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「なぁ光星くんプリクラ撮らへん?」


フードコートで1時間ほど過ごし、そろそろ帰るかと歩いていたらフードコート横にあるゲーセンのプリクラ機に目が行き、指を差しながら光星に声をかけてみたら首を全力で振られてしまった。

え〜、嫌なんや。
光星が断るってことはよっぽど嫌なんや。


「嫌なん?」

「…なんとなく。」

「撮ったこと無い?」

「無い。」


あ、光星くん関西弁のイントネーションちょっと移ってる。さては動揺してるな。プリクラ撮んの恥ずかしいんかな?まあ嫌なことはさせたらあかん。


「しゃあないし光星くんの写真撮って我慢しとくわ。」


そう言いながらスマホを光星の顔の前に構えてカシャ、と写真を撮ったら今更もう遅いのにバッと手で顔を隠した。


「おい!!!永遠っ!!!」


……うわ、本気で怒られた。

光星は赤い顔をして手の隙間から俺を睨み付けてくる。光星は写真そのものが嫌いなのかも。


「……ごめん、消すから怒らんといて。」

「あ…いや、べつに怒っては…。」

「…度が過ぎんように気をつけるわ。」

「え〜ちょっと永遠くん、俺ほんとに怒ってねえから…。」


怒られてちょっとショックを受けた態度を俺が出しまくってしまったからか、光星は俺の肩を抱いてわしゃわしゃと髪を撫でてきた。あー慰め方もイケメンや。怒らせたと思ってたのにこんなん反則すぎるやろ。これやから光星くんと付き合いたくなってくるねん。男やけど。


「光星、嫌なことは嫌って言うてな。俺そういうの鈍感やから。」

「うん、言う言う。でも永遠くんがする事は俺ほんとに全然嫌じゃねえから。」

「…えぇ、なんやそれ。光星俺のことめっちゃ好きやん。」


これは冗談で言ったつもりだったのに、光星の顔が真っ赤に染まるから俺は少し困惑してしまった。

言われた言葉が恥ずかしいから赤くなるのか、それともまさかの図星だったから赤くなるのか、さすがに後者は無いと思いつつもこんな顔を見せられてしまうとちょっと期待してしまう。


「もー光星分かりにくいわぁ。」


しかし考えてみれば光星は恋愛を少しもしてこなかったピュア人間なので恐らくこれは言われたことに対する照れだろう。

俺は気持ちを切り替えるようにパッと光星から視線を逸らしてそう言ったら、光星はボソボソと覇気のない声で「永遠くんの冗談の方が分かりにくいわ。」と言い返してきた。やっぱりちょっと関西弁が移っている。


「え?俺冗談言うたことないで?」

「嘘つけ!!冗談だらけだろうが!!」


うわ、これには本気で言い返された。
さすがに『冗談言うたことない』は無理があったらしい。

光星から返ってくる反応を見るのが楽しくなってきてしまい、光星を見ながら笑ってしまったらやっぱり光星は顔を赤くして、俺を横目で睨んでいた。


この態度が光星曰く『怒ってない』らしいから、俺は今後も調子に乗ってしまいそうだ。


「あー楽しかった。光星また寄り道しよなー。」


るんるんで商業施設を出た俺は、いつも朝待ち合わせしているコンビニまで二人で帰り、光星とそこでバイバイした。


光星には『消すから怒らんといて』とか言いながらも結局写真は消していなくて、俺のスマホにある光星の写真を家に帰ってから部屋でまじまじと見つめる。


ちなみにこの写真は、いつも『写真撮ってきて』とか言ってくる姉ちゃんのために撮ったものではない。


俺が、ただ光星の写真が欲しいと思っただけなんだ。


消してないと知られたらまた光星に怒られそうだから黙っておこうと、飽きるほど眺めた後に画面を消してスマホを布団の上に放り投げた。


ゴロンとベッドに寝そべって、目を閉じる。

家に帰ってきても思い返すのは光星のことばかりで、我ながらやばいと思い始めた。


光星とこれから長く友達でいるためには、自分の言動には今まで以上に気を付けなければならないな、と、心に刻んだ。

特に、冗談の度が過ぎないように気をつけよう。


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