11 [ 12/99 ]
昼ご飯を食べた後はチャリで学校から俺の家方面へ走ってみることになった。光星に家がある場所の地図を見せたら「あ〜分かる分かる。」って言ってくれたから、また俺は先を走ってくれている光星の後を追う。
光星さん頼もしすぎるわ。
こんなん俺惚れてしまうやん。
絶対俺のこと落としにかかってる。
同性の同級生相手にも関わらずまた少女漫画のヒロインにでもなったつもりで心の中でぼやいていたら、不意に光星がチラッと俺の方に振り向いてきた。
「多分この道が一番近いな。目印になる建物とか覚えながら通ると通学路すぐ覚えられそうだけどどう?」
「あっ…光星の背中ばっかり見て走ってたら全然周り見てへんかった…。」
学校からここまで通ってきた道を俺は覚えながら走るべきだったのに、どんな道を通ってきたか俺は全然分かっていなかったことに気付き、言い訳するようにそう言ってしまった。
すると光星は、チャリを漕ぐ速度を落とし、戸惑うような顔を見せる。
「……えぇ?……なぁ、永遠くんってもしかして天然?」
「えっ?天然!?」
光星はチラッと俺を見ながらそう言って、何故か耳を赤くさせていた。…え、なんで?なんで光星が照れるん?俺また変なこと言った?
あ、褒めすぎ?それか知らんうちに見過ぎてたとか?だって光星ほんまにかっこいいんやもん。
「ごめんな、今からちゃんと覚えるわ。」
光星がせっかく道案内してくれてるのに全然周りも見ずにヘラヘラしながらチャリ漕いでたから、光星に謝罪をしてここからちゃんと周りを見ようと気持ちを切り替えた。
「ファミマ…、セブイレ…、ローソン…、ファミマセブイレ!!」
「…ん?なにそれ。」
「通って来た道にあったコンビニの順番!」
ドヤ顔で俺が覚えた目印を口に出したら、光星は何が面白かったのか俺の顔を見てクスクスと笑ってきた。
「これでバッチリやわ。」
「えぇ、…ほんとか?」
「うん。俺結構記憶力良いねん。」
「あっ、…そうだよな。特進だもんな。」
光星は俺の話を聞き、『忘れてた』とでも言いたげな反応を見せてきた。もしかして『あほそうな奴』とか思われてたかな?勉強は得意な方だけど俺があほなのはその通りだ。
今の学校のクラスは知的そうな人ばっかりだから、俺があのクラスで普通に喋ったら絶対浮いてしまう自信がある。
「俺は別に普通科でも良かってんけどな。」
元担任に『もったいないから行けるなら特進行っときなさい』って言われたからそうしたけど、普通科のクラスはどんな雰囲気なのだろう…って、実はちょっと気になっていた。
でも俺の呟きを聞き、光星は「え…。」ってなんかちょっと悲しそうな表情を浮かべてくれる。
「え?俺が特進来て嬉しい?」
悲しそうな顔を見せてくれたから、想定できる返事を貰うためにそう問いかけたら、光星は「…う、うん…。」とちょっと恥ずかしそうにしながら俺の想定通りに頷いてくれた。
や〜嬉しい嬉しい。俺も嬉しい。
特進クラスに行って良かったと思うことはただひとつ、浅見光星がクラスに居たことだ。
「お〜ありがとう。俺も光星がクラスに居てくれて良かったわ。仲良くしてな。」
もうすでに光星にはめちゃくちゃ良くしてもらってるけど、改めてそんな言葉を伝えたら、光星は「こちらこそ…。」って照れ臭そうにチラチラと俺の目を見ながら頷いてくれた。
照れ屋なんかな。赤面症?よく頬とか耳が赤くなる。結構ピュア?こんな姿見たら女慣れしてないかも、とか思って嬉しくなってしまった。いやでも俺男やけど。
優しい優しい光星くんは、その日結局俺の家のマンションの下まで一緒に来てくれた。
「道覚えられそう?」
「なんとか行けるかなぁ。俺明日からチャリ通してみるわ!」
「明日から!?」
「え、大丈夫?」って光星にやたら心配されたから、「大丈夫大丈夫!」という俺の返事を聞くと、光星は渋々チャリを漕いで帰って行った。
まあ多分なんとかなるやろ。って、それはどこから湧いてくる自信だったのか、あほな俺はその翌日に痛い目を見るのだった。
[*prev] [next#]