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2年に進級して初めての日曜日がきた。

永遠くんと一緒に自転車屋に行く約束をした日だ。

初めは土曜日と言っていた永遠くんだけど、うちの学校の特進は土曜日も午前だけ授業があるということを忘れていたらしい。「うわ〜忘れてたぁ〜」と土曜授業に嫌そうな顔をしていた永遠くんもかわいかった。

別に俺は土曜の学校帰りとかでも良かったけど、永遠くんが「じゃあ日曜日にしよ」って言うから、俺は喜んでそれに頷く。


まだ引っ越してきたばかりでこの土地に不慣れであろう永遠くんに待ち合わせ場所どこなら分かるか聞くと、いつも通学で使っている電車が止まる駅なら多分分かるらしい。

俺の家からそんなに遠い場所でもなかったため、先に行きやすそうな自転車屋を検索してから自転車屋に近い駅を待ち合わせ場所にすることにした。

永遠くんが自転車買うのなら俺も自転車で行った方が良いかな。って、約束の30分ほど前に家を出て自転車を漕ぐ。


待ち合わせ場所に到着すると、すでに永遠くんが待ってくれている姿を見つけて、永遠くんの前まで到着して自転車から降りた。

制服じゃない私服の永遠くんはちょっと新鮮だ。ロンTに上着を羽織っていた永遠くんはちょっと暑そうで、上着を脱いで手に持ってから「ほんじゃ行こか〜」と歩き始めた。


第一印象は大人しそうな人に思えたけど、慣れたらやっぱ思った通りめちゃくちゃ人懐っこくて、よく喋ってくれることがだんだん分かってきた。

多分学校でそんな態度を見せてくれるのは今のところ俺の前でだけだから、このポジションをずっとキープし続けたい。



自転車屋には徒歩数分で到着し、永遠くんは一台一台値段を見ながらどの自転車を買うか悩み始めた。


「永遠くん、通学用ならクロスバイク良いんじゃね?」

「クロスバイク?」

「俺が乗ってきたやつ。」


店内にクロスバイクが置いてないか探しながらそう声をかけてみたが、永遠くんからは微妙そうな反応が返ってきた。


「カゴあるやつがいい。」

「カゴは後から付けられると思うけど…」

「俺ママチャリでいいわ。」


そう言いながら黒くて安そうな普通のママチャリの前まで来た永遠くんは、にっこりと嬉しそうな顔をしながら「これいいなぁ!!」と絶賛した。


うぅ…、かわいいなぁ。
俺もそれで良いと思いますぅ……。


「お兄さーん!!これにします!!!」


元気いっぱいな声で店員さんに呼びかけた永遠くんは、お会計時に「1万7800円です」と言う店員さんに「めっちゃ安い」って呟きながら嬉しそうにクククと笑ってお金を払っていた。


なんか俺…、まじでだんだん永遠くんのこと分かってきたかも。

永遠くん絶対今の学校では本来の自分を出せなくなってるよな。こんなに元気で、無邪気な永遠くん学校では見たことがない。

前の学校ならきっと友達も多くて、たくさん喋って、笑ってたんだろうな。前の学校の永遠くんの友達がちょっと羨ましい。

俺ももっといろんな永遠くんを見たいし、知りたい。まだ永遠くんが転校してきたばかりだから俺が知らなくて当然だけど、絶対もっと永遠くんと仲良くなってやろ。…って、俺は一人で勝手に闘志を燃やした。



自転車を買い終えた永遠くんは「こっから学校はどうやって行けるん?」と聞いてきたから、その後は自転車で永遠くんにいろいろ街案内してあげることになった。


ひとまず自転車を漕いで学校方向へ向かうと、新しい自転車に乗って俺の後ろを走る永遠くん。


「あかん…ここどこか全然わからん…」

「まあこれからだって、これから。」

「はよチャリ通したいのに…。」

「いつでも街案内してやるから早く慣れような〜。」

「…うん、ありがとう。光星ほんまかっこいい。」


…え。


永遠くんからの突然の褒め言葉に俺は思考停止してしまい、暫くの間無言で自転車を漕ぎ続けてしまった。


俺のこと褒めてくれたから俺も永遠くんのこと『かわいい』って褒めたいけど、さすがに『かわいい』とか言ったら警戒されるだろうか。

頭もよしよし撫でてみたいけど、どこまでが警戒されずに済むだろうか。


もうとっくに永遠くんに対して“恋愛感情”を抱いてしまっている俺は、そんなことばかり悶々と考えてしまうのだった。


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