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「なぁ姉ちゃん、俺次の日曜このまえ話してたかっこいいやつとデートしてくるわ。」

「えぇっ!?どこ行くん!?」

「チャリ屋。」


チャリ屋って言った瞬間、『おもんね』みたいな顔をされた。場所がどこだったら姉ちゃんにとってはデートになるんだろう。


「そのかっこいいやつに近くのチャリ屋案内してもらうねん。」

「ふぅん、仲良くなったんやな。よかったやん。私も行っていい?」

「あかん。」

「え〜私もそのかっこいいやつ見たいわ。写真は?」

「ない。」

「はよ撮ってきて。」


『はよ撮ってきて』って、俺が撮ってくる前提で話すな。

うんともすんとも言わなかったら、姉ちゃんは「いいなぁ〜私もかっこいい彼氏ほしい〜。」と言いながらリビングを出て行った。

『私“も”』ってなんやねん。
今のは普通に友達の話をしただけですが。


光星とは驚くほど仲良くなれた。ちゃっかり『光星』とか呼んでるし。連絡先も交換して、普通に話せる仲になった。学校着いて、顔見ただけでなんかホッとする。


土曜も学校あるからって、日曜の貴重な休みの日に誘ったけど普通に良いって言ってくれたし、彼女は多分居なさそうな感じだ。……まあ、居たら居たで別に俺には関係ないことだけど。



光星と約束した日曜日がやってくると、俺は10時頃に家を出て、いつも通学で使う電車に乗り、今日は二駅で降りた。この駅の近くにチャリ屋があるらしい。


駅の外で光星が来るのを待っていたら、少ししてからかっこいいチャリに乗って爽やかに光星が現れる。


「ごめん、お待たせ。」ってもうただ口を開くだけでかっこいい。別に全然待ってませんが待たされても許します。

徒歩の俺に合わせてチャリから降りて、隣を歩いてくれている。

なぁ、今日日曜やで?彼女おらんの?…ってめっちゃ聞きたい。良い感じの子、おるんやろ?とか。

まあそのうち聞けたら良いかと別の話題を探した。





母親に貰っていたチャリ用のお金2万円で無事気に入ったママチャリが買えた。光星はなんたらバイクってのをおすすめしてくれていたけど俺は乗りこなせる自信がない。

えーっと、なんやっけ、

……あ、そうそう。クロスバイク。


学校までの道のりを先に走ってくれている光星の背中を見ながらチャリを漕いだ。スピードが速くならないように気を遣ってくれているのか、ペダルを漕ぐ光星の足の動きはやたらゆったりしている。

学校までの道のりを覚えるために走ってるのに、無意識に光星の方ばっか見てたら街の風景を全然見ていなくて、どこをどう走ってるのかなんて少しも覚えられなかった。



「ふぅ〜、学校と〜ちゃ〜く。」

「あ…やっと俺が知ってるとこ来た。」

「ははっ、そりゃ学校だしな。」

「俺今日帰れるかな?ほんまに道わからん。」

「大丈夫大丈夫、分かるところまで付いてってあげる。」

「…あかん、光星くんかっこよすぎて惚れてしまいそう。」


かっこいい笑顔で優しいこと言ってくれるから、少女漫画の主人公になったかのように胸の前で両手を握りながら言えば、光星はギョッとしながら顔を赤らめた。


え…、あ…、こういう冗談はあんまり通じない感じかな。いつものノリでやってしまい、後々恥ずかしさが襲ってきてしまった。


「…あ、ごめん…そんなに深い意味は…、」

「やっ…うん、分かってる分かってる…。」


光星はちょっとだけアタフタしながら俺から顔を背けた。あんまり変なことばっか言ってたら引かれそうだから気を付けなければ…。


「…あー…そういやお腹減ってきたし、なんか食べへん?」

「お、おう…そういや減ったな。なんか食うか…。」


変になってしまった空気を変えたくて、そろそろお腹も減ってきたし昼ご飯を誘った。


学校の近くにどんな飲食店があるのかも俺は全然知らなかったから、何を食べようか相談しながら光星にこのあたりのことをいろいろ教えてもらった。


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