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朝、浅見くんから挨拶してくれたから、放課後は俺から『浅見くんバイバイ』って声をかけてから下校した。浅見くんはなんかちょっとびっくりした顔をしていた。俺から話しかけるの変だった?

浅見くんは、“転校生”である俺に親切にしてくれていただけなんだろうか?

クラスメイトと友達として付き合うことをめんどくさがっているくせに、浅見くんとは仲良くなりたがっている自分がいた。俺面食いかよ。



「なぁ姉ちゃん聞いて、クラスにめっちゃかっこいいやついんねん。」

「え、まじ?写真は?」

「ない。」


家に帰ると姉が新しい家具を組み立てていたから、そんな姉に何気なく話しかけたら、姉は手を止めて振り向いてきた。


「男子校にはホモいるって聞いたことあるけど、俺がそのホモになってしまいそうやわ。」


わりと冗談…ってわけでもないことをサラッと姉に話したら、姉は「ほんまに?」と俺を見て笑ってきた。


「その人となんか話したん?」

「関西弁話さん方が良いか相談したら普段の話し方で話して欲しいって言うてくれた。」

「えっなにそれめっちゃ良い子やん!でも私は標準語頑張ってるで!彼氏できた時私だけ関西弁嫌やもん!言うてもやっぱ普通に関西弁は出てまうけどな。」


浅見くんの話をしていたのにいつのまにか姉の自分語りが始まってしまった。

俺に話しかけながら「はぁ〜、もう疲れてきちゃった〜」とか「この家具超かわいくな〜い?」とか言って標準語の練習をしている。わざとらしすぎてやめた方が良いと思うけど、本人はうまく話せていると思っているのだろう。

まあ好きにして、って俺は自分の部屋へ行き制服を着替え、その後は部屋に篭って勉強した。



翌日は昨日より遅めの時間に家を出てみる。

しかし電車内は昨日よりも混んでいてもう電車通学はうんざりだ。この時間の方がどうやら通勤ラッシュだったようなので、明日からやっぱりもう少し時間を早めよう。


早くもぐったりしながらやっとの思いで3階の俺のクラスの教室に辿り着いた。教室に入った瞬間に、丁度今来たところなのか机のフックに鞄をかけている浅見くんが視界に映る。

また俺から話しかけるのは変かな?でも昨日は浅見くんの方から挨拶してくれたし…、って悶々と考えながら浅見くんの元へ歩み寄る。


だって席が同じ列なんやもん。
別におかしくないよな。


「お、おはよう…。」


うわ吃ったし…。

恥ずかしくなってさっさと浅見くんの横を通り過ぎようとしたけど、浅見くんは「あっおはよう!」と爽やかに挨拶を返してくれた。


チラッと振り向き、一目顔を見ただけで眼福だ。

俺だけなんだろうか?浅見くんにこんな惚れ惚れしてるの。後ろの席から観察していても、浅見くんのクラスでのポジションはあまりパッとしない感じだった。



転校してきて1日目も2日目も誘ってくれた人と一緒に食堂で昼ご飯を食べていたけど、今日は自分から浅見くんを誘ってみたいと思う。


でもどこで誰と食べてるんだろう?浅見くんの“いつも”の昼休みに俺が割って入るのは気が引ける。

さりげなく『昼休みどこで食べてる?』って聞ける時ないかな。浅見くんクラスには親しい友達居なさそうだから、よく浅見くんのところに遊びに来てる他のクラスの人と食べてるかな。

さすがに一人で食べてる、ってことはないよな。やっぱり誘うのやめようかな。


「光星光星!!ノート見せて!!」


あ、また来た。あの人、違うクラスの浅見くんの友達。髪型からして野球部なのが丸分かりな丸坊主だ。スポーツクラスかな。なんで浅見くんと仲良いんだろう、中学から仲良いとか?そもそも浅見くんって中等部からこの学校?知りたいことが多すぎる。


「で?進展あった?」

「お前まじでその話ここでするのやめて。」


……進展?何の進展?

耳を澄ませていたら、二人の会話は普通にこっちまで聞こえてきた。

もしかして他校に気になる子でもいんのかな。

…まあ、そりゃいるよな。

だってあれだけかっこよかったら、周りが放っておくわけがない。


あー…うん。

やっぱり昼休み誘うのはやめておこう。


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