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思えば二校目での俺の高校生活は、浅見光星がいなければどうなっていたことか…とテーブルに並んだ中華料理にがっつきながら俺はふと思った。

今までまったく知らなかった土地で、休日に友達と美味しいご飯を食べられていることがとてつもなく幸せに思えてきた。


「光星、同じクラスにいてくれてほんまありがとうな。」

「…お、おう…、どうした、いきなりだな。」

「俺が転校してきてもうちょっとで1ヶ月経つやん?でも友達って言うたらまだ光星だけやし、光星おらんかったら学校行くのちょっとキツかったかも。」


もぐもぐとチャーハンを食べ、餃子にエビチリ、美味しい料理を順に味わいながら、俺は今の思いを光星に語ると光星は相槌を打ちながら聞いてくれる。


「クラスメイトはいい人ばっかりなんやけど、なんか気ぃ使ってしまうねん。俺そういうのがめんどくさいと思ってしまう性格やから、一人の方が楽やな〜って最初ちょっと思ってしまったりしたんやけど、そんな時に光星が関西弁好きって言うてくれたから、俺めっちゃ嬉しくて、もっと光星と話したいって思ってん。」


話の最中にチラッと光星を見たら、光星はちょっと耳を赤くしてもぐもぐと口を動かしていた。

光星照れてくれてる。もっといっぱい光星に感謝したこと伝えたらもっと照れるかな。


「チャリ屋とかご飯屋さん連れてってくれたり、一緒に学校行ってくれたり、こうやって遊んでくれるのもめっちゃ嬉しい。光星に彼女おらんくて良かったわ。」

「えッ……なんで、」

「だって彼女おったら俺光星に構ってもらえんようになるやん。」


…あっ、エビチリ食い過ぎてしもた。
しれっとエビチリのお皿を光星の方に寄せたら、赤い顔をしながら「もういいの?」と聞いてきた。

光星はエビチリを食べ過ぎてしまっても優しい。前の学校の友達なら『あほかお前食い過ぎじゃ!』って絶対怒ってくるけど光星は優しすぎる。


「光星はなにされると嬉しいん?人を優先してばっかやから見ててもどかしい。」

「え…、そんな言われるほど優先してねえけど…」

「してるやん。俺がエビチリ食い過ぎても怒らんし、めっちゃ優しくしてくれるやん。朝とか絶対遠回りやのに一緒に学校行ってくれるし、ご飯行く時とか俺の意見ばっか聞いて動いてくれるやん。」

「それは、相手が永遠くんだから……」


光星はそこまで言って、真っ赤な顔をしながら口を閉じた。

なんなんその反応、俺のこと好きすぎちゃうか。

男友達を普通そんなに優先してくれるか?

……ひょっとしてもう俺に恋愛感情とか持ってるんちゃうん?せやからこの前『チューしていい?』とか聞いてきたんちゃうん?


光星に言われたことに対して俺は、モグモグと唐揚げを食べながら初めてそんな方向に考えてみた。

そしてゴクンと唐揚げを飲み込み、口を開く。


「じゃあ俺も光星がされて嬉しいことする。光星自分から言わなさそうやから自分で探すわ。」

「えぇ…、俺はべつに…」

「ギブアンドテイクやギブアンドテイク!…あ、ほら、唐揚げもはよ食わな俺に食べられんで。」


エビチリ同様、唐揚げのお皿も光星の方に寄せながら言うと、光星は困ったように笑いながら唐揚げに箸を伸ばした。俺だって、相手が光星だから優しくされっぱなしは嫌なのである。


その後俺たちはいろんな話をしながら満腹になるまでご飯を食べた。夜ご飯はもう少なめでいいかもしれない。大満足で店を出て、また光星の家に戻った。



「永遠さん、俺のゲームやりますか?」


さっき入った一階のリビングらしき部屋に再び入らせてもらうと、流星くんがコントローラーを持って待っていてくれている。


「え!いいの?やりたい!あっ!これやったことある!これやりたい!」

「じゃあこれにしましょう。」


ウキウキと子供のようにはしゃいでしまった俺に対し、流星くんは大人っぽく冷静な態度で返事をしてくれてゲームのセットをしてくれる。

けれどゲームが始まると楽しそうに笑顔を見せながらプレーし、静かで大人しそうな子だったけどすぐに打ち解けることができた。


光星は『見てるだけでいい』と言って俺と流星くんがゲームで戦っているのを見ているだけだったけど、ゲームの会話には加わり、光星が楽しそうに笑って喋ってくれるから、俺もめちゃくちゃ楽しかった。


気付いたら外が暗くなるまでゲームを楽しんでいて、明日も流星くんが遊んでくれるって言うから、明日も遊ぶ約束をしてから帰宅する。


引っ越してからゲームで一緒に遊べる友達も居なくなってしまい寂しかったけど、今日一日でそんな寂しさはすっかり薄れてくれたのだった。

光星には、感謝してもしきれない。


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