16 [ 17/99 ]




「なぁ姉ちゃん聞いて、今日いつも話してるかっこいいやつにポンポン、って頭撫でられてん。」

「はっ?なんやそれ!!!」


いつものように家に帰って姉に光星の話をしていたら、今までで一番良い反応が返ってきた。


「しかも2回。あんな優しいポンポンあかんわ。ほんま好きになってまうで。」

「ふふ…、もうなってんちゃうん。いっつも私にその子の話してくるやん。」

「姉ちゃんに自慢してんねん。かっこいい友達おって羨ましいやろ。」

「うんええなぁ。私まだこっち来てから男友達すらできてへんわ。年下で良いから紹介して。」

「光星は俺のやからあかん。」

「ぶはっ!!勝手に自分のもんにすんな!」


俺の発言に姉ちゃんは笑いながらクッションを投げてきた。身体にぶつかってきたクッションを胸に抱えながらスマホを手に取る。

全然気付いてなかったけど、数分前に光星からラインが届いているではないか。すぐに内容を確認すると、【 明日朝どこかで待ち合わせして学校一緒に行かない? 】というものだった。

ほら、またこの人かっこいいこと言うてくる。

今日俺が遅刻してきたから絶対心配してくれてるやん。


【 いいん?ありがたい!! 】


ポチッとまた俺はだいすきスタンプを押しておいた。二度目はさすがに『はいはい、またきたよ』って感じになるかな。でも俺の頭の中には耳を赤くして照れた顔をしている光星の顔が浮かんでいる。

今日は光星の中学の頃とかの話を聞いて、光星の人物像がよく分かってきた。多分女慣れもしてなければ、ろくに恋愛もしないまま高校生になったに違いない。

だから俺がちょっと『かっこいい』とか言うだけですぐ照れる。男である“俺に”言われただけでも照れる。

これもしかしたら、俺からグイグイいったら光星くん俺のこと意識する可能性あるな。って思ってしまった。

決してピュアな人をからかいたいとか悪いことを考えているのではなく、光星がもし俺のことを好きにでもなってくれたら、普通に嬉しいだろうなと思ったのだ。


結局その後、俺のだいすきスタンプに対しての返信は無く、【 永遠くんが分かりやすいコンビニで待ち合わせしよ 】という待ち合わせ場所を決める返事だけだった。

そもそも光星の家はどこなんだ?あんまり遠くからチャリで来てもらうのも申し訳ない。でもどこか聞いても多分その場所が俺にはどこか分からないだろうから、今回は光星の気持ちに甘えて通学路の途中から一緒に登校してもらう約束をした。

光星のおかげで、明日の朝の不安は無くなった。





翌日の朝、俺一人の場合は始業の1時間前の出発を予定していたけど、光星が8時10分くらいまでに待ち合わせ場所のコンビニに来てくれたら良いと言うので、その20分前の7時50分に家を出た。ちなみに昨日より10分遅い時間だ。


余裕を持って家を出ている上に、迷うことなくすんなり来れたからコンビニには8時頃に到着した。ちょっと来るの早かったなと思いながら何気なくコンビニの窓ガラスを見ると、そこには立ち読みしている光星らしき高校生が立っている。


えっ、光星来るの早!?
何時に来てくれたんやろ。

チャリを止めてコンビニの中に入り、背後から耳元で「光星くんっ」と女の子みたいな声を出して名前を呼んだら、光星はバッと耳を押さえてびっくりしながら振り向いた。

手の隙間から見えた耳が赤くなっている。俺が想像した反応が光星から返ってきてケラケラと笑ってしまった。


「永遠くん!もぉ〜!!心臓に悪い!!」


手に持っていた雑誌を棚に戻しながら、光星はちょっと怒り口調でそう言ってくる。


「光星来るの早ない?何時に来たん?」

「ん〜…5分前くらい?永遠くんこそ早かったな。無事来てくれて安心したわ。」


爽やかに笑ってまたそんなかっこいいことを言ってくる光星を横目でチラッとこっそり見上げる。5分前に来たってことは8時前にコンビニに到着してるし、家に出た時間も絶対俺より早い。

それなのに、そんな苦労を少しも見せずに俺に優しくしてくれる光星に、『光星は友達みんなにこんな優しくするんか?』というモヤモヤした気持ちを、その時俺はひっそりと抱いたのだった。


[*prev] [next#]

bookmarktop

- ナノ -