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『俺とわくん苦手だわ。』


休み時間に佐久間に呼び出されたと思ったら、佐久間は俺にそう言ってきた。


『…まじか。』


なんかそんな感じはしてたし、なんなら永遠くんの佐久間を見る目もかなり冷めきっていた。そりが合わなさそうと感じたのはどうやら当たりらしい。


『お前もさっさと目ぇ覚ませって。アレのどこが良いんだよ。』


ポンポンと俺の肩を叩きながら、佐久間はそう言って嘲笑ってくる。…アレって言うなよ。どこが良いって、そんなのは初めから言ってんだろ。

いくら佐久間が友達だと言っても、俺が好きだと言ってる人をそんな言い方するのは許せない。


『そんな言い方すんならお前にはもうノート見せてやんねーよ。』


永遠くんにだって俺が佐久間にノート見せてたら微妙な反応されたし、別に俺だってわざわざ見せてやる必要はねえんだよ。


『これを機会にお前もちょっとくらい自分で勉強しろよ。』


ムッとふてくされたように俺がそう言った瞬間に、佐久間は焦った様子を見せて必死に謝ってくる。


『えーっそれだけはマジ勘弁して!!ごめんごめんもう言わねえから!!!』


結局佐久間には手を合わせながら懇願され、俺は渋々頷いてしまう。

けれどもうそれ以降、ノートは借りようとするくせに佐久間は特進クラスには来たがらないようになった。

永遠くんの目は自分が見下されているように感じるのだとか。そんなのは自分の劣等感からくる思い込みじゃねえのか、とか思うけど、永遠くんの佐久間を見る目は、確かに冷ややかだった。





「またノート持って行くん?」

「あ、うん。」

「ふぅん。いってらっしゃい。」


休み時間、佐久間にノート見せてと頼まれたため、前の扉から教室を出てスポクラに向かおうとしたら、後ろの扉に永遠くんが立っていて話しかけられてしまった。

頷くだけで何も言わずに、永遠くんはトイレにでも行くのか廊下を歩いてゆく。

なんだかなぁ…と微妙な心境になりながらスポクラへ行き、佐久間にノートを差し出す。


「俺トイレ行ってくるからその間に写真撮るなりやっといて。」

「了解〜」


永遠くんの俺を見る目まで冷ややかになっているような気がして、俺の気のせいだと思いたくて、休み時間の間に永遠くんと顔を合わせてちょっとでも喋らねえと気が済まなくて、スポクラを出たら俺も永遠くんを追いかけるようにトイレに向かった。



『あ、お前特進の転校生じゃね?』

『へぇ、お前が?』

『すげー頭良いらしいな。』

『…ははっ、まあ人並みには…。』


…え?永遠くん誰かと喋ってる?

トイレの中から永遠くんの愛想笑いするような声が聞こえ、俺もトイレを覗こうとしたら、永遠くん以外の生徒二人が中から出てきて会話しながら俺の横を通り過ぎていった。


「確かになんかいけ好かねえ感じの奴だな。」

「人並みには〜だって。じゃあ俺らゴミ以下?」

「うはは、そういうことだな。」


どう聞いてもそれは永遠くんの悪口で、永遠くんにも聞こえてんじゃねえのか?と中を覗いたら永遠くんは顰め面で手を洗っていた。


「永遠くん気にすんなよ?」

「えっ!?…あっ光星!」


いきなりトイレに入って声をかけたから、永遠くんは驚きながら振り向いた。転校してきていきなりそんな言われ方をするなんて、永遠くんが学校行くの嫌になったらどうしてくれんだよ。俺の癒しなのに!という自分本位な心配をする。

永遠くんが悲しい気持ちになってほしくなくて、慰めるように永遠くんの頭に手を置いて髪を撫でながら咄嗟に「俺は永遠くん大好きだから。」って言ったら、永遠くんは「えっ…」と声を漏らして固まり、顔がちょっと赤くなっていった。


「あっ…!あっ!そんな深い意味はねえから!!ほら、永遠くんだって俺にスタンプ送ってくんじゃん!!」

「…あ、うん…、そやな。」


俺の言い訳に永遠くんは納得してくれたのか、下を向いてうんうんと頷く。


その後はもう自分のやらかしのおかげでちょっとギクシャクしてしまい、佐久間にノートを返してもらいにスポクラに行くのもすっかり忘れていた。


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