交換しとんねん!俺に黙ってコソコソと!!っていう怒りと、ラインを嫌がるお兄さんまで巻き込んで!っていう怒りだ。


「今度どっかで会おうって話になってるんだけど兄が人見知りだから俺も来いって。」

「お兄さん無理して会わんでいいで。姉ちゃんにやめろって言うとくから。ラインも無理してやらんでいいし。」

「…いや、お姉さんには兄も会ってみたいっぽい。ただまじで人見知りで…。」


……えぇ、会わんでいいやん。

俺の友達のお兄さんと自分の姉が知り合ってほしくない。

百歩譲って知り合うのは許すとしても、恋愛関係になろうとするのは絶対許さん。


「じゃあ二人が会う時俺も行く。」

「…あ、うん。それは良いと思うけど。お姉さんに何て説明しよう。」

「俺が帰ってから姉ちゃんに言うとく。」

「あの…永遠くん、めちゃくちゃ怒ってない…?お姉さんただ大学に知り合い欲しかっただけみたいだからさ…、…そこまで怒らなくても…」


光星は俺の態度にずっと困惑気味で宥めるようにそう言ってきたけど、とにかく今の俺は俺に隠れて光星とライン交換していた姉が許せない。


「無理!俺は姉ちゃんにやめろって言うたのに。姉ちゃんお兄さんに会ったら絶対好きになるわ!嫌や、光星のお兄さんやのに。」

「…んー、逆はあってもお姉さんが兄を好きになるってのは難しいと思うけど。俺の兄結構癖強いし…。」

「何言うてんねん!あんなイケメン惚れるに決まってるやろ!姉ちゃんの大好物やわ!絶対嫌。お兄さんに瓶底眼鏡でもかけてきてもらって。」

「えぇ、…瓶底眼鏡?そんなん無いって。」


姉がお兄さんに惚れてしまうのだけは絶対に阻止したくてそんな無茶な指示を出すと、光星はさらに困惑しながら背凭れにぐったりと凭れかかった。


「永遠くんがなんでそんな嫌がるんだよ、べつにいいじゃん。それはお姉さんと兄の問題なんだし…。」

「違う。俺の問題でもある。」


いつも優しくて、穏やかな光星だけど、そう話す俺には不服そうで、ちょっと不機嫌になっていた。



夕飯前に家に帰ってくると、玄関にはすでに姉の靴が有り、姉が帰宅していると分かると俺は姉の部屋に直行した。


「姉ちゃんのあほぉ!!!」

「うわっびっくりした!なに?」

「なに?やないわ!何俺に黙って光星とラインしてんねん!!」


ダンダン!と足を床に叩きつけながら姉に怒ると、姉は「あっ」と口に手を当てながら俺から顔を背けた。


「あかん言うたやろ!!光星のお兄さんと知り合おうとすんな!!」

「ごめんて。だって大学の知り合い欲しかってんもん。」

「知り合いくらいすぐできるやろ!!」

「できひんわ!今日なんか私ぼっち飯してきてんで!?親しい友達ができた永遠に大学でぼっちな私の気持ち分かる!?曜日によっては誰とも喋らんで帰る時もあるんやで!?あんた分かるか!?この寂しいぼっちの気持ち…!!」

「…ごめん、それは分からんこともないけど…。」


俺の方が怒りプンプンで姉を怒りに行ったのに、凄い剣幕で言い返されてしまい、その迫力に負けてしまった。

確かにぼっちは寂しい。それは分かる。分かるけど…。学年が違う光星のお兄さんと知り合ったところでぼっち卒業できんのか!?……って言いたかったけど、知り合いを増やしたいと思う気持ちはまあ確かに俺にも分かるから、俺はそれ以上姉に不満は言えなかった。


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